選択肢は一つ、ではない 3
「しっかし……隆哉と夢にはほんと困ったものよね」
教室にて、杏はさもわざとらしく、大きく溜息をついていた。
僕の前で。僕はあくまで笑っていることしかできない。
「あはは。確かにそうだな。俺から見ても、隆哉と夢は付き合っているようにしか見えねぇよ」
「え、ちょ……や、やめてよ、翼」
しかし、翼でさえもニヤニヤとした笑みを浮かべて笑っているのであった。
「でも、私もそう思いますよ、隆哉君」
「なっ……澪まで……」
僕が困った顔を見るのが楽しいといわんばかりに嬉しそうに微笑む澪。
僕は教室で幼馴染達に囲まれて完全におもちゃにされていたのだった。
僕の横で、爽やかに微笑む、短髪の少女。見てくれは、女の子とは思えないほどに爽やかである。
彼女の名前は風早翼。名前も清々しい感じ全開である。
そして、その隣で、おしとやかな大和撫子を体現している、黒髪の乙女が、神林澪。
大和撫子そのものずばりで、彼女の家は神社である。神林神社という由緒ある神社だ。
つまり、澪は巫女さんなのだ。
「ふむ……よくもまぁ、ここまで女子に囲まれる状況に生まれたの。男冥利に尽きるといものじゃな」
頭の中の神様の声は皮肉たっぷりだった。
「し、仕方ないだろ? みんな幼馴染なんだから」
「幼馴染? すると何か? お主は古くからコイツらと付き合いがあるのか?」
「あ、ああ。そうだよ。かれこれ十年ね」
「ほぉ……なるほど。痴情がもつれるのには充分は期間じゃな」
「あ、あのさぁ……そういう言い方するの、やめてくれる?」
本当に、神様の言い方はいやらしいというか、下品というか……
僕はつい苦々しい顔つきになってしまう。
「ちょっと……隆哉」
と、杏の大きめの声でふと我に帰る。
「え? な、何?」
「何、じゃないわよ。ぼぉっとして、どうしたの?」
「い、いや……なんでもないよ」
適当にごまかすように笑う杏に笑いかける。杏はぶすっとした顔で僕を見ている。
しかし、次の瞬間には、ふいにニヤリと杏は笑みを浮かべた。
ああ。これはあれだ。ダメな時だ。
十年来の付き合いだからわかる。
杏がこういう悪戯っぽい笑みを浮かべた時は碌なことを言い出さない。
それだけはよくわかっていることだった。




