悲しき唄
ルルーとティアは一面真っ白な大地を歩いていた。
(ガースド・ベノムって誰なんだろう?脱走したって言っていたけど…)
ルルーは前を歩くティアを見ながら考えていた。
するとティアが立ち止まった。
「少し休みましょうか。さすがにずっと歩いているのはつらいでしょう?」
「確かに…少しつかれたかも」
ティアは魔法で火を付けた。
「ルルーはここで休んでいて?私は少し向こうの谷の近くまで行って居るから…何かあったらそこへ行きなさい、いいわね?」
ルルーは頷いた。ティアも頷き、歩き出した。
ルルーは周りを見回した。
(本当に北なのね、ここ…)
雪を見るのは初めてではないが、エルセント王国は中央に在り春夏秋冬の季節もある。だが、この北の大陸は一年中雪が降る。
そんなことをルルーが思っていると唄が聞こえてきた。
静かな唄、だがそこには悲しみがあった。
(行ってみよう)
ルルーは火を消し立ち上がった。そして唄が聞こえる方へと歩き出した。
ルルーがたどり着いた所は谷だった。
唄はまだ聞こえてくる。
ルルーが谷を歩いているとそこにはティアがいた。
(ティア?)
唄はティアが歌っていた。
(悲しい唄…)
ルルーはティアを見ながら唄を聴いた。
『あなたに罪はありませんか?
あなたの罪は私の罪
私達を包み込む原罪からは誰も逃れることはできないのです。
願う事は罪ですか?
何も罪も無い人がたくさんいるのです
みんなの罪は私が背負いましょう
たくさんの罪を私が背負いましょう
それですべてが終われば
すべての幻<ものがたり>が閉じれば』
ルルーはいつの間にか泣いていたのに気付いた。
――私はこの唄を知っている。…そうだ、この唄は九年前の大戦争の時に作られた唄だ――
ティアが振り向いた。泣いているルルーに微笑んだ。…しかしその笑みには悲しみが含まれていた。
「この唄は九年前の…エルセント王国とラスレティル王国との大戦争の時に作られた唄なの。当時丁度私があの地下から出た日、あの日から戦いが始まった。戦争のきっかけは私に宿っている絶望の力、絶望の力を封印していた…つまりは私を閉じ込めていたのを開放してしまったのがいけなかったの」
ルルーは驚いた。
「そんなの!?」
「私を閉じ込めて置くようにお父様に言ったのはラスレティル王国の国王なのよ。そして私が開放されたのを聞いてラスレティル国王は怒り、エルセント王国と敵対した…これが大戦争の始まり」
「ティア…」
ルルーはまた泣きそうになった、だが堪えた。
「大戦争のきっかけは私だと知ったとき私は罪を背負うことにした」
「!?」
「私の所為で始まった戦争で犯してしまった人々の罪を私がすべて背負うことにした。こんなことで人々の罪が赦されることが無いと分かっていても…私は、私は<わたくしは>すべての罪を背負わなければならない。たとえこの身が朽ちようとしても、血に餓えても…」
ルルーはティアに抱きついた。
「ルルー?」
「私は…ずっとティアの味方だよ?いつか…いつかきっと罰はやってくるよ?でも、その時は逃げないで?価値も真実も嘘も…すべて赦される日がきっと来るから」
ティアはルルーの頭を撫でた。
(もう少しこうしてあげましょう)
そう思いティアはルルーの頭をなで続けた。
空からは真っ白い雪がやさしく降っていた。
やっと更新できました。
遅くて本当にすいません。




