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第3章 やって来たパパ(その63)

そのとき。部屋のドアがノックされる。


「珈琲が来たようですね。」

奈菜の父親は、そう言って、空になったカップをテーブルの端に押しやった。



また、先ほどと同じ女性が入ってきた。

そして、これまた先ほどと同じようにして珈琲を入れる準備をする。


「田崎様、先ほどのお話、シェフも大層喜んでおりました。

お気遣いを頂いて、大変ありがたいことだと。」

彼女は、その手を止めることなく、奈菜の父親に向かってそう言った。


「そうですか、それは良かった。

日程のほうは、またお2人でゆっくりとご検討くだされば・・・。」

父親は、自分からの提案を快く引き受けて貰えた事に満足そうな顔を見せる。


そう言えば、ここのシェフと彼女が結婚をするらしいと父親が言っていた。

どうやら、それは事実のようだ。

哲司は、父親と彼女の間に流れている無言の会話のようなものを感じて、そう思った。



「お客様、先ほどの入れ方でよろしゅうございましたでしょうか?」

今度は、彼女は哲司に向かって話してくる。


「あっ、はい、とても美味しかったですから。

先ほどと同じで・・・。」

哲司は、まさかそのような問いかけをされるとは思ってもいなかったので、少し慌てる。


「2杯目だから、少し酸味を抑えるほうが美味しく感じると思うよ。」

横から、奈菜の父親が口を挟んだ。


「はい、では、そのように。」

彼女は、父親の言葉に従って入れるつもりのようだ。



哲司は、父親との話をさらに進めたいのだが、第三者であるこの女性がいる間はそうした話しは出来ないだろうと自粛をしている。


「あっ、そうだ。

ちょっと失礼な事を訊いても構わないかな?」

突然に、奈菜の父親がそのように声を上げた。


少しの間、彼女が珈琲を入れる手元ばかりを見ていた哲司は、その言葉が自分に投げられたものなのかどうかの判断を迷った。

顔を上げて、父親を見る。


だが、奈菜の父親の目は、哲司ではなくて彼女のほうを向いていた。


「はい・・・・・。お答えできることでしたら。」

彼女も、そのように答えている。


「う〜ん、・・・どうしようかな?」

父親は、まだその質問を投げてはいない。



(つづく)




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