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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第6章 辺境弱小ダンジョンの収穫

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11.ミリがかんがえたあくひょうのダンジョン

 王国軍の精鋭たちはちゃんとしている。

 雑用係を含めたブーちゃん以外の全員が、既に立ち上がってあたりを警戒していた。


 場所は高い壁に囲まれた砂地の広場で、出口は同じく高い壁に挟まれた狭い土の道が一本だけ。

 滑り台は閉じていて、1階にはもう戻れない。


 お付きの手を借りてようやく立ち上がったブーちゃんが、「聞いてないぞ」と怒鳴るが、みんな聞いてないんだからどうしようもない。

 天井を見上げ、ブーちゃんも閉じ込められたことはわかったようで、ひとしきり当たり散らしたら静かになった。


 意外。もっと暴れるかと思った。

 そんなにおバカというわけでもなさそうだ。

 そう言えば、昔はできる子だったってヴァネが言ってたな。


「モンスターの気配もないな。とりあえず周辺の調査だ。

 深入りはするな。何か見つけたらすぐに報告しろ。

 行け!」

「「「はっ!」」」


 隊長さんの掛け声で、兵士たちが一斉に動き出す。

 よく訓練されている。


「隊長!」


 直後、右手奥に向かった若い兵士が声を上げた。

 

「どうした?」


 隊長が駆けつけると、壁に怪しげな出っ張りがある。

 出っ張りの上には「↓ 押すと宝箱が出ます。」と岩に文字が掘られている。

 親切でしょ?

 それを見つめて考え込む隊長の横から太い腕が伸び、躊躇なく出っ張りが押された。


「王子!」

「考えていてる時間などない!

 我々はここに閉じ込められたのだ。

 食料も水もない。

 一刻も早く抜け道を見つけるか、コアを破壊して脱出せねばならん。

 それがわからんのなら隊長などやめてしまえ」

「はっ!申し訳ありません!」


 ブーちゃん、偉い!

 父さんもウンウン頷いている。


「森でもな、慎重さと」

「シッ!」


 解説は母さんに秒でぶった切られたけど、父さんの言うことは正しい。

 それ押さないとなんも進まない設計だから。


 その時、別の兵士の声。


「水場が現れました! 宝箱もあります!

 ええと……、魔石に全員の魔力を流せと書いてあります!」


 カメラが映す大きめの宝箱には蓋部分に大きめの魔石が並び、その上に、メッセージを書いた紙が張られてる。

 ほんとは宝箱に彫り込みたかったけど、意外と高かったので紙になった。

 宝箱は魔力を流して開けるタイプ。こっちは意外と安かった。

 

「よし。

 順番に魔力を流し、すぐに退避しろ」

「「「はっ!」」」


 最初の兵士が少しビビりながら魔石に手を載せ、即座に派手に横転して退避した。

 砂が舞い散る。

 すばらしい動きだ。だが、当然何も起きない。

 静寂。


「プッ!」


 ヴァネ、笑っちゃかわいそうでしょ?

 爆発するかもしれないんだから。


「ブフッ」


 でも笑うよね。

 

 少しバツが悪そうに兵士さんが立ち上がり、それからは皆、警戒はしつつも淡々と魔力を流してゆく。

 ブーちゃんも前半に済ませ、最後は隊長さんだ。

 何か起こるとしたらここだから、ちょっと慎重。

 隊長は魔石に触れ、すぐに後ろに飛び退いた。


 カチッと音がしてロックが外れる。

 みんなが見守る中、ひとりのおじさんがスタスタ近づき、躊躇なしに宝箱の蓋を開けた。

 表情は至って普通。


「デレクさんなのです」


 ん? ああ、ディオさんが仲良くなった雑用係さんか。

 まあ、雑用の部類だから仕事内容は合ってる。


「メシ入ってます」

「何だと?」

「えーっと、人数分のメシとカップが入ってます。

 まあ、お宝っちゃお宝っすね。あはははは!

 んじゃ、せっかくなんで毒見します」


 デレクさんは、宝箱からお食事セットのトレーを取り、パクパク食べだした。

 心臓に毛が生えてるタイプっぽい。

 完食。


「ごっそさん。

 美味くも不味くもないっすね。でも量はそこそこあるんで生きてく分には問題なさそうっす」


 慎重な他の面々は、しばらく様子を見ていたが、デレクさんに何の変化も見られないので、次々に食べ始めた。


 メニューはダンジョンパン、豆と野菜の冷めたスープ、セミドライの肉、干し野菜。

 肉と野菜は村の人たちの提供、ネーさんと母さんが火魔法で乾燥させた。

 1食1000キロカロリー。栄養バランスも完璧。

 ダイエットメニューとしては少し多めなのは、毎日ハードな運動になるので、栄養不足にならないよう考えた結果だ。

 この先、ダンジョン内ではこのメニューしか出ないけど、よく噛めば素材のうま味が出てくるので、味わって食べてほしい。 

 

 4段積みのトレーの下には一枚の紙。

 このダンジョンのチュートリアルが書かれている。


 目を通したブーちゃんと隊長から紙を渡され、兵士のひとりが読み上げる。


「1.このダンジョンには魔物は一匹もいません。安心して前にお進みください」

「えっ?」


 誰かが思わず声を上げ、ざわつきが広がる。


 気持ちはわかる。作った本人でさえそう思ってるんだから。

 DPがあったら私もちょっとぐらいは配置したかった。

 でもできなかったんだからしょうがないの。

 お互い諦めようね。


「静かに! 次!」


 隊長の声に、読み上げが再開される。


「2.このダンジョンには、命に関わるようなトラップ、毒はありません。

 3.途中にいくつかの障害物がありますが、全員で力を合わせれば必ず通り抜けることができます。

 4.食事は一日3食出ます。ただし、同じエリアでは提供されません。必ず次のエリアで受け取ってください。

 5.全員が食事を受け取らないと、先に進めなくなる場所があります。受け取ったあとは食べなくても構いませんが、他に食事の提供はありませんので、なるべく完食することをお勧めします。

 6.水場は各小エリアを抜けたところにありますので、今配ったカップを持参してください。なお破損した場合でも、カップの追加提供はありません。


 以上です。

 皆様の健闘を祈ります」


「なんだそりゃ?」


 デレクさんがぼそっとつぶやいた。

 隊長さんが、軽く咳ばらいをして、見解を伝える。


「聞いた通りだ。

 私も、訓練で何度かダンジョンには潜ったことがあるが、ここはかなり異色のダンジョンらしい。

 ダンジョンは侵入者の命を奪いに来るものだが、ここにはその意思がない。

 全員に食事を出すダンジョンなど前代未聞だ」


 だって、人死にNGなんだから、ごはん出さなかったら死んじゃうでしょ?

 死んでOKなら落ちたところを小部屋にして、毒でも流せば一発なのよ。そうなったら分割したダンジョンを再吸収できる。でも、ここはそういうのじゃないから。


「もちろん道中の警戒は必要だが、これまでから考えると、ここに書かれていることはある程度信用してもいいと思われる。

 だが、それは死にはしないというだけだ。

 下手をすればこの中で一生を終えることになるかもしれん。

 我々は、一刻も早くここから脱出すべく、全力でダンジョンコアを目指さなければならない」

「「「はいっ!」」」

「よし。それではしばし休憩の後、攻略を開始することとする。

 以上!」


 20分ほどの食休みのあと、ブーちゃん軍は進みだした。


 時々直角に曲がりながら、延々と土の道が続く。

 両側の壁の圧迫感のせいか、徐々に隊の空気が重くなってゆく。

 道幅は狭いので、2列縦隊が精一杯だ。

 ブーちゃんは先頭から2列目。横幅的に横には誰も入れない。


 そのブーちゃんがへばりだした。

 前に進もうとする意思はあるものの、足が。

 というところで、先頭の隊長の停止命令がかかった。


「総員警戒!」


 すぐさま壁を調べ始める。


「どうされましたか?」


 最後尾からやってきた副官が尋ねると、隊長は壁を指さした。


「見ろ。獣、いや魔獣の手形だ。恐らく、デビルズアームだ

 タイルのようだが、何かの警告かもしれん」

「デビルズアーム? 脅威度Aじゃないですか⁉」

「うむ。あの説明書には魔物はいないと書いてあったが、ブラフかもな。

 聞け! 魔物がいる可能性がある! 脅威度A、デビルズアームだ。

 警戒を緩めるな!」


 隊長は後方に向けて声を張りあげた。


 ヴァネがジト目でこちらを見ている。


「……私がやりました……」


 私は立ち上がって、進行の遅さに飽きはじめたみんなに頭を下げた。


「えー、デビリンの手形をタイル化して、何個か埋め込みました。殺風景すぎてつい……。

 あと、先に言っとくけど、なんか古代遺跡っぽい模様を適当に描いたやつもあります」


 「はあぁぁ」っていうため息がいくつか聞こえた。

 ごめんてば。


「あの、ここ抜けたらちょっと面白くなるはずだから。

 そこになったら呼びにいくから、みんな適当に休んでていいよ?

 ごはん食べててもいいし。

 あ、温泉は昔のお肌ツルツル系のやつになってるから、入ってくれば?」

「あー、じゃあそうすっか。

 まあ、見世物用に作ったんじゃねえし、気にすんな。つまんねえけど」


 父さんがよけいな一言を言って立ち上がったのをきっかけに、みんなも家なり温泉なりに向かった。

 おねむのリリもついていった。


「そういえば、私は最初の温泉に入ったことがなかったんでしたー」

「メシ食うてくるわ」


 そして誰もいなくなった。

 あ、ディオさんは草の上ですやすや。


 私は草原にぽつんと取り残され、さらに遅くなった行軍を見守り続けた。

 ブーちゃん軍は4kmの平坦な道を4時間かかって抜け、水場で2時間休憩し、次のエリアを見て引き返し、その日はそこで終了となった。


 参加者からも観客からも悪評しか聞こえてこなかった。

 そりゃ考えたの私だけどさ、ただの道でつまずくとは普通思わないじゃん。

 

 ディオさんを起こして、魔道具のスイッチを切り、私は暗い気持ちで家に引き上げた。

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