バッドエンド 3
「え、えっと……つまり、神様が直々に僕をお迎えに来てくれた、ってこと? すごいな」
「いやいや。違う。そうじゃない。というか……そもそも、ワシは、お主を天国に連れて行くためにここにやってきたのではない」
「え? でも、神様、って……」
「神は神でも、ワシは恋愛成就の神様じゃ」
恋愛成就の……神様?
確かに、見た目には整った顔だし、着物は似合っているし、女の子だ。
恋愛成就の神様って、こんな感じなのかもしれない。
だけど、なんで、僕が死んで、恋愛成就の神様がやってくるんだ?
「え、えっと……その恋愛成就の神様が、既に死亡した僕、笠木隆哉に何か用?」
「ああ。用があるから、こうしてワシが自ら、出向いてきているのじゃ」
「で、でも……僕、恋愛成就の神様になんかした覚えがないんだけど……」
「な、なんじゃと!?」
と、白髪の女の子――自称神様は身を乗り出して僕の方へ体を寄せてきた。
驚いて僕は体をのけぞらせてしまう。
「え、え……な、何?」
「お、お主! ほ、本気でそう言っておるのか?」
「え……だ、だって……僕、恋愛成就なんて、神社でお参りした覚えないし……」
そういうと女の子はなぜかプルプルと震えている。
「え? ちょ、ど、どうしたの?」
そして、女の子は大きく溜息をついた。
「……まぁ、こんな様子じゃ、お主が殺されたのも納得いくわけじゃ」
と、女の子はジト目で僕をにらみつけた。
「……よいか? ワシは、恋愛成就の神様……小石川神社の神じゃ」
「小石川……神社?」
「……神林神社の正面の、寂れたボロ神社のことじゃよ」
恥ずかしそうに、悔しそうに僕に掃き捨てるように彼女はそう言った。
小石川神社、という名前に覚えはなかったが、ボロ神社、ということですぐに意味がわかった。
「あ、ああ! あのボロ神社!」
「ぼ、ボロ神社というでない!」
「あ、あはは……そ、そうか……」
なるほど。あの神社か。
というか、あのボロ神社に小石川神社、という名前があったのが驚きである。
誰も手入をしていないようだし、おまけに鳥居から境内まで何から何までボロボロで、神社かどうかも怪しかったのだから。