決断の刻 6
「な、何よ? 私がいたのがそんなに不満? も、もしかして……私のこと嫌いになった?」
と、いきなり涙を浮かべて僕の方を見る杏。
僕は慌てて立ち上がる。
「そ、そんなことないよ! た、ただ、驚いただけで……」
「ほ、ホント? ホントに私のこと、嫌いになってない?」
「あ、ああ。もちろん。嫌いになってないよ」
「……じゃあ、ナデナデして」
「……へ?」
「嫌いになってないなら、頭を撫でろ、って言ってるの! わかんないの!?」
なぜか半分キレ気味に僕にそういう杏。
仕方なく言われたとおり僕は杏の頭に手を乗せる。
そのまま杏の頭を撫でた。柔らかい髪の感触が心地よい。
杏はなぜか幸せそうに僕を見ている。
「あ、杏? もういいかな?」
「……うん。大丈夫」
すると杏はニッコリと笑った。
「じゃあ、もうすぐで夕食できるから、待っててね」
杏は再び鼻歌を歌いながらキッチンへと戻っていった。
「……ど、どうなってんだ?」
「ほーら。もう始まっておる。気をつけないとあっという間じゃぞ?」
頭の中で神様の声が響く。
「え? な、何が?」
「お主の死へのカウントダウン、といった所かのぉ?」
「え? ど、どういう意味!?」
しかし、神様は応えてくれなかった。
どういうことだ? また、僕は死ぬっていうのか?
でも、今度は夢とは付き合っていない。杏と付き合っている。
だから、今度は死ぬわけはない……はず。
だけど、なんだか不安なのである。
僕は相変らず感じる不安感を拭いきれないままに椅子に座っていたのであった。




