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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第6章 辺境弱小ダンジョンの収穫

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15.弱小超辺境ダンジョンの現在地



 さて。

 王都方面は決着がついたけど、村にはまだ問題が残っている。


 領存続の条件とされた、領主の交代である。

 いつの間にか村の役員にされていた私は、嫌々その会議に参加している。

 会議が終わったら辞表を出す予定だ。


「というわけで、おいら領主やめなきゃなんないから、カレル、領主やんない?」


 会議冒頭、ホーさんがいきなりカレル村長を後継指名した。


「は? んなもん誰がなるかよ」

「おいらの養子になれば簡単だけど」

「てめーの養子になるくらいなら死んだ方がマシだ」

「えー? 貴族になれるのに」

「そのお貴族様が喜んでやめようとしてるものに、血縁でもない俺がなるわけねえだろうが!

 息子はどうした。嫁だって仕事やってただろ?」

「息子はまだ子供だし、奥さんはおいらが領主だから嫌々手伝ってただけ。

 領主やってとか言ったら離縁される。

 そんなわけで、最後との仕事として後がまくらいは決めておかないとと思って。

 領主の責任だろ?」


 責任放棄の間違いでは?


「ほんとにダメ?」

「殺すぞ」

「ちぇっ、じゃあいいや」


 ホーさんはあっさり諦めて、A級冒険者パーティー「猫龍は神」の面々に視線を移した。


「じゃあ、マリアベル」

「……え? いやです」


 小さな大声で完全拒否。


「領主命令」

「りょ……」

「え? なんだって?」

「領主やめたでしょ?」

「まだ領主。それに王都のギルド長からの頼みだから。

 領の名前も変えていいよ? そうすれば、冤罪で取り潰された君の家の再興もできる。

 あと大きな声で喋って」

「それは弟に言って。私は冒険者がいい」

「だったら君がなって、すぐに弟に譲ればいいじゃん」


 しばらく考え込むマリアベルさん。

 

「……わかった。そうする。弟はともかく、母さんが喜ぶ」


 おお、了承した!


「ああ! おいらはこれでやっと解放される!」


 だから、思ってもそういうこと言わないの!


 ん?


「ホーさん、もしかして、自分が貴族をやめるため計画してたとかないよね?」

「え? おいらがそんな大それたこと考えるわけないだろ?

 ……でもいい土地があったら耕すよな?」


 ……目の前にチャンスが来たから、乗っかったと……。

 どの時点から考えてたのかはわからないけど、この騒動の一番の勝者はホーさんかもしれない。


 ホーさんが準備してた書類に、出席者全員が証人としてサインした。

 サインを盾に、提出した辞表を受理させたので、私的にはOK。


 そして、ダンジョンにも問題が一つ。

 こっちはかなり深刻。


 コアちゃんの調子が悪いのだ。

 クリスタルの光も少し弱い。


 やはりダンジョン分割の影響らしい。

 分割前にダメージがあることはわかっていたが、レベルⅡで短期間に2回もダンジョン分割したのは、相当無理があったようだ。

 

 DP的にはネーさんがいるから大丈夫だけど、破壊されない限り永遠に生きるダンジョンコアにとって、誕生10年でこんな状態になるのは酷だ。

 万一強い衝撃でも受けたら、壊れてしまうかもしれない。


 仕方がないので、盆地のジジイに相談しに行った。


 緊急ではないもものの、ジジイにとってもリリの生死にかかわる問題なので、真剣に答えてくれた。


『ふむ。修復は早い方がいいじゃろな。

 何かの拍子にヒビでも入ったら、そこから割れることもある』

「ならどうすればいい?」

『そっちのコアから聞いたぞ?

 エルフの里のダンジョンコアの修復方法を教えたのお前じゃろが。

 ああ、腐れダンマスはバカだから覚えとらんのか』

「……ああ、あれか!」

 

 そうだった。

 確か、他のコアを吸収させるんだった。

 でも、そのためにはダンジョン踏破しなくちゃだし、そんなダンジョンなんて。


「あるじゃん。

 ジイイ、割っていい?」

『黙れ、腐れダンマス。

 ワシを割って吸収させたって直らん。

 自慢じゃないが、ワシはスカスカなんじゃぞ?

 ちっとは頭使え』

「ちっ」


 舌打ちしたらジジイがキレた。


『舌打ちすな、この腐れが!

 破壊したコアじゃなく、ダンジョン自体を吸収させればいいんじゃ!

 割れたコアより何百倍も効果がある。

 それならワシでも充分足りる』

「でもそうしたら、ジジイはどうなんの?」

『ま、吸収されるんじゃから、不通消えるわな』

「ふーん。……そんでいいの?」

『さっき割ろうとしたくせに何言っとるか。

 それしか方法がないんじゃからしょうがないじゃろが。

 ワシは充分生きしたし、ダンジョンといってもこの穴だけ。

 リリのためになるなら心残りはない』

「……そう」


 ジジイがちょっぱやで覚悟を決めて、ちょっとビビる。


『ワシをリリに運ばせて向こうで吸収させるか、腐れがそっちのコアをここに連れてくるか、どっちでも構わん。

 早いとこ帰って決めろ』

「……わかった」


 ジジイが「早く!」と急かすので、戻ってコアちゃんに相談することにした。


『お帰りなさい、マスター。

 先輩から聞きました。

 マスターはここに留まるのと盆地に移転するののどちらがいいですか?』

「え?」

『先輩の申し出を受けることにしました。

 場所はマスターが決めてください』

「え? もう決めちゃったの?

 リリは? リリにも相談した?」

『はい。異論はありませんでした』

「……」


 戻ってくる間に、念話ホットラインで決めてた。

 コアと人間の思考回路の違いを思い知らされる。

 でも当事者同士が決めたなら、私は何も言わない。

 ジジイには申し訳ないけど、私はコアちゃんの方が大事だから。


 しばらく考えて私は結論を出す。


「引っ越そう」


 王族にも公爵にも、村のことは完全に認識されてしまった。

 村にじっとしていても、奴らは来るときにはお構いなくやって来る。

 この王国最小領に抵抗するすべはない。

 ならば、こちらは、どこの国でもない盆地に逃げるだけだ。


『わかりました』


 辺境から超辺境へ。

 移転はあっけなく決まった。


 仲間たちや村の人に説明をし、盆地に転移陣を設置することを決めると、準備が整ってしまった。

 亜空間の草原はそのまま持っていけるので、洞窟の温泉と広場の宿舎だけ畳み、設置してある転移陣を移動させる。

 温泉は作り直したばっかなのでもったいないけど、DPの方は大丈夫なので、盆地に行ったらすぐに復活させようと思う。


 外に移動させた転移陣から盆地に跳び、ジジイの塩山に向かう。

 穴の隣にコアちゃんを置くと、20分ほどで新しい2層のダンジョンが出来上がった。

 ダンジョン吸収はレベルⅡからしかできないので、コアちゃんは臨時の小階層を3つ作り、サクッとレベルを上げた。


『では、先輩のダンジョンを吸収します。

 万一に備えて、マスターは外で待機してください』


 私が外に出るとすぐ、コアちゃんの『開始します』の声が聞こえた。

 

 戦いではなく、両者合意の吸収はあっという間に終わった。

 塩山の穴を覗くと、ジジイは消えていた。

 いやなジジイだったけど、ちょっとは世話にもなったから、最期に一言くらい声をかけてもよかったけど、それをする時間もなかった。


『入っていただいて構いません。

 レベルも初級に戻しまた』 


 私は修復されたダンジョンに入る。


 まずはコア部屋。

 うん。クリスタルの光が元に戻っている。

 リリも元気に迎えてくれた。


 リリといっしょに各層を回る。

 第1層には温泉。1時間前に閉じたのと同じだ。

 第2層の草原も異常なし。


『続いて新階層です』

「新階層?」


 私はリリの後について、首を傾げながら草原奥の階段を下りる。


「は?」


 ……何でてめーがいる?


「どゆこと?」

『吸収したコアをどうするかは自由です。

 通常は魔石同様、単純に吸収しますが、ダンジョンインダンジョンとして完全に支配下におくことも可能です。

 先輩にはその形で残っていただきました。

 先輩にはまだ教えてもらうことがたくさんあります』

「びっくりした? リリが頼んだんだよ?」


 嬉しそうにリリが種明かしする。


『ワシは消えるつもりだったんじゃがな、かわいい孫に頼まれればイヤとは言えん』


 ジジイのニヤニヤ声が響く。


「だって、家族だもん」

「家族?」

「うん。リリはお母さんとミリねえの子供で、おじいちゃんはリリのおじいちゃんだから、ミリねえとお母さんはおじいちゃんの子供になると思う」


 げえええ。無理くりこじつければそういうことになるのかもだけど、それだけは絶対にやだ!


『お断りじゃ! こんな娘などいらん!』


 先に言いやがった!


「こっちこそお断り!

 ジイイを“お義父さん”とか呼ぶくらいなら、ヴァネと結婚してユードラさんを“お義母さん”と呼ぶほうがマシ!」

『おう、上等じゃ! 出てけ出てけ!

 腐れダンマスの代わりなどいくらでもおるわい!』

「おじいちゃん、そういうこと言っちゃダメ!」


 リリがスパッと割って入る。


『そうです。先輩もうちのマスターにあまり暴言を吐くようなら、結界でリリが出入りできないようにしますよ?』

「……」


 やーい、怒られてやんの。


『マスターもマスターです。先輩はこういう性格なんですからいちいち反応しないでください、大人げない』

「……」


 ふーんだ。


「……まあ生きてんのはしょうがないけどさ、ジジイのために1階層作る必要はなかったんじゃない? 洞窟の隅にでも転がしとけばいいじゃん」

『いえ、それでは意味がありません』

「ん?」

『先輩の役割はダミーコアです。

 万一襲われた時、最下層にコアがあればそれを本当のダンジョンコアだと誤認します。

 その間に、本当のコアの私は、階層を切り離して脱出します』


 なるほど、ジジイは囮か。


「くっくっくっ……。コアちゃん、おぬしもワルよのう」

『いえ、先輩のアイディアです。

 ご自分でその手順を考え、自ら囮役を買って出て下さいました』

「へ、へえ……」


 ジ、ジジイがかっこつけてんじゃねえよ!

 ここが危機に陥る可能性はほぼゼロなの!


 ……でも、完全なゼロではない。

 その可能性も微粒子レベルで存在する。


 従って、絶対に口には出さないが、いつか私が心の中でジジイにお礼を言わないでもない可能性も、微粒子レベルでは存在する。

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