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僕が死んだ日 2

 夢……


 僕は確かに一度夢に殺された。


 だけど、夢は大切な幼馴染であることに変わりはない。


 だとしたら、そんな夢が、苦しんでいる……


 しかも、僕のせいで苦しんでいるだとしたら……


「お主」


 と、頭の中に神様の声が聞こえてきた。


「な、何?」


「まさかとは思うが……森崎夢の家に行く気ではあるまいな?」


 僕は黙る。何も考えないようにする。


 いや、だけど、もう神様にはわかってしまっているはずだ。


 僕が何をしようとしているのか。


 確か、今日も夢は休みだったはず……


「……はぁ。ワシは、知らんからな」


 そういう神様の溜息が聞こえるが早いか、僕はトイレから走しり出した。


「……はぁ……はぁ」


 そして、来てしまった。


 僕は目の前に家を見上げる。


 小さい頃はそれなりにやってきた家だ。


 僕はゴクリと息を整えるために生唾を飲み込んだ。


 そして、目の前のチャイムを鳴らす。


 電子音が響いた。しかし、返答はない。


「……留守、かな?」


 そう言った時だった。


「……はい?」


 元気のなさそうな声が、インターフォン越しに聞こえてきた。


 僕は思わず驚いてしまう。なんというか……変に緊張していたのだ。


「あ……あの……」


「えっと……ど、どちら様?」


「ぼ、僕だよ! 夢! 僕!」


「え……も、もしかして……タカ君?」


「そ、そう! 僕だよ!」


 すると、インターフォンが切れる。


 そのまましばらくしてガチャリ、とドアが開いた。


「あ……た、タカ君」


 開いたドアの先にいたのは、パジャマ姿の夢だった。


 全体的に酷く痩せてしまっている印象だった。


 目の下には、はっきりと見て取れるクマができている。


 笑顔は浮かべていたが、どこか辛そうな表情だった。


「ゆ、夢……」


「き、来てくれたんだ、タカ君……は、入ってよ」


「あ、ああ……」


 僕は言われるがままに夢の家に入っていこうとする。


 が、その時だった。


「……!?」


 思わず後ろをふり返る。


「ど、どうしたの?」


「え、あ、あはは……な、なんでもないよ」


 今確かに……いや、あり得ない。


 今は学校の時間。それを僕は抜け出してここへやってきた。誰にも断らずに。


 誰かが僕がここにいるなんてわかるはずもないのだ。


 僕は大きく深呼吸してから夢の後についていった。


「お母さんは今、お買い物に行っているから……で、でも、タカ君、今学校でしょ? なんで……」


「あ、あはは……そ、それはまぁ……」


 もちろん、言わずもがなサボリである。


 しかし、夢もすでにそのことに気付いているようで困ったように笑っていた。


 いつもの夢なら「学校サボっちゃダメだよ!」とか言ってくるはずだが、今日は嬉しそうに笑っているだけだった。


 しかし、その後が続かなかった。


 笑った後、夢は居心地悪そうに下を向いてしまった。


 そりゃあ、そうだ。僕は夢の告白を断ったのだ。


 なのに、こうやってここにいることはよく考えれば気不味い以外の何者でもない。


 僕はモジモジと辺りを見回しながらやり過ごす。


 夢もなるべく僕を見ないようにしているようだった。


 ……いや、このままじゃダメだ。


 なんのために授業をサボってまで夢の家に来たんだ。


 僕は大きく息を吸い込んで夢を真っ直ぐに見る。夢もビックリしたようだった。


「あ……ゆ、夢!」


「へ? な、何?」


「ご、ごめん!」


 直球だった。


 僕は思いっきり頭を下げて夢に謝った。

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