バッドエンド 5
「ワシは恋愛成就の神様と申したよな?」
「え? あ、ああ」
「ワシの仕事は男女の関係を結びつけること。つまり、お主に関しても誰かと結び付けなければならんのじゃ」
「はぁ……」
「わからんか? ワシはお主に機会を与えようと言っておるのじゃよ」
「機会?」
「そう。お主が誰かと結ばれるようにする機会、をな」
神様は得意げにそういった。
誰かと結ばれる……機会?
僕は意味がわからないという顔で神様を見た。
「え、えっと……つまり?」
「まぁ、言ってもわからんじゃろうな。実際に体験しないと」
「え? 体験?」
「そうじゃな。少し早い気もするんじゃが……どれ、さっそく始めようかの」
神様は立ち上がって僕を見た。
「よいか? 動くでないぞ」
そういうと神様は目を瞑って、うーん、と唸る。
僕はどうしたらいいかわからず、しばらくその様子を見ていた。
「うーん……」
「え、ちょ、ちょっと……」
「うるさい。今集中しているのじゃ。話しかけるな」
「あ……ごめんなさい」
そして、またしばらく、神様は唸っている。
唸っている、というか何かを念じているようにも聞こえる。
一体何を念じているのか……
「ね、ねぇ……ちょっと……」
時計がないので時間がわからなかったが、おそらく五分くらいした頃だったと思う。
しびれを切らした僕は神様に話しかけた。ちょうどその時だった。
「喝っ!」
「わっ!?」
神様は目を見開いて叫んだ。
しかし……何も起こらない。
真っ白な空間はシーンと静まり返ったままだった。
「……な、なんだ。脅かさないでよ」
すると神様はゆっくりと僕の方を見た。そして、また嬉しそうに笑う。
なんだか背筋を冷たい物が走った。
「では、始めるかの」
「え?」
と、瞬間だった。
僕の座っていた場所にぽっかりと大きな穴が開いたのだ。
そのまま僕は吸い込まれるようにその穴に落下していった。