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短編集

青いあの子と一緒に

作者: 天界


 瞬きの間に景色が変化していたという経験をしたことがあるだろうか?

 私はある。

 たったいま体験した。


 姿見の前で今日のコーディネイトをチェックしていたはずだったのになぜだか今は鬱蒼と生い茂った森にいる。

 横を見て、上を見て、下を見る。



「森すぎる。私はいつから森ガールに?」



 呟きが鳥の声や何かよくわからない声に呑まれて消える。

 森すぎた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 4ヶ月ほど経過してここがただの森ではないことと、実は私はサバイバル能力に優れている事が判明した。

 まずただの森ではないということだが、簡単に言うと地球じゃないっぽい。

 なぜかって?

 それは非常に簡単で、見たことも聞いたこともない……いや見たことも聞いたこともあったけど、それはリアルではなくてゲームで、ということであって……。


 まぁ要するに魔物っぽいのがいっぱいいるのだ。

 6本足の体長2mくらいありそうなオオカミっぽいのとか、サーベルタイガーみたいな牙がでーん、と生えてて額に巨木を実際にぶち折っても傷1つつかない分厚い盾のような皮がついたイノシシとか。

 決定的だったのは何もない空中から炎とか氷とか見えない風の刃とか、そういう魔法チックな何かで襲ってきたヤツラとかだろうか。


 いやぁ、あの時は死ぬかと思った。

 でも私は生きている。

 結構五体満足で。実は傷1つない。

 しかもトムソーヤーもびっくりな結構優雅な生活まで送っている。


 流れのゆったりとした川が近くにある場所に陣取り、邪魔な木を殴り倒して根っこを引き千切って開墾したりして手刀で綺麗に形を整えた木材で即席の家を組んだりした。

 最初は簡単に作っていたけど、今では割と手を入れてちゃんと水抜きしたりして強度を確保したり、燻したりして虫に食われなくしたりして結構綺麗。


 食料も最初こそ気合が必要だったけど今ではそうでもない。

 内臓なんかも結構美味しい。

 きのこ類は1度笑いが止まらなくなってそれ以来食べてないけど、果実類も実は結構あって充実してる。



 この4ヶ月、人……人類という名の人科人目には出会っていないがそれ以外の人型っぽいのなら何度も出くわしている。

 もちろん襲われるんだけどね。

 あぁちなみに美味しくなかった。


 ところで話は変わるんだけど、最近生ゴミ捨て場に変なのが巣くっている。

 特に害があるわけでもないし、むしろ生ゴミの嫌なにおいがなくなっているのでありがたいくらい。



「今日はこの林檎っぽい果物の皮をあげよう」



 普段は林檎の皮も食べてしまうので本当に残る生ゴミは生ゴミというよりは何か違うものなんだけど、今日は奮発してあげることにした。



「どう? 美味しい?」



 青いぷるぷるしているこの子は不定形で、生ゴミを吸収して消化するみたいだ。

 なんでも食べるように見えて木材とか石とかそういうのは食べない。

 襲ってくる生物の骨とか与えてみたけど、そういうのは食べられる。


 ぷるぷる震えながら林檎の皮を吸収して消化し始める青い子。

 吸収した部分から色がちょっと変わって青に赤が混じって、すぐに青に戻る。

 もしかして大量に与えたら赤くなるのだろうか。

 ちょっと面白い。


 最近生活も安定してきたし、保存食なんかも大量に備蓄できてきた。

 余裕があるというのはいいことだ。

 ペットの1匹でも飼いたいと思っていたところだし、話し相手にはならないが聞いてもらうだけでもマシだろう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 様々な物を与えて何か変化がないか色々試してみた。

 もちろんその間に私の愚痴とか今日あったこととか、でっかい爬虫類が空から襲い掛かってきて投げ飛ばしたら逃げってたとか色々聞いてもらった。

 ぷるぷる震えるだけで与えられた物を吸収消化するだけの青い子だけど、可愛い。

 どんどん愛着がわいてくるのを感じる。



「いつまでも青い子っていうのも変かな。名前をつけてあげたいんだけど……何がいいかな?」



 ぷるぷる震える青い子がちょっとだけびろーん、と伸びて戻る。

 なんだろう、意思表示?

 もしかして期待してる?



「よーし、なら君は青いからブルーってのはどうかな! サファイアでもいいけど、やっぱりブルーでしょ!」



 びろびろーん、と伸びて戻る。

 やっぱり可愛い。

 ブルーも心なしか嬉しそうだ。

 その後もお話して今日は終わった。

 ちなみに私のテリトリーと化しているこの家の周りにうろつくヤツラはもういない。

 だから安心してブルーも放し飼いにしておけるってもんだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ブルーにこの間襲ってきた爬虫類のお肉を食べさせてみたら、なんか不定形だったのが色々な形を取れるようになった。

 ちょっとびっくり。

 あの爬虫類のお肉にこんな不思議効能が。


 色々な形を取って私に見せてはぷるぷる喜んでいるブルーに私も笑顔になる。

 この森に来てからブルーに会うまで笑った事なんてほとんどなかったから嬉しい。


 そんな私の雰囲気がブルーにも伝わったのか、ブルーが激しく形を変えたと思ったら……分裂した。


 子ブルーの誕生だった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 子ブルーはブルーと同じように最初はぷるぷるするしか出来なかったけど、今日山1つ越えたところで見つけた黒い大きな爬虫類のお肉を食べたらヒトデみたいな形で定着してしまった。


 ブルーみたいに色々な形になることはなく、ヒトデだ。

 なんでヒトデなんだろうか……。

 疑問は尽きない。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 この間ヒトデになったと思った子ブルーだったけど、実は今馬になっている。

 意味が分からないだろうけどしかたない。

 あれはどう見ても馬だ。

 ただ大きさは手の平サイズでミニポニーなんて目じゃない小ささだ。

 触ってみるとぶよぶよしてるけどしっかり形を保っている。

 ブルーは今でも色々な形になってる。

 子ブルーみたいに馬状にもなれるけど、長時間は形状を保てないみたい。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 なんか子ブルーが大きくなった。

 その子ブルーの上にブルーが乗っている。

 馬な子ブルーの上に不定形なブルー。

 そんなんでいいのか君たち。


 私も乗ってみたいのだがまだまだ子ブルーの耐久力は低いらしく、ブルーくらいの重量しか乗せれないようだ。

 私が重いわけじゃない。決してない。


 早く私も乗りたいので今日は氷で覆われていた大きな洞窟の中にいた青い爬虫類のお肉を食べさせてみた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 子ブルーが凍ってる。

 意味が分からない。あのお肉のせいだろうか。アイツ氷の息とか吐いてきたしなぁ。

 でも死んでいたり、弱っていたりするわけではないようだ。

 凍ってるけど動いてる。ぷるぷるはしてないけど。

 触ってみるとひんやりしてて気持ちいい。

 強度も上がっているようだけどこれに乗ったらお尻が大変なことになりそうなので毛皮とかで鞍とか作ってみようかしら。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ブルーを膝に乗せて、子ブルーに跨り翔ける。

 駆けるじゃなくて、翔ける。


 なんか子ブルーが空飛んでるのよね。

 まぁ可愛いからいいけど。


 空からみた森はとんでもなく広かった。

 地平線の先の先までずっと森。

 森以外ないんじゃないかと思えるくらい森。

 山と思っていたところも森だった。

 氷で覆われていた洞窟も、火山みたいな所も森だった。

 何を言ってるのかわからないかもしれないが、森なんだから仕方ない。



 空を翔けるのは気持ちいい。

 ブルーも子ブルーも楽しそう。

 時折やってくるでっかい鳥とか爬虫類モドキが襲い掛かってくるけど、子ブルーが氷の息を吐くと落ちていく。

 子ブルーすごい。

 ブルーはぷるぷる震えているだけだけど、可愛いので問題ない。



 火山みたいな森で出くわした炎で出来た人から取れたルビーみたいな宝石をブルーに食べさせてみた。

 石は食べないんだけどこれはなんか欲しそうにしてたのであげてみた。


 そしたらいつかの爬虫類のお肉の時のようにブルーが震えて……分裂した。


 子ブルー2号の誕生だった。

 でもこの子赤いのよね。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 子ブルー2号も子ブルーと同じように形が定着するタイプみたい。

 馬だった子ブルーとは違ってヒトデから変わって虎みたいなライオンみたいな……ライガー?


 子ブルー2号かっこいい。


 この子も色々な物を与えてみたら空飛べた。



 相変わらずブルーは私の膝の上だけど、子ブルーと子ブルー2号と空を翔ける。


 次は新しく見つけた氷山っぽい森に行って見よう。

 また家族が増えるかもしれない。



 子ブルー3号はどんな形になるんだろう。

 楽しみだ。




びろろーん。

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― 新着の感想 ―
[一言] ブルーと小ブルー達(一匹はブルーにあらずだけど)が可愛いww
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