終焉
いよいよ3対1という圧倒的不利な戦いが始まった。
「おら!!くらえ!! 台風!!」
それは巨大な竜巻だった。倉庫一面を覆い尽くすような竜巻がおれに向かって飛んできたのだ...
竜巻の能力...?いや..風の能力か!!
恐らく風を操ることが可能なのだろう。
俺の能力は釘の能力..接近戦がメインだし遠距離で釘をとばそうにも恐らくこの風じゃ吹き飛ばされるのが関の山であろう。
考えろ..考えろ..思考を張り巡らせろ...
どんどん竜巻が間近に迫ってくる...
ちくしょう..万事きゅうすか...
「明くん!左に飛んだあとそのまま右に飛んで!!」
最後に聞こえてきたのは先輩の声だった。
俺がうらぎっているって知っていながらも協力してくれるのか...?いや..それとも罠か...
だが、もう罠でもなんでも迷っている時間はなかった。
ただやられるのを見守るか、足掻くか、やることはもう一つしかない。
台風を確認する。確かに全体を覆いつくすほどとかいっていても本当に全体を覆いつくしたら倉庫自体が吹き飛んでしまう。
だから、あの男は吹き飛ばさないギリギリの風を作っているのだ。
つまり..わずかな..隙間がある..
左に飛んだあと...ここか!!
左にはその部分だけ風の影響を受けていないがあった。
さぁ..もう右を計算する余裕はない!飛べ!
おれは、左にある僅かな隙間を狙って飛んだ!
身体は...宙に浮いてはいなかった。
吹き飛ばされそうな風だがなんとか吹き飛ばされてはいない..右に迷っている時間はない。とりあえずおれは右の方向に全力で飛んだ。
地面に..足は....ついた!!
「な..なんだと!!?おれの、 台風が!!?」
すぐ目の前にいる男はさっきの力と元々前に萃香先輩と戦ったおかげで疲れが見え始めていた。
これなら...いける!!
おれは、片腕を釘に変える!!
「貫け!!!」
「ぐ...グハッ...」
おれの釘は男の心臓を突き刺した。
男はそのまま倒れこむ...
恐らくもう息はしていないだろう....
「よしっ..。まずは1人目..」
「明くん!!避けて!!」
先輩の急な大声におれは脊髄反射で飛んだ。
するとさっきいたおれの場所に手が伸びていた。
「ちっ..惜しい..」
地面が声が聞こえてくる。
こいつは..土に潜れるのか..!!?
「そいつに連れ込まれたらおしまいよ!避けて!!」
「避けてと言われましても..」
おれはとりあえず捕まらないようにその場を走った。これなら捕まることはない...
だが...
ハァ......ハァ....
スタミナが切れかけている。さすがにずっと走り続けるなんて出来ない...
それにこのまま逃げ続けてもこいつを倒すことは不可能だ...
考えろ.....その先を...
思考を休めるな。おれは精神を集中させる。身体がもうフラフラだが頭は冴えている。
....そうか!!
おれはついに立ち止まった。
「なにしてるの!?明くん!逃げて!!来るわよ!!」
萃香先輩が叫ぶ。殺されそうになった人のためを考えられるなんてあの人は優しすぎるんだ。
おれとは、人が違う。
おれが目指したヒーロー像っていうのはこんな感じだったのかもしれないな...
手が地面から生えた。その手はしっかりとおれの足首を掴んでいる。離れようと抵抗してみるも..無駄だ...
「さぁ..地獄の世界へようこそ。土の中は暗くていいところだよ」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
おれはそのまま、地面の下へひきづられた。
地面の下は言っていたとうりまさに暗闇だった。なにも見えない。目も開くことさえままならない。
開いてしまったら最後、目の中へ一気に土が入り、最悪は失明することになる。
耳も土が大量に入ったせいだろう。なにも聞こえてくることはなかった。
つまり、この空間では3感に頼るしかないのだ。
「あばよ!!」
「グフッ..!!」
今なにものかに攻撃された。いや、間違いなく土の男だろう。
土の能力者というよりは恐らくモグラのような能力者なのだろう。
爪で引っかかれたのだ。人間の爪の硬さではない。
骨の砕ける感覚がした。
もう何発も受けられるものではない..
感覚を研ぎ澄ませ...
俺が奴ならどこを狙う..?
左からか?右からか?
いや、先ほど左の方から攻撃されたんだ。
こんかいは右からのはずだ!!
おれは釘の力を右に力いっぱいに込めた。これで攻撃したら奴は反撃を喰らう。
確率は2分の1!!!
グサッ!!!!!
刺されたのは....モグラ男だ。
「ぐ.....グフッ....」
この感触は間違いない。手応えはあったのだ。
だが、問題はここからだ。おれはモグラ男でもないから地中を自由にすることはできない。
おれには釘の力しかない。
なら、それを最大限に使うまでだ。
ありったけ..ありったけ...
おれは残された全ての力を右腕に込める!
「地面にまで、おれは釘を刺す!!」
天井に向かって巨大な釘を突きさす!!
釘を巨大化させると、それはもはやドリルのようなものになるのだ。
まだだ..まだ..!!
つきやぶれ..つきやぶれ...
目が見える訳ではないから本当に上に突きさしてるのかもわからない。本当に突き破ることも可能なのかもわからない。
だが..おれは自分の感覚を信じている。
「突きさせぇぇぇぇ!!」
天井をみやげると..そこには倉庫の天井かあった。
周りを見渡せる...周りは倉庫だ。
台風の攻撃により色々な機材は荒れているが目も見えるし耳もきこえる...
最後に自分を見ればそこには全身土塗れになった自分がいた...
「帰ってこれた...」
「嘘だろ...土の能力が負けた!!?」
最後の一人はまさに唖然とした表情だった。
「こんなやつありえねぇよ..おかしいよ...化け物だ..化け物だーー!!」
男は脇目も振らず一目散にはしりだした。
そのまま倉庫から出て、走り去っていった。
恐らくもう二度とこの学校に来ることはないだろう。
おれに、男を追う力などのこされておらずそのまま倒れこんだ。
身体じゅうが悲鳴をあげている。
もう一歩も動けないとはまさにこのことだ。
おれはそのまま倒れこむとまるで眠るかのように気絶した。
 




