決断の刻 4
「じゃあ……帰りましょう」
「え? あ、ああ」
「私は支度しなきゃいけないから……先に帰ってるわね」
「え? あ、ああ」
なぜかそのまま手を振って杏は屋上から姿を消した。
僕もそれに笑顔で手を振りかえしたのだった。
「……やってしまったのぉ」
と、頭の中……と思いきや、後ろから聞こえてくる声。
振り向くと白髪の女の子が呆れた顔で僕のことを見ていた。
「あ、ああ。神様」
実体化した神様は軽蔑するような目で僕を見ている。
「全く……お主。確か、お主の考えでは、とりあえず、夢の告白を断り、その後のことはとりあえずその後で考える、とのことだったはずじゃが?」
「あ、ああ……で、でも、杏から告白されちゃったし……」
「はぁ……お主なぁ? わかっておるのか? これは明らかにダメなパターンじゃぞ?」
「え? な、なんで?」
神様は眉間に皺を寄せて困った顔をしている。
「……あまり言いたくはないんじゃが……杏はひいてはいけないカードだったんじゃよ」
「ひいては……いけないカード?」
「あるじゃろ? なんというか……そう。地雷、って奴じゃな」
「はぁ? 杏が……地雷?」
「そうじゃ。まぁ、すぐにわかると思うが……まぁ、こうなってしまった以上は仕方ない。せいぜい、用心することじゃな」
すると神様は、目の前からいきなり、ふっと消えてしまった。
用心、って……何を用心するんだ?
別にいいじゃないか。確かに夢には悪いことをしたと思うけど……
かといって夢の告白を断ったからといって、杏の告白を断るって理由にはならないはず。
だから、これでいいんだ。僕は悪いことはしていないはず。
だけど……この魚の骨が喉に引っかかっているような感覚はなんだろうか。
何かひっかかる……だけど、わからない。
仕方がないので僕はそのまま帰ることにした。




