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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第6章 辺境弱小ダンジョンの収穫

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10.ブートダンジョンへようこそ

 さすがA級パーティーの偵察担当。カーチャさんはハーフリンクの小さい体を活かし、刈り入れの間に合わなかった麦に隠れながら、ブーちゃんたちを完璧にマークしてくれた。

 おかげで、私たちは王子の到着時刻を正確につかんでおり、ダンジョン構築のタイミングをギリギリまで引っ張ることができた。


 維持費は5%。早めに作れば始まる前にDPをかなり削られることになるから、これは助かった。


 一行は夕方に村に到着すると、早速討伐対象の男爵を探したが、男爵どころか村人のひとりもいない。

 そこにアーノルドさんが登場し、数日前に逃げたことを伝えると、ブーちゃんは激怒したそうだ。


 アーノルドさんは同情し、とりあえずの休憩と翌日からのダンジョン探索を提案。

 ヴァネのダンジョン食料混入と野営続きのせいで疲れている一行は、大人しく村唯一の

宿屋に入った。


 これで今日の動きはないだろう。

 カーチャさんの知らせを聞いて、私はフッと体の力を抜いた。

 腹をくくったっとはいえ、こういうの初めてだからやっぱ緊張する。


 あとは明日、ブーちゃんたちがアーノルドさんの案内で村を出たら、ダンジョン構築開始だ。

 ホーさんが道を荒しておいてくれたから、3時間以上はかかるはず。

 作業時間は充分だ。


 一行が動き出したのは、翌日の昼だった。

 数日ぶりにベッドで休み、マリアベルさん作の具だくさんスープを食べて、割と元気に出発したそうだ。


 その一報を受けて、私とコアちゃんは迎撃階層の構築にかかった。

 といっても、私は「じゃ、コアちゃんお願い」って言うだけなんだけどね。


 満を持していたコアちゃんは1時間半で作業を完了した。

 コアちゃん曰く、これでも思ったより時間がかかったそうだ。

 温泉増築の時より階層数は少ないけど、地形の作り込みが細かかったって。


 分割したコアも所定の位置に配置し終わり、あとは到着を待つだけとなった。

 

 最終調整があるので、まだ分割は行わない。

 できたばかりの階層はまだ温泉ダンジョンの一部で、分割コアも眠ったままだ。


 魔物戦の時に使ったカメラを起動する。

 あの頃はDPに困ってなかったから考えなしに使っていたけど、盆地のジジイによればDPを垂れ流すような使い方だったらしい。

 魔力圧縮がどうのこうのと偉そうに説明されたけど、そんなのわかるかっつうの。

 イメージ的には窓開けっ放しでエアコン使うみたいな感じ?

 まあ、どうでもいいや。コアちゃんが理解して、消費DPがグンと減ったという事実が大事。


 このあとダンジョンを分割してレベルが下がれば、カメラの操作はオンオフしかできなくなるので、必要な動きは今のうちに決めておかなければならない。

 本当はエリアごとに配置して、ズームや視点切り替えを使いたかったけど、そんな余裕はないので機能選びはけっこう迷った。

 最終的な設定はこんな感じ。


・カメラ位置:正面斜め上

・モード:ステルス

・ターゲット追尾:ON

・音声感度:高


 いいとこでしょ。


 幸いなのは、魔力の質が同じで距離も近いのでDP消費が少なくて済むことだ。

 ダンジョンの外では150DP/h、ダンジョン内では80DP/hくらい。

 ネーさんの魔力供給のおかげで、点けっぱにしなければ、最後までモニタできそうだ。

 

 カメラが、アーノルドさんを先頭に森の道をゆっくり歩いてくるブーちゃん軍の姿を捕える。

 悪路だから、馬車は使えなかったようだ。

 24人。全員揃っている。

 

「こちらです」

「フゴッ。……ただの、ブフゥ、温泉だなウップ……」


 豚鼻いただきました!

 てか、ブーちゃんもうヘロヘロじゃん。

 吐くなよ? 絶対に吐くなよ?

 あ、違った。これは吐く方だった。


 兵士さんたちは慣れてるのか表情ひとつ変えないが、アーノルドさんがやばそう。

 笑ったら「不敬だ!」って切られるかも。


「力の湧く温泉との噂ですから一休みされたらいかがでしょう」


 早口で言い切って下向いてる。がんばれ!

 

「ふぅ、ふぅ……そうだな……。おい……、休憩だ」

「はっ!」


 隊長さんらしき人がキビキビと指示を出し、あっという間に組み立てられた椅子に、ブーちゃんがどっかりと腰を下ろす。

 椅子がきしむ。


 推定体重110kg。

 絞り甲斐のありそうないい体だ。


 「それでは、私はこれで」とアーノルドさんが立ち去り、ダンジョン前にはブーちゃん軍が残った。


 ブーちゃんがそのまま休憩している間に、下っ端っぽい兵士さんがダンジョンの中を調べ始め、すぐ出てくる。

 うんうん。温泉と奥の細長い部屋だけだから、調べる場所なんてないよね。

 上官にごにょごにょ報告し、それを聞いた上官が控える兵士に命令を出す。

 数名の兵士がダンジョンに入り、服を脱ぎ、お湯につかる。


「ふうぅぅぅ」


 声を出さないように深く息を吐き、名残惜しそうに湯船から出る。


「異常ありません!」

「わかった!

 では王子、よろしければどうぞ」

「うむ」


 ブーちゃんがのっそり立ち上がり、温泉に向かう。

 私はカメラを切った。

 男どもの裸を覗く趣味はない。


「おっそいのう。よ突入せんかい」


 またコア部屋に勝手に侵入してきたネーさんがイライラしてるけど、まあまあ、これから大変になるんだから、最後のお風呂くらい大目に見てあげようよ。


 しばらくしてから確認すると、一行は全員でダンジョンの壁を調べていた。

 調べても何もないよ?

 一行が奥の縦長の部屋に入る。

 もうちょい。もうちょい奥へ。


「今!」


 全員が奥に集まったのを見計らって、私はコアちゃんにゴーをかける。

 瞬間、小部屋の床は滑り台と化し、24人は叫び声を上げながら無事第2層に落ちていった。


「よし! 成功!」


 私は急いで床を元の位置に戻し、参加人数をセットする。


「完了! 分割!」


 パスが切られ、迎撃階層は別ダンジョンとして分割された。


「やったー!」


 リリがパチパチ拍手をする。

 

「お疲れさん」


 ネーさんと私は顔を見合わせ、パチンとハイタッチする。


 ここが今回の一番の山場だった。

 全員を第2階層に送り込めれば、援軍要請に走られることもない。


 ここから先は、ダンマス不在の分割ダンジョンは、DPが尽きるまで設定した通りの動きをするだけ。

 私にできることはもうない。

 あとは、ブーちゃんたちの奮闘を見守ることにしよう。


 2・3日様子を見て大丈夫そうなら、村の人たちも一時帰宅OKとなる。

 ちょうど残した麦の刈り取り時期だから喜ぶだろう。


 コアルームの外に出ると、ダンジョンはレベルⅠに戻っていた。

 露天風呂もサウナも訓練施設も消えた。

 せっかくみんなで頑張って大きくしたのに、また振り出しに戻っちゃったよ。


 ガクッとはくるけど、まあ、自分で決めたことだからしょうがない。


 今はやることをやらなきゃ。


 私はコア部屋に戻り、ディオさんから借りた魔道具の親機をモニタの前に設置する。

 講演会のあと、学会のお偉いさんがディオさんの安定化魔法を組み込んで開発した映像転送の魔道具だ。

 モニタの画像はこの魔道具を通じて第2階層に送られ、コア部屋に入れないみんなが見れるようになる。

 つまり、パブリックビューイングだ。


 コア部屋のモニタには、画像出力端子などないので、テレビ画面をスマホで撮るような感じになるが、このダダリアでは最新の装置である。

  

 第2階層に跳ぶと、中空の大画面に、放り出された砂地に呆然と座り込むブーちゃんが映っていた。

 ダンジョンに残った身内のみんなは、柔らかい草の上に座ってそれを見ていた。


 レベルダウンと同時に元の洞窟になった第2階層は、分割と同時に草原に戻すようにコアちゃんにお願いしていた。あと、ネーさん用の転移陣も。

 費用の320DPは、ダンジョン構築をギリまで遅らせたのと相殺ということで。


 ブーちゃんのダンジョンブートキャンプの本編がいよいよ始まる。

 私は手招きするディオさんとヴァネのところに駆けていった。

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