表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/98

決断の刻 5

「はぁ……しかし、疲れたな」


 家の前まで来て僕は大きく溜息をついた。


 思えば女の子から告白されるという、男の子にしては人生においてかなり大きなイベントを一日に2回も連続でこなしたのだ。疲れないわけがない。


 そのまま倒れこむようにドアノブに手をかける。


 ……ん?


 何か、おかしい。


「……開いてる?」


 僕の脳裏を一抹の不安が過ぎる。


 全身に冷や汗がにじみ出てきた。


 開いているのだ。鍵が。


 僕は慌ててドアを開ける。そこには特にあらされた様子もない玄関が存在していた。


「ま、まさか……」


 父さんと母さんがいない時に泥棒は困る。僕は靴を脱ぐと、恐る恐る廊下を歩く。


 この先に泥棒が待ち受けていたらどうしよう……


 そんな不安に駆られながらも僕はそのまま足を進める。


 そして、リビングのドアを開けた。


「……へ?」


 その時聞こえてきたのは、意外なものだった。


 ご機嫌な鼻歌だ。


 そのままリビングの奥のほうへ。


 と、鼻歌が聞こえてくるのはどうやら、キッチンの方からのようである。


 僕はそっとキッチンの方を覗いてみた。


「はぁ!?」


 僕は思わず声を上げてしまった。


「あ」


 と、振り返ったツインテールの後ろ姿。


「な、何やってんの……?」


「あら。お帰り、隆哉」


「え、あ……た、ただいま」


 つい流れで返事してしまう僕。


 そこにいたのは、笑顔のエプロン姿が眩しい杏だった。


「今、夕飯作っているから、ちょっと待っててね」


「あ、ああ……って、ちょ、ちょっと待て!」


「何よ。そんなに大きな声出して。びっくりするでしょ?」


「びっくりしたのは僕の方だよ! 杏! なんでここにいるんだ!?」


「はぁ? 何言ってんのよ? 当たり前じゃない。私達、付き合っているんだから」


「は、はぁ!?」


 杏は悪びれた感じもなく、何気なくそういった。


 いや……そりゃあ、付き合う、とは言った。


 けれど、それは僕の家に侵入していることの理由にはならない。


 そもそも、もっと重要な問題があるのだ。


「と、というか……ど、どうやってここに入ったんだ? 鍵は閉めてたし……」


「ふふ。愛し合う二人を阻むことなんて、何物にもできはしないわ」


「い、いや、だから、どうやって入ったのか聞いて……」


 しかし、杏は笑っているばかりで全く応える様子はない。


 というか、応えてもらったところでどうしようもない。


 杏は既にもう僕の家に入ってきてしまっているのだから。


 僕はそのまま大きく溜息をついて、椅子に座り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ