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終わりゆく世界の中で


「遠矢...てめぇ...遠矢のくせにおれに矢を向けるのか...!!!」


「炎帝...今の俺には昔と一つだけ違うことがある。立ち向かう勇気ってやつさ」


炎髪の男...炎帝と呼ばれた男の表情には怒りを隠しきれない。

だが、それ以上に不思議な点があったのだ。


昔の遠矢っていう男は自分より強いとおもっているやつには決して勝負しない男だった。

だから、決しておれの意見に反対したことはなかった。

おれが、能力で世界を壊すのを反対した時も常に賛成側にいた男だ。

それが..今はどうだ。


一度賛成した意見に今度は仲間を引き連れて立ち向かってきたのだ。

可笑しい。可笑しくて笑いもこみ上げてくる。

このおれの最強の能力に勝てるわけがないのだ。

この気持ちは....なんだ???

まぁいい。この物語の悪役ヒーラーがおれっていうならそれを演じきってやるさ。


「なら、2人まとめてこいよ。今度はもう不意打ちを使えねぇぞ!!!」




た..助かった。

思わず出てきた気持ちは安堵か、それとも焦燥か。

どっちにせよ、まだ殺されるのが先送りになっただけである。

根本的な解決...つまり 能力消去マナデリートを打ち破らなければ勝機は見えない。

手に触れると....能力を打ち消し、打ち消した能力を使えることができる....


現状を打破する道を考える。それが唯一おれに出来ること。

やって..やれないことはない!!


「遠矢先輩!!!」


おれは残された最後の道を託すため、唯一の方法を遠矢先輩に伝える。

先輩は一瞬驚愕めいた表情を浮かべた後、うなづいた。

試してみる価値はあると考えたらしい。

遠矢先輩が弓を握る。

弓を握るときは自然と心が落ち着く。

ここが、例え魑魅魍魎の地獄であってもこの弓1本あれば精神統一が可能なのだ。

なにも...聞こえないし、感じない。

自分の世界とは穏やかなものだ。

弓を引く....たったこの動作だけに全てを込めて。目標はただ、一点。

狙いうつ...!!!!!!


「 永遠の弓弦エターナルアロー!!!」


放たれた弓矢はただ、炎帝へ。

その、行動のみに集中された1本は何者でも折れない強さとなる!!!!!


「たしかに今まで見てきた中で一番の弓だ。だが、無力と化す」


その力、絶対なり。能力消去マナデリート

何者でも折れない矢を折ることなく吸収するという形で奪ったのだ。

炎帝は、すでに高笑いをする勢いだ。

それはそうだ。

例えどれほど最強の能力でも消去されれば無力なのだ。


「さて、使わせてもらうか。貴様のその力!自分が丹精込めて絞り出した矢の一撃で死ぬなら本望だろう!!」


片手を矢に変える


しかし、最強の矢が片手に突き刺さって。



「なんだ...これ....」


片手には大量の血液が流れ落ち、零れ落ちた血が地面に血だまりを作っていたのだ。

片手に激痛が走る。もう片手は使い物にならないだろう。


「なんだ..これ...なんだ...これ...なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


最強の男に浮かんだ初めての感情。恐怖。恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖

このおれが...敗北する???ありえない。ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない


「一体...なぜ???」


「矢の矛先を見てみてみな」


矢の針は普通放たれる方向ではなかった。

逆...そう。逆だったのだ。


「おまえはたしかに吸収された能力は使えるが方向までは変えられないようだな。炎帝。お前の負けだ。」


おれの...負け???この男、炎帝が??


敗北など許されない。許されることなどありえないのだ。

言うことを聞けよ片腕!!!!!

しかしもういくら力を込めても手で握りしめることができないのだ。

もう此の手は自分の物ではないのだ。


なら....片手だけでも!!!!!!


「 永遠の弓弦エターナルアロー


おれは慌てて 能力消去マナデリートを駆使する。

だが、 能力消去マナデリートした先にはやつがいた。


「明ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


釘刺一発ニードルスピア!!!」


釘とは、打たれる力が強ければ強いだけより深くに刺さる。

そう、この能力はまさに俺のためにある能力なのだ。


おれは自分の身体に鞭をうつ。その力が強さとなるのだ。

例え、ボロボロになっても構わない。

無傷のまま勝利なんておれには似合わない。

ただ、その力こそおれの最強だったのだ。


「最強....おれは...最強...」


脳天を突き刺していても、最強という言葉が出てくるらしい。

こいつは..炎帝は..力を過信しすぎたのだ。


強すぎる力は身を滅ぼす



こいつのためにある言葉だったのかもしれない。



「おれは...おれはこの世界の全てに釘を刺したんだ。」



終わった.....この矛盾だらけの世界が終わりを告げる。


終わりゆく世界の中で...終わりゆく世界の中で....


最後に見たものは、ちっぽけな仲間たちだったのだ。


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