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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第6章 辺境弱小ダンジョンの収穫

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9.王子様おもてなし作戦

 王子を送り出して、ディオさんとヴァネが戻ってきた。

 それぞれの進捗を報告しあう。


 ディオさんとヴァネが動いて、王子軍の詳細な情報もわかった。

 総勢は23人。

 兵士20人と、王子のお付きが1人、雑用係が2人の構成だ。

 あ、王子忘れてた。総勢24人。

 どう見ても戦力外だから抜けちゃうんだよ。


 ディオさんが12歳ムーブで雑用係の人から頑張って聞き出した情報によると、王子は移動中は馬車でのんびり過ごし、街では王命をかざし、領主や代官にたっぷり接待をさせていたそうだ。

 小人数だし、長居もしなかったそうだから、領主たちも王族に媚びを売るために頑張ったみたいだ。


 結果的に、行軍はスローペースになり、ちょこちょこ贅沢もできて、兵士たちの消耗もほどんどないようだ。

 おまけに、その間に、イマイチだった10名も精鋭に鍛えられて強くなっていた。

 兵士にとっては、メリハリのあるいい旅だったに違いない。

 ほんと勘弁してほしい。

 

 ディオちゃん12歳(笑)は、雑用係のデレクさんというおじさんとだいぶ打ち解けたようで、「できればデレクさんだけ優しくしてほしいです」と言っていたけど、ごめん、多分無理。


 ヴァネの方は、物資にダンジョン産の食料を混ぜたそうだ。

 パン以外はDP効率がすごく悪く、一度実験で作っただけだったが、今回の用途なら作る価値はある。

 全部がダンジョン産だと、移動中のカロリーがゼロになるので、疲労度からバレる危険もあるが、混ざっているなら気づかれないだろう。

 さすが腹黒ダンマス令嬢。

 村に着くまでに、じわじわ体力を削ってくれるはずだ。


 ふたりが集めてくれた魔石は、600DPくらいになった。

 あんまり集められなかったって謝られたけど、この時期の辺境でそれだけ集まれば充分。

 私が川で集めた魔石と合わせると約5300DPになって、迎撃階層構築に使えるDPはなんとか1万を超えた。


 川の魔石は全部で550個くらいあった。

 あの頃、見つける度に投げ込んでいたから、思ったより多かった。 

 1個1個のDPは10以下だったけど、チリツモで5000DP弱になったのは収穫だった。

 リリが味見して「盆地の味がする」って言ってたけど、どうやら夏の間水浴びしていたネーさんの魔力が染み込んだらしい。

 水浴びがなかったら危なかった。ほんと助かります。


 私はネーさんとホーさんの協力が得られたこと、そのネーさんのアイディアで、新階層を王子様用ブートキャンプ施設にすることを報告した。


 さて、ここからはマジで時間との勝負だ。


 残り5日。

 まず、やらなければならないのは、村人の避難だ。

 ホーさんと私は、村の広場に集められた全領民103人を前に、事情を説明した。


「おいらの読みが甘かったせいで、こんなことになって申し訳ない」


 ホーさんはそう言って村人に頭を下げた。

 普段は何にもやらないけど、領民だけは何があっても守るという覚悟は、これまでも見てきた。

 領主としての矜持は、たぶん大貴族より上だ。


 公爵も侯爵も国が国が言うけど、国なんか滅んでも人は生きていける。

 国は人を作れないけど、人が生きていれば国はまた作れるもんね。

 あ、これ名言っぽい。


「収穫できない作物も出てくると思うけど、ここは逃げることを優先してほしい。

 おいらは捕まって、領は滅びるかもしれないけど、そんなことは気にするな。

 領も国も、人間を作ることはできないけど、人間がいれば領でも国でも作り直せるだろ?」


 おい、領主! (ひと)の頭の中パクんな!


 ホーさんがパクった私の名言は村の人たちにちゃんと届き、全員の盆地への避難は、特に反対する人もなく了承された。


 一点だけ、避難日がホーさんの考えより2日後になった。

 ホーさんは1日で準備を終え、明日避難することを提案したが、王子の行軍ペースは相変わらず遅く、2日くらいの猶予はありそうなので、避難準備をしつつ、できるだけ収穫も行うことになったためだ。

 偵察を送り、もし村への到達が早くなりそうなら、わかった時点で避難する。

 100人しかいない村なら、それも可能だ。


 村人が慌ただしく動き出し、私たちはダンジョンで迎撃階層の設計に入った。

 

 残り4日。

 私とディオさんとヴァネがあーだこーだ議論して、王子軍ブートキャンプの概要がほぼ固まった。

 ダイエットサロン経営者のヴァネは、魔道具マシンを使った負荷のかけ方を参考に、必要な地形の構造を洗い出し、私はそれをダンジョンの設計に落とし込んでゆく。

 消費カロリーの計算はディオさん。

 いじめることが目的なので、一日あたりの設定は驚異の11000カロリー。

 こなせば毎日1.5kgずつ痩せていく計算になる。


 私たちは何だかハイになっていて、大笑いしながらハードな設定を追加してゆき、王子の「ブーちゃん」呼びも復活した。


 私たちの目的は、いつの間にか、「いかに撃退するか」から「いかに痩せさせるか」に変わっていた。


 残り3日。

 ここからはリリも参加。

 設計を伝えて、実際にかかるDPをはじき出してゆく。


 ブーちゃんたちに、きれいな風景も魔物との戦いも必要ないので、草一本さえも削り、新階層は入口の洞窟、岩階層が2、砂漠階層が1の計4層構造となった。

 奥に入らせて、閉じ込めて、それからはひたすらハードトレーニングの日々になる。

 必要DPは1ヶ月の維持費込みで8700。たくさんのギミックに予算を突っ込んだ。

 よし、これでOK! となったところで、ディオさんが気づいた。


「あ! これ、ブーちゃんたち死ぬです!」

「え?」

「食料を持ち込んだ場合は少しは伸びるですが、その食料も半分くらいはダンジョン産ですから、途中で消えてしまうです。

 持ち込まなかったら、すぐに餓死するです」

「あ……」


 そっか、食料のこと忘れてた。

 

 「じゃあ、ご飯を出そう」ということで、完璧ダイエット食が入った宝箱を、定期的に出す仕組みを込み込んだ。

 これがDPをがっつり持っていった。

 必要DP2900。足りない。


「あと、600かあ……。

 リリ、どうにかならない?」

「なるよ?」

「ほんと?」

「うん。えっとねえ、ミリねえたちがやりたいことは、そんなにDP使わなくてもできると思う」

「マジで⁉」

「うん!」


 そう言えば、階層パーツを使って予算削減する方法を教えてくれたのもリリだった。


「じゃあ、お願い!」

「わかった!」


 リリが出す改善案が、どんどん設計に反映されてゆく。

 冒険者の訓練階層を作った時と同じように、階層は統合され、全2階層となった。

 ベースの広い土の階層を岩と砂をパーツに使ってエリア分けすることで、小さな入口階層以外をひとつにまとめたのだ。

 ギミックも構造に組み込まず、後付けのパーツで処理してゆく。

 訓練階層の時に暴走してから色々勉強していたが、その成果がしっかりと現れている。

 「みなさーん、うちの子すごいんですよー!」ってバカ親みたいに叫びたい!


 残念ながら食事供給システムの予算は削れなかったけど、総費用は6700DP。

 しっかり予算内に収まった。

 これなら分割ダンジョン内をモニタするDPもギリギリ確保できる。


 構築に必要な時間は、コアちゃんが本気出すので2時間あれば充分。

 これで迎撃階層の準備は整ったことになる。


 残り2日。

 朝、村民ができる限りの収穫を終え、ダンジョン前に集合した。

 王子の到着は想定通り2日後になりそうで、やりたかったことは全部やり切れたと満足そうだ。

 皆を前に私は声を張り上げる。


「お疲れさまでした!

 これからお昼まで、温泉を解放します。

 短い時間だけど、疲れを癒してください!」

「うおおおお!」


 男たちがが拳を突き上げて叫び、そこに女たちの甲高い歓声が混じる。

 楽しそうだな、おい。


 「これが最後だから」とは言えなかった。

 迎撃用ダンジョンを分割してしまえば、残りは4300DP。

 レベルⅡの要件を満たすことができないため、追加した施設は新しい順に消滅する。

 レベルⅠ時代に作った最初の温泉は残るだろうが、営業を続けられるようなものではない。


 無事撃退出来たらまたDP貯めて作るから、それまで待っててね。


 最後の温泉を楽しんだ村の人たちは、私たちに手を振って、ネーさんの転移陣から盆地に避難していった。

 リュックを背負って、まだ見ぬ場所へ向かう笑顔の脳筋の群れ。

 もう遠足にしか見えない。護衛役のジャンゴさんも大はしゃぎ。

 ……メンタルは問題皆無。

 盆地は冷えるけど、ホーさんが、土魔法で簡易の宿泊場所を作ったそうなので、心配する必要はなさそうだ。

 家族のみんなは、頑として避難を拒否したので、ダンジョンに残る。

 

 冒険者もとっくに退避していて、これで村に残るのはギルド出張所のアーノルドさんたち3人だけとなった。


 私は温泉を閉じ、ワイバーンのギョーちゃんたちを送還した。

 バイバイ。またいつか。


 残り1日。

 盆地から戻ってきたホーさんが、村とダンジョンをつなぐ道の途中に岩山を作った。

 そこまでダンジョンから細く領域を伸ばし、分離用の階層を増設する計画だ。


 ブーちゃんが目指すのは「岩山の洞窟温泉ダンジョン」なので、アーノルドさんが案内してくれれば、間違いなくそこに入ってくれる。


 よし。これで準備完了。


 そして次の日、ブーちゃん軍は村に到着した。

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