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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第5章 辺境ダンジョンのやかましい周辺

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4.悪徳業者と黒(隠れてない)幕

 いつの間にか春も半ばになった。

 ここしばらくは、平和な日々が続いている。


 ずっと心に引っかかっていたお姉ちゃんの件も無事解決。

 あとで聞いた話では、盆地ツアーで手つかずの自然に触れたおかげで、意地になってるのがバカらしくなってきたところに、二日目のデビリン同行が決定打となったらしい。

 あの翌朝、「あ、ミリ、あたし猟師に戻るから」って言って、弓を持って笑顔で村に向かった。

 軽っ! 私がどれだけ心配したと思ってるんだ!


 戻るなら戻るで、渡したい物もあったのに。

 ドワーフの名工、オルテンシアさんの旦那さん作の弓なのに。特注なのに。温泉モニタの時に聞いていた連絡先にわざわざ出向いてお願いしたやつなのに。


 いや、それよりも。

 お姉ちゃん、あんたシフトって言葉知ってる?

 午前中の担当、お姉ちゃんだったでしょうが!

 ……弓渡すの1ヶ月後にしよう。


 その日は通しで受付に座って、熱波師が復活した大サウナ目当てのおじさんたちを一人でさばいた。

 ギラついてはいないので、あの恐怖は感じないけど、疲れるは疲れる。


 警備で巡回してたラーラさんにぼやいたら、多めにシフトに入ってくれることになった。

 警備は、もう前みたいな人数が必要じゃないらしく、冒険者として受けた仕事の内容を変更するかたちなので、別途のお給料も必要ないという。

 これからはラーラ様と呼ばせていただこう。 


 冒険者パーティー「ケット・シーは神」も到着し、カレル村長と盆地の件で打合せしている。もうすぐ、ギルドの出張所ができるみたいだ。

 とうとうこの村にも冒険者ギルドが!

 目的地はダンジョンじゃなく「古龍の盆地」だけど、感慨深いものがある。


 その盆地の爺さんコアのところには、あのあと何回か足を運んだ。

 知りたくもなかったけど、爺さんはかわいいものが好きらしい。

 塩を舐めに来る小動物を見ることが、これまでの唯一の楽しみだったとか言ってた。

 ノーコメント。

 

 話す内容は自慢話か雑談で、知りたかったダンジョン情報は少しずつしか増えていない。

 リリに会いたくて、情報を小出しにしている気がする。

 まあ、別に急いでないから、今のところは黙認しているけど。


 ホーさんは、塩の山の向こうで開墾を開始した。

 いい畑になりそうな掘り起こされた黒土が、じわじわその面積を拡げている。


 そして、こういう穏やかな日々は、やはりアレによって終わりを告げる。


「ミリちゃん先輩、お邪魔していますー」


 源泉の定時チェックから戻ってきたら、受付裏の事務室のソファにヴァネが座っていた。


「だから、勝手に入んなって言ってるでしょ?」

「受付席には入ってないですよー?」


 まあ、それならいいか。いや、よくはないけど、部外者が勝手に仕事はじめるよりマシだ。どうせ言っても聞かないだろうから、いちいち気にするだけ損。


「もういいよ、それで。

 で、何の用?」

「魔道具のマージン、ゼロにしてくれたお礼ですー。

 ありがとうございましたー」

「ああ。完了したんだ」

「はい。これで、さらに利益率向上ですー」

「それはおめでとうございました、商会長様。

 じゃあ、お引き取り下さい」

「いやですー。

 ここからが本題ですー」


 まだあんのかよ。


「じゃあ、手短かにどうぞ」

「ディオちゃんさんは来ていないんですかー?」

「来てるけど、呼ぶ?」

「できればー」


 ヴァネとふたりきりより、「ミリちゃん先輩」と同時にちゃん付けとなった見た目美少女がいた方が心が休まるので、最近導入した音声魔道具で呼び出す。

 この世界に電話はないけど、トランシーバ的やつは存在する。ディオさんの商会の人気商品(お高い)。20回分割払い。

 施設の中だけだが、前世の通信環境に近づくので、思い切って買ってよかった。


 やってきたディオさんと、ヴァネの話を聞く。


「サロンの会員さんから聞いて、私も確認したんですけどねー、王都でダイエットのお店ができてましたー」

「へえ。サロンのお客さん取れてる感じ?」

「いえ、違いますー。

 あっちのターゲットは、下級貴族とそこそこの商会長あたりの小金持ちですからー、サロンのお客さんには影響ありませんー」

「じゃあ、いいんじゃん。むしろ、ダイエットっていう言葉が広まるんだからいいじゃない。そしたら、魔道具ももっと売れるんじゃない?

 その概念がないから、うちの村の体重計なんか、今じゃただの農作物の重さ計る道具だよ?」

「いえー、そんな簡単な話じゃないんですよー」


 ヴァネが間延びした言葉で話したのは、たしかにちょっとやっかいな内容だった。


「ひどいです! すごく悪意を感じるです!」


 ほんとに、ディオさんじゃなくとも、ひどいです!だよ。


 最近王都にできたそのダイエット専門店は、「すぐに痩せる!」を売りにしているらしい。

 どうやってすぐに痩せるかというと、魔法薬を使って食欲を失くすのである。

 ほとんど食べないのだから、そりゃすぐに痩せる。

 でも、長期間の絶食だから、体調は当然悪化する。

 やる気は起きないし、肌は荒れるし、めまいはするし、終いには気絶して治療院に運び込まれる。


 前世でも似たようなのがあった。

 一瞬やろうかどうか迷ったので、しっかり覚えている。

 糖尿病の薬の目的外使用だ。


 どちらも度を越した絶食だから、前世の弊害も似たようなものだった。


 今回の王都でのやり口は、これに第2章が加わる。


 悪い評判が立ちはじめたあたりで、今度は上位貴族のお抱えの医者が、大々的にこんな「真相」を発表する。


「ダイエットは悪です。害にしかなりません。その証拠に、やせ細り、倒れるものが続出しているではありませんか。

 これは陰謀です。

 西部貴族が我々王都貴族・領民の力を削ぐために考えた、頭の悪い陰謀なのです!」


 ザ・マッチポンプ。


 たちが悪いのは、第1章の絶食の魔法薬で、ほんとに簡単に痩せてしまうことだ。

 「西部貴族の陰謀」だろうがなんだろうが、痩せたい人は手を出すし、さほど体調を崩さない人も少しはいる。


 結果、「陰謀だけど痩せる」法外とまではギリ言えない高価な薬と、「陰謀によって体調を崩した人」が、ともにずっと存在する状況が、王都で生まれつつあるようなのだ。

 このままでは、「ダイエットは陰謀」が前提事実となってしまう。 


 前世の陰謀論信者の知人に言いたかったことを、その王都の人にそっと言ってあげたい。


「陰謀はほんとにあるかもしれないけど、私や君のような有象無象にバレるような話が、本当の陰謀であるはずがないよね?」


「――王都貴族が黒幕だよね?」


 明らかな結論をぶつけると、ヴァネは困ったような笑顔で答えた。


「黒幕というか、全く隠していないんですよー。

 さすがに魔法薬を売って売る商会は、間にいくつも挟んでいますがー、丁寧に辿ればわかりますし、そもそもその貴族は魔法薬の大家と呼ばれる人ですー。

 そして、陰謀論を発表したのは、もうダイレクトにその貴族の主治医ですー」

「だれその人?」

「レオン・ウルスス・セレヌス=コンチェッタ公爵ですー。先々代王の弟君の孫に当たりますー」


 名前が長い、言いにくい、もう忘れた!


「知ってるです。ユードラの親玉のガロヌ侯爵と敵対する、王都貴族の大物です」


 親玉言うなし。


「さっきは影響がないって言いましたけどー。実は、サロンの会員さん、ふたり退会しましたー」 

「間違ってもいないのに、ディオの研究を否定されるのは悔しいです……」


 ディオさんのつぶやきはちょっと涙声だ。

 正直、なんとか公爵と親玉侯爵の争いとかどうでもいい。

 でも、うちの相棒を泣かすのは許さん。

 ロリBBAで対人恐怖症だけど、あと、手持ちのない親友に商品を割引なしの20回払いで売るようながめつい商売人だけど、ほんとにいい子なんだよ。


「私は、貴族との付き合いからは完全に手を引いたから、西部と王都の争いには興味ない。 でも、そんな完全に間違ったダイエット方法を見逃すわけにはいかないかな?」

「ありがとうございますー。

 これからお願いするつもりだったんですがー、私の話を聞いただけで決意してくれて、さすがミリちゃん先輩は頼りになりますー」

「え?」


 なんか早まった?

 ま、どっちでも結論は同じか。


 公爵様。うちのディオ子泣かした時点であんたが敵なの確定だから。

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