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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第5章 辺境ダンジョンのやかましい周辺

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6.公爵様は泣かない

 第2回作戦会議、只今開催中~。


「なるほどー、権威には権威ですかー。

 さすがミリちゃん先輩。いい切り口だと思いますー」

「そ、そうかな?

 でも、私が考えたことじゃないから」

「え? 誰が考えたんですかー?

「じ、……実際考えたのはコアだよ。ダンジョンコア」


 やば。爺さんって言いそうになった。

 ファーレン領主の娘であるヴァネに、盆地のことを話すわけにはいかないので、なんとかごまかす。


「いやそれより、問題はその先。

 なんも思いつかないの。

 私、権威って言っても『なんかえらい感じ?』くらいしかイメージできないから、ふたりの意見を聞きたいわけ。

 権威と言えばお貴族様だし、ディオさんも転移魔道具の権威でしょ?」

「そんなふうに呼ばれたことはないです」

「そうなの?」

「ディオは、今はただの魔道具職人なので、呼ばれるとしたら『親方』だと思うです」

「ディオ親方! あははは……」

「呼ばれたくないです!」


 ロリBBA親方というのは、かなり新しいのではないだろうか?


「……なるほどー。ディオちゃんさんに頑張っていただくのは手ですねえ……」


 ヴァネが目をキランてさせて、ディオさんを見つめた。


「こ、こ、こ、怖いです」


 友達だろうと、見つめられたらこのエルフはキョドる。


「うん、そうですよー。ディオちゃんさんが権威になればいいんですよー」

「どゆこと?」

「栄養学の大元はディオちゃんさんじゃないですかー。

 ディオさんが権威じゃないのは、その栄養学がまだ市井の学問のままだからでー、学会に認められさえすればー、ディオちゃんさんはあっという間にその道の第一人者ですー。

 権威になって、魔法薬ダイエットを叩いちゃえばいいんですよー」

「あ、そゆことか。

 よし、ディオさん、権威になろう!」

「よしじゃないのです! ディオには無理なのです! それに栄養学の学会なんてないです!」

「いえ、魔導学会がありますー」

「魔導学会って何?」

「わかりやすく言うとー、中立って建前のもとに、王族も貴族も容赦なくぶった斬る、魔法マニア界のモンスターの集まりですねー 」


 何それ怖い。

 その後の説明を要約すると、魔法ヲタの魔法ヲタによる魔法のための、学術組織および認定機関。

 3人のS級魔導士による会議体をトップとする、まさに「魔導の権威」の象徴だ。

 学会の運営関係者は兼務を認められず、国や貴族たちの圧力などは完全無視される。


 栄養学は魔法ではないが、それを元にした魔道具には、多くの新しい魔法が使われており、そこを切り口とした論文は、十分査定の対象になるというのがヴァネの見方だった。


「魔道具を作るときに理論はまとめてあるので、論文は書けるですけど……」

「じゃあ、いいじゃん!

 認められなくても損することはないんだから、ダメ元でやってみればいいんだよ!」


 学会員になる前に王宮魔導士をクビになったディオさんには高いハードルに見えるかもしれないけど、さっきまで名前も知らなかった私に、その権威は通じない。

 尻込みするディオさんのケツをバシバシ叩いて、「ディオさん権威化計画」がスタートした。


「じゃあ、次は私とディオちゃんさんからのお知らせですー。

 ダンジョンパンのダンジョン外への持ち出しができるようになりましたー」

「は?」


 ヴァネがシレッとすごいのぶっこんできた。


「ディオさんにダンジョンパンの魔力構造を解析していただいて、魔素に還元される時間を伸ばすように調整しましたー」

「ネー師匠の弟子になった甲斐があったです!」

「おお、そりゃよかった!

 でも、そんなに簡単にできるの?」

「理論は少し難解ですけどー、魔法を使う人なら理解できる内容ですー。

 ミリちゃん先輩でもできると思いますよー」

「私、魔法使えないんですけど」

「えーと……、頑張ってくださいー」


 何だよチクショー!

 魔法そんなに偉いんかよ!


「で、その新ダンジョンパンとサロンのジムのマシンを使って、王都でお店を開くことにしましたー。居抜き物件を買ったので、再来週には開店ですー」


 内容は、ロカボ食+ジムの小規模店舗。

 前世、あちこちにあったお手軽ジムにカフェがついた「ミニサロン」って感じ。

 にしても、仕事早いな!

 札ビラでほっぺた、いや金貨が詰まった袋で頭殴ったんだろうな。下手したら死ぬ。


 ――それからは、バタバタだった。


 ヴァネは、突貫で開店させた新店舗のオペレーションをこなしつつ、侯爵を通じて学会の窓口との調整を進め、ディオさんは論文の取りまとめにかかりきりになった。

 私? 一所懸命に応援してましたが何か?


 ヴァネのミニサロンは、すぐに評判になり始めた。

 下級貴族街近くという立地もよかった上に、サロンのユードラファンの会員さんが、ファンクラブで噂を流してくれたのも効いた。推し友に身分差の垣根はないからね。

 しかも、店主は推しの娘だから、ファンのマダムたちが足を運ばないわけがない。


 となると、王都に情報網を張り廻らせている公爵の耳にも当然入ることになる。

 その動きは早かった。

 まあ、引きずり降ろそうとしているガロヌ侯爵の関係者なのはバレバレだから、当然やってくるわね。


 まあ、テンプレ妨害工作のオンパレードですよ。

 悪評を流す、クレームつける、お店壊す。ヴァネは一度チンピラに襲われたらしい。

 魔法で軽く撃退したらしいけど、危ないったらない。


 推しマダムが大騒ぎしたため、周辺の警備が強化され、暴力はなくなったねど、ピリピリ空気は続いているようだ。


 でもまあ、ひとまず落ち着いたかな、と思ったところに、また公爵が仕掛けてきた。

 お店やヴァネを襲って逃亡していた「襲撃犯」を一斉に捕えたのだ。

 曰く。


「西部の陰謀に加担する店を狙う行為が、国を思う正義の気持ちから出たものであることは理解するが、現状、法を侵しているわけでもない以上、店舗の営業は守られねばならない。

 近い将来インチキ店が淘汰されることは明らかだが、だからと言って暴力行為が許されるものではない。

 我々は、王国の法に乗っ取り、犯罪者を厳正に処罰する」


 はい、出ました「くわせ者の法則」!

 国、我々、正義。いつぞやのユードラさんに続いて、二人目のコンプリート達成、おめでとうございます!

 しっかし、自作自演好きだよね。


 自分で流した悪評を前提として、暴力部分のみを裁くことによって、西部とお店を貶め、公爵自身の高潔さをアピールする。

 こっちから見ればバレバレ。でも、市民はそんな背景を知らない。


「そう来ますかー。してやられましたねー」


 ヴァネが珍しく悔しさを露わにする。


 コンチェッタ公爵、近々ぶん殴る相手だけど、なんつーか、すげーわ。


 ヴァネも反撃に転じ、なんと新規に2店舗をオープンさせた。

 どちらも、ダイエット魔法薬店の隣だ。

 ほぼカチ込み!


「私、完全に怒っちゃいましたー」


 悔し顔を一変させた極上の笑顔。

 あれは怖かった。


 魔法薬ダイエット店は、「魔法薬の目的外使用」を推奨するグレーな店。隣のミニサロンは「西部の手先のインチキ店」。

 でも、どっちも違法ではないから取り締まれない。

 公爵の宣言のあとなので、妨害行為もできない。

 かくして、「うさんくさいダイエット店」同士の対決は、膠着状態に陥った。


 小さな楔は打ち込めたけど、こうなると、ディオさんの論文を頼りにするしかない。


 魔導学会とのやり取りはスムーズに進んでいた。

 新しい魔法論文の提出は、学会としても歓迎で、ガロヌ侯爵の推薦もあって、簡単にOKが出た。

 侯爵だろう王族だろうと、一切忖度することのない魔法ヲタ組織だから、ここから先は完全に内容勝負となる。


 論文の目玉は、魔力量に応じてマシン負荷を自動調整する魔法。これだけでも目を引くと思うけど、念のため自動カロリー計測と試作したばかりの新魔道具の理論もつけておいた。

 応援してただけの私も、ここではちょっと手伝えたので、だいぶホッとした。


 少し内容は雑多になったけど、どれかひとつでも引っかかって、B級魔導士の認定くらい受けられないかな、というのが現実的な狙いである。


 論文が一次査読をパスすれば、次は講演形式の発表・実演会となり、そこで聴衆から出された質問や疑義に、論文の正当性をきちんと説明できれば、S級魔導士の最終査読を経て、晴れて魔導士ランクの認定となる。

 どのランクと認定されるかは、最終査読により決定される。


 一次査読は無事通過し、発表の準備を進めていたところで、私たちは大きな問題に直面した。


「ディオは、人前で講演するなんて無理なのです!」

「いや、今さらそんなこと言っても、こっちが無理だから」

「原稿はディオが書くので、講演はヴァネッサちゃんにお願いするです!」

「えー? 無理ですよう。質問に答えられないですからー」

「2週間あれば何とかなるです」

「無理ですってばー。隣の悪徳店と戦争中ですー」

「じゃあ、……ミリちゃ」

「無理なのわかってるよね⁉」


 食い気味に拒否する。


 ヴァネとふたりがかりで半日説得して、ディオさんはやっと納得してくれた。

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