最後の選択 9
「え……み、澪?」
「なんで、そんなこと知りたいんです? 関係ないじゃないですか、私と隆哉君にとって」
「そ、そうなんだけど……」
僕がそう引き下がると、澪は一転してニッコリと微笑んだ顔を僕に向ける。
「それより、知りたくありませんか? 私のこと」
「……え?」
「だって、知っています? 隆哉君は私のこと」
「み、澪の……こと?」
「私が好きな食べ物とか、私の特技だとか、私の好きなもの……ああ。好きなものは隆哉君なんですけど……知っているんですか? 隆哉君は」
「あ、え……そ、それは……」
「知っているんですか? 答えてくださいよ」
そう言われてしまうと僕は口ごもってしまう。
澪には今まで頼りっぱなしだった。
でも、澪と一緒に遊んだとか、そういう記憶はあまりない。
あくまで澪は僕達幼馴染の保護者的立場だったから。
別にそう意識していたわけでもないが、自然とそんな感じになってしまっていた。
だから、僕は澪のことを他の幼馴染程に深く知らなかったし、今までも知ろうとしなかった。
そんな僕の態度を見て、澪の乾いた瞳が刺すように俺を睨む。
まるで蛇ににらまれたように、僕は動けなくなった。
「……知らないんですよ。隆哉君は。私のこと。なーんにも」
澪は冷たくその言葉を言い放った。
「……私がどんなに隆哉君のことを思っていたか……夢ちゃんや杏ちゃん、翼のことがどんなにうらやましかったか……私だけ、いつも損な役回り。私だって、隆哉君に甘えたかった、からかってみたかった、一緒に遊びたかった……ズルイですよ」
澪は悲しそうに俯く。
……そうか。やっぱり、全部、僕のせいなんだな。
やり直しでもなんでもない。罰や報いといった方がいい。
僕はこれまで四人の幼馴染にそれぞれどれだけツライ思いをさせてきたのかという……
「なのに! どうして!? どうして私にまだ興味を持ってくれないんですか!」
聞いたことのないような大声で、澪は怒鳴った。
「そ、そんな……僕は……」
「……うふふ。でもいいんですよ。時間はたっぷりあるんです。興味が持てないなら持てるまで待ちますよ。何年でも、何十年でも……だって、私はこんなにも、隆哉君のことが好きなんですから」
そのまま澪は半笑いを浮かべながら扉を開けて出て行ってしまった。
残された僕はただ呆然と、澪が出て行った扉を見つめることしかできなかった。




