もぐり酒場"ブルーヘブン・ボールルーム"にて
皆さん、どうも。
勅使河原氏です。今回が初投稿になります。
クトゥルフの呼び声というゲームのリプレイを小説にしました…
何故こんな無謀な事をしたのか……自分でもわかりませんw気づいたら書いてました←
拙い文章ですが、どうか生暖かい目で見守ってください。
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メイン・ルームのスイング・ドアを開けながら、ザック=プレスリーは自分の今の状況をとても憂鬱に感じていた。愛国心溢れる彼にとって仕事のためとはいえ、違法に酒を出すこの店に入らなければならないことは苦痛に他ならなかった。
この店は「ブルーヘブン・ボールルーム」といい、ボストンにあった。もぐり酒場だが、音楽はホットだし、客は洗練されてるし、酒は輸入物で本物であった。この店がボストンで1番の高級酒場であり、政治家や実業家、成金などといった金持ち達がこの街に来たときには必ずここに寄る、というのも腹立たしいことだがザックには納得がいった。
ドアを開けると、バーテン服に身を包んだこの店のマネージャーが、申し訳なさそうな表情をしながらさっと近づいてきて挨拶した。隣にはザックと同じぐらい屈強そうな白人が二人いて、ザックのことを睨んでいる。
「申し訳ございませんお客様……只今非常に混んでおりまして…少々お待ちください。」とマネージャーは言った。
ザックが名前を名乗ると、「ああ!ザック様でいらっしゃいましたか。これは失礼しました…すぐに席をご用意いたします!」と慌てるように言った。
店は3階建てで大箱だが、1階はタキシードを着た男性やイブニング・ドレスを着た女性など、多くの人で賑わっており、その席の9割ほどが埋まっていた。その中をウェイターたちは舞うように動き回り、ジャズの音楽と人々の会話のざわめきが、部屋を満たしていた。
ザックはようやくバーの近くの隅にある大きなテーブルの席に案内された。
そのテーブルには既に男が二人座っていた。
「すいません、ここの席よろしいですか?」とザックは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべながら言った。
二人の内、一人は中肉中背で、非常に濃い眉をしていた。彼はゆっくりとザックの方を向くと、同意の印に頷いて見せたが、自分の隣の椅子に手をおいて席を確保していた。
誰かと待ち合わせてるのかな、とザックは思った。
もう一人はザックの事など気にも留めない様子で、客の方を見ながら、物凄いスピードでスケッチを描いているようだった。その男は帽子で顔が隠れていて、良く見えなかった。
こいつもマークしておくか、と考えながら、椅子に座って、ウォッカ・マティーニのシェイクをバーテンに注文した。
すると、先ほどのマネージャーがザックに言った。
「では、ザック様。よろしくお願いします。」
「分かりました。お任せください。」
その言葉を聞いたマネージャーは笑みを浮かべながら、その場を後にした。
ザックは内心、店をめちゃめちゃにしてやりたい気分だったが、それを抑えて、店内を見渡した。ちょうどファイブスター・バンドがフルスイングの真っ最中で、大音量で『ドクター・ジャズ』を派手に演奏していた。
するとバーテンが酒を運んできた。「ウォッカ・マティーニでございます」
「ありがとう。」
ザックは酒を受け取り、チップをバーテンに渡した。そして周りにいる2人の男を悟られぬように観察し始めた。
あの不審な絵描きは、世界のあらゆる酒を大量に注文し、それらを飲もうとはせず、匂いを嗅いだり、酒をスケッチしていた。当然周りからは白眼視されている。
「こいつとは関わらないでおこう…」とザックはもう一人の男の方に目線を移した。
神経質そうな男は両方の眉をモジャモジャの一本の線にしながら、険しい顔をしている。一言も喋らず、そうかと言って音楽を聴いているわけでもなさそうだった。指で神経質そうにテーブルを叩いている。
「他の奴らはあんなにはしゃいでいるのに、こいつは何をそんなに思いつめてるんだ…?」とザックは考えながら、彼をさらに注意深く観察した。
彼は緊張している様子で、彼の顔に汗が光っているのが見えた。
彼の目はバンドの方を見ているが、やはり音楽を聴いている様には見えない。
バンドは『ドクター・ジャズ』を終え、『クラリネット・マーマレード』の演奏に入っていた。
ちなみにザック=プレスリーは私が使った探索者です。心理描写が妙にリアルに書けたのもそのためかもしれません。