死の足音が聞こえる 1
次の日。
「ほら。隆哉。起きなさい!」
半ば叩き起こされるようにして、僕は目覚めた。
「あ、ああ……おはよう、杏」
「おはよう……じゃないわよ。遅刻するわよ。ほら、さっさと支度しなさい」
既に制服姿の杏は、怒り顔で僕にそう言う。
僕もそそくさと起き上がり、そのまま支度を始める。
リビングでは既に朝食も出来上がっていた。
「さぁ、早く食べちゃって」
「杏……お前が作ったの?」
「当たり前じゃない。他に誰が作るのよ」
苦笑いしながら杏はそう言う。
それはそうか。今はこの家で僕に朝食を作ってくれるのは杏なのだから。
杏お手製の料理は非常においしかった。
夕食もそうだったが、朝食もそれくらいうまい。杏は料理がうまくてよかった。
「食べ終わった?」
「ああ。おいしかったよ」
そういうと杏は嬉しそうに微笑む。
その顔を見ていると、自然と僕自信も笑顔になってしまった。
やっぱり、僕は今幸せなんだよなぁ……
「ふふっ。ありがとう。でも、ほら、遅刻しちゃうでしょ。早く行きましょう」
「あ、ああ。そうだね」
そういわれて僕は時計を見る。
……ん?
そんなに急ぐほどの時間でもない。
むしろ早すぎるくらいだ。
なんだろうか? 杏の奴、急ぐ用事でもあるのだろうか。
「なぁ? 早すぎるんじゃないか?」
「え? 何が?」
「学校に行くのがさぁ……早くない?」
「そんなことないわよ。大体、アンタ、そんなこと言って遅刻したらどうするの?」
「そ、そりゃあ、そうだけど……」
そう言われてしまうとどうしようもない。
僕は大人しく杏に続いて玄関へと向かうことにした。




