決着
「そ..そんなことが..」
「それからは、もう大きな出来事は起きてないよ。引きこもってずっと隠れていたんだ。1回会長が、ぼくの家に来たことがあったよ。でもぼくは会長対策に家じゅうにトラップを仕掛けてもし家に入ってきたら四天王に連絡するトラップが仕掛けてあると脅したんだ。四天王は争いが起きているのを止めようとしている。いくら四天王の1人とはいえ会長自身も3人を相手にはしたくないんだろう。素直に引き下がってくれたね」
「やっぱり会長はまだ怖い?」
西崎は恐怖しているんだ。なにを隠そう会長に。おれは手が震えるのを感じた。
「そりゃ..怖いよ。なんせあの人には全てお見通しなんだもの..なにかぼくの心を見透かしているような..そんな違和感を感じるんだ..」
おれはまるで自分の心が見透かされているような気持ちになった。なんせ..同じなのだ。おれが、遠矢会長に感じている気持ちが。
たしかに今は味方だがいつ敵に回るかはわからない。なにより会長を越えなかったら世界を滅ぼすなんてできないのだ。
「でも. .君は信じられるよ。ぼくは話すことは全て話した。後は..君の番だよね?」
「......え..??」
いかん。おれはその焦りで声が少し裏返ってしまった。
しかし..どういうことだ??まさか..ばれたのか..
「さすがにヒーローだけじゃそんなに信ぴょう性はないよね。他にもどういうことしてるんかよければぼくにも話してくれない?」
そいつはそうだ。おれは、まだ自分のことをヒーローという嘘以外なにも話していないんだ。ここで嘘をつくべきなのか、それとも本当のことを言うべきなのか悩んだ。
悩んだ末..この人にはある程度本当のことを話すことに決めた。ここでおれのことを話せという事は少なくとも疑っているという証拠なのだ。おれはここに来てわかったことがある。嘘が..下手なのだ。
このままじゃボロがでてしまう。それならある程度本当のことを混ぜた方がいいと考えたからだ。
「え...えっと..おれの本名は早乙女明。一応、青藤くんと一緒の学校で困ってる人は見逃せない主義だ」
最後は少し恥ずかしかったが嘘を混ぜておいた。おれはそんな大きな人間じゃない。だが、ヒーローと名乗ったからには必要なことだと思っている。
ヒーローというのは一言に言って様々な定義があるがおれは困ってる人は見逃せないような人がヒーローだとおもう。
なんせ..おれ自身が憧れていた姿だからだ。
いじめられた時、おれはそういう人がいたらどんなに変わっていたかと思える。
だが..現実は..おれが一番分かっているんだ。
そんな奴はいないって..だからこんな力が手に入った。こんな..忌々しい力が...
「へぇ!早乙女くんっていうんだ。改めて..よろしくね」
おれは、求めてこられた握手を..握手より..先に言うべきことがあるのを思い出した。
「そして..おれは..おれは..いじめられていたんだ」
青藤が伸ばしてきた手が..固まった。
もしかしたらヒーローでもなんでもないのがばれてしまうのかもしれない。
でも..これだけは..言わなければないと思ったんだ。
「昔..おれも..いじめられていたんだ。だけど..いじめっ子は..倒せなかった。そしたらもって強い奴が現れて..」
「えっ..早乙女くん..君はなにをいって..」
「今もそいつに負けっぱなしなんだ」
言ってしまった。おそらく言わなければよかったことだが、後悔はしていない。前に進むんだ。
「そうか..じゃあそいつに勝たないとね」
青藤は..わらった。笑っておれにほほえんだ。
「そう..勝たないといけないんだ。だから..だから....だから..」
おれは青藤を刺した。正確には刺していた。青藤は胸に無抵抗のまま釘をさされて、血を吹き出した。青藤はもう声が掠れきった声で言葉を発しようとしている。
「そっか..そっか..なら..必ず..勝ってね。ぼく...は..応援..して..る..か..」
そこで..止まった。
青藤の言葉も..息も...
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
この道しか..本当になかったのか。もしかしたら青藤と共闘して遠矢会長を倒すという道もあったのかもしれない。
青藤は..死ぬまでぼくを応援してくれた。
自分が殺されたのに..それでも掠れきった声で応援してくれた。
そんな人を裏切ったのだ。人を殺したんだ。
もう..戻れない。
綺麗なヒーローもどきには。
だが..進むしかない。
ぼくにはその道しか残されていないんだ。