選択肢は一つ、ではない 1
その日はよく眠れなかった。
緊張してしまったのだ。
もちろん、その原因は、まもなく行われるであろう夢からの告白。
それに対し、僕はいかなる行動を取るか。
そこに神経が集中してしまうのだ。
たぶん、もし、仮にそれが明日行われるとしたら、僕にとってそれは、一度決定したら引き返せない選択肢。
そして、僕は過去においてその告白を了承している。
了承した結果、僕は死への運命を転がり落ちていった。
となると、明日はどうするべきなのか。
明るんでくる窓の外を眺めていると、段々と答えは出てくるような気がした。
「タカくーん!」
と、外から聞こえてくる声。
明らかに夢の声だった。
僕は起き上がる。ほとんど一睡もしていない。
そして、そのまま玄関へと向かった。
「おはよー! って、ど、どうしたの!? その顔」
「あ、ああ……あはは。眠れなくてさ」
「え? そ、そうなの? 大丈夫? 今日は学校休む?」
「いや……行くよ。今日は大事な日だからな」
そういって、僕は部屋に戻り、制服に着替え、支度をした。
そのまま玄関へ戻り、夢と合流する。
「本当に大丈夫? 朝ご飯も食べてないよね?」
「いや……後で食べるから平気だ」
「そ、そう?」
心配そうな顔で僕を見る夢。
その原因はお前なんだよ、と言ったら、夢はどんな顔をするだろうか?
そして、果たして、僕の横を歩いている夢は、今日、僕に告白してくるのだろうか?
思えば夢とは10年以上の付き合いだ。
そんな夢から恋人として告白を受けるなんて、正直、想像もしていなかった。
だから、その時はすごく嬉しかったんだけどな……
そんな風に考えていると、なんだか段々悲しくなってきてしまった。
「ちょ、ちょっと……タカ君?」
「え? ど、どうした?」
「な、なんでそんな悲しそうなの? 何かあった?」
「い、いや……大丈夫だ。ちょっと、変なことを思い出しただけだ」
「変なことって……何?」
「たいしたことじゃないよ。こうやって夢と一緒に登校して、普通に暮らせるのってすばらしいことだな、なんて少し感傷的になっちゃっただけさ」
すると夢は顔を真っ赤にして俯く。
あれ? 今、余計なこと言ったんじゃ……?
「言ったのぉ。余計なこと」
と、頭の中で神様の声がする。
「そ、そんな……わ、私はただ、タカ君の幼馴染なだけだから……」
そのまま、モジモジと恥ずかしそうに身体をくねらせながら、悶える夢。
確かに、思ってもないことを言ったわけではなかったが、言わなくてもいいことを言ってしまったのは確実だ。
僕はまた少し落ち込んだのだった。
「へぇ~、朝から何、イチャついてるの? お二人さん?」
と、そんな折に、僕達の背後から声が聞こえてきた。




