表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第4章 辺境平民ダンジョンの身の丈

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/85

13.貴族の話は貴族でどうぞ

「おはようミーシャ。

 カレルさんもおはようございます。このごろよく来るね?」

「おう。ホーカスがやっとビレントに帰って、仕事落ち着いたからからな。

 温泉のおかげでだいぶ疲れも抜けてきし、嫁とガキどもも帰ってきたし、あいつがいねえだけで全然違え」

「シャポさんどっか行ってたの?」

「ガキ連れて実家帰ってた」


 シャポさんは村長夫人。幼馴染婚らしい。

 ちなみに実家は村長宅のお隣。


「聞いてくれよミリ。

 俺が必死に仕事してんのに、あなたドブの臭いがするとか言いやがんだぜ? ひでえと思わねえか?」

「ほんとにドブの臭いしたんじゃない?」

「おめえも大概ひでえな!」

「冗談! てか、無事戻ってきてよかったね。

 シャポさんにたまには遊びに来てって言っといて?」


 怒ったので、慌ててごまかす。


「おう!

 あ、それと、この頃俺の顔見るたび言ってっけど、ミーシャって何だ?」

「クマ」

「クマはデビリンだろ?」

「そうだね。まあ、細かいこと気にしてないで、お風呂行ってくれば?」

「だな。んじゃな!」


 カレルさんはもうほとんど元通りだ。

 温泉にちょくちょく来ているのに、クマが消えないところを見ると、まだ疲れが抜けきっていないみたいだけど、ふざけて名前を呼んでいるうちに愛着が出てきたので、ミーシャが消滅しない程度にハードワークを続けてほしい。


 私とディオさんで段取った警備の冒険者の受け入れも無事済んで、村も温泉もやっと日常モードだ。

 トラブルもほぼなくなって、ほんとに助かっている。

 猟師宿は廃業して、警備員宿舎になった。管理は村。

 失業した母さんとリリが温泉スタッフになったのも大助かりだ。


 そうそう。警備に来てくれた冒険者の中には、ダイエットモニタに参加してくれたラーラさんのパーティーがいたの。

 体型はモニターの頃よりさらにシュッとして、冒険者ランクも上がっていた。

 しばらく領の外で活動してたって言ってたから、いい経験を積んできたんだろうな。


 穏やかな日常。

 カレルさんじゃないけど、領主がいないだけで、ほんと平和。


 冬に入って、盆地はもう雪に埋もれたそうで、ギリギリ予定の調査を終えたホーさんは、ビレント村の自宅に帰ったのだ。

 ビレントの仕事を任されていた奥さんがキレたらしい。

 そりゃそうだ。

 当分戻って来んな。


 とか思ったのがいけなかったのかもしれない。

 そのホーさんから呼び出しを受けた。

 明後日の午後、ビレントの領主館に来いって。

 はあ? ニーニャ村からビレント村まで馬車で1日かかるんだよ?

 ギリギリでスケジュール入れんのほんとやめて!


 翌朝、私は一番馬車で渋々ビレントに向かった。

 無意味に呼び出すような人ではないから、無視するわけにもいかないんだよ。


「ホーさん、ほんとこういうのやめてね?

 どうしても呼ばなきゃなら、せめてもっと前に言って?」


 初対面の領主夫人の手前、一応丁寧に挨拶したら、逆に笑われたので、いつもの喋り方でとりあえず抗議する。


「ごめん。呼ぶつもりなかったんだけど、まあ、ミリの関係者でもあるから、念のために呼んでおこうかなと」

「え? 誰か来るの?」

「ユードラ」

「げ」


 うっわー。会いたくない。ひじょーに気まずい。


「でも、何の用なの?」

「それが、手紙に書いてないんだよな。

 秋の収穫の脱、……節税書類も問題なく送ったし。

 タイミングから見て、冒険者の話かなとは思うんだけど」


 今、脱税って言いかけたよね?

 やっぱ、そういう認識なんだ。

 

「まあ、来たらわかる。もう指定の時間だし。

 ほら来た」


 ノックの音がして、執事のおじいさんが、ユードラさんを連れてくる。

 男爵夫人が丁寧に頭を下げて退室する。


「ミリ……! 久しぶりだな!

 サロンは順調だぞ? もう手間をかけることはないから、たまにはデビリンちゃんと遊びに来い!」

「あ、はい。そのうち」

「うむ。まさかお前がいるとは思わなかった。ダン、ぐっ……、いや顔を見られて良かった。

 だが、なぜここにいる?」

「さあ、領主様に呼ばれたもので」


 こっちは気にしてたけど、ユードラさんは相変わらずフレンドリーだった。

 ダンジョンのことを言いかけたけど、契約に止められたみたい。

 ホーさん、サロンがダンジョンってことはまだ知らないからな。

 ちなみに罰則はシンプルに「舌を噛む」だ。


「ホーカス、貴族間の話に平民を巻き込むな」


 ユードラさんがホーさんに厳しい視線を向ける。


「いや、平民とかどうでもいいけど、ミリは今ビレン領のキーパーソンだからさ、関係ある話もしれないだろ? 関係なかったら帰すよ。

 で、何の話?」

「ちっ! お前は昔からなんでそうヘラヘラしてるんだ?

 もうちょっと貴族らしくしろ!

 今日の話もそのことだ。

 お前、温泉の話を、外に広めているそうじゃないか」


 あ、うちの話だ。

 こっそり出ていこうと思ったけど、これじゃ帰れないんじゃん。


「だって、いい温泉だろ?」

「あの温泉は確かにいい温泉だ。だが、領内で楽しめば十分だろう?

 客が増えたせいで、警備の冒険者まで雇って、そのしわ寄せがファーレンに来ている」

「いや、それはおかしいでしょ。

 おいら、そっちギルドの支部長に、その分を他から連れてくる費用払ったよ?」

「確かにそうらしいな。だが、その穴埋めの冒険者を出した領で依頼が滞って、領主から私に抗議が来た」

「その領ってどこ?」

「モージョーだ」


 どこそれ? って聞きたくなるのをぐっとこらえたら、ホーさんが察して、話を中断して教えてくれた。

 ファーレンの南隣の子爵領だって。

 支部長、移動費ケチったな。


「そりゃ、1ヵ所から引っ張ればそうなるよな? でも、それおいら関係ないよね?」

「関係あるさ!

 なぜわからん? ビレンの名前が出たんだぞ?

 ファーレンの隣でさえ、とっくに存在を忘れられていたビレンの名が!

 これまで私がどれだけ気を遣ってきたかわかっているのか⁉」

「あのさ、ユードラ」


 ホーさんが冷たい声で言った。


「それ、おいら別に頼んでないだけど」

「何だと?」

「親父の代に支援してくれた先代には、俺もものすごく感謝してる。

 でも、ユードラがやったのは、それを使って自領を発展させただけだ。

 ビレンには関係ない」

「それでどうやって食っていける!」

「食っていけるさ。

 おいらがどれだけ農地拡げたかわかってるか?

 ユードラが領主を継ぐ前に、ビレンはとっくに自力で食えるようになっていたんだ」


 ホーさんは淡々と事実を積み上げる。


「――それは、わかった。

 知らなかった私の非は素直に認める。

 だが、これはそういう辺境の話じゃない。

 今、私は戦っているのは、この国をしばりつけている古い価値観だ。

 西部貴族の地位向上の大事な時期に、それに水を差すようなことはするなと言ってるんだ!

 このままの状況が続けば、いずれ国は破綻する。これは我々西部のためじゃなく、国にとっても正義の戦いだ。貴族ならよく考えろ!」


 あ。思い出した。前世のじいちゃんが言ってた「くわせ者の法則」。

 じいちゃん、異世界でもたまに出てくるんだよなあ。


 その法則は、「"く”! 国のため、"わ”! 我々は、"せ”! 正義のため、って言うやつはくわせ者だから信用するな!」ってやつだ。

 ユードラさん、今その3要素コンプリートした。


 じいちゃんが「正義」を疑う根拠は、酔っぱらいのケンカが傷害事件化されて、目撃者として名乗り出たら「正義のためにご協力を」とか言われて長時間拘束され、当たっていた馬券が買えなかったため。

 「国」は、「国のために絶対必要な技術」の開発に寄付したら、寄付金詐欺だったため。

 「我々」に至っては「わ、我々って言うのは宇宙人だ」だ。

 じいちゃん、法則語りたくて考えたけど、最後思いつかなかったんだな。


 ユードラさんはもちろん詐欺師じゃない。彼女の正義に従っているんだろうし、国のためっていう気持ちも本当だろう。

 前に見せた名探偵ぶりからして、宇宙人の可能性はちょっとあるけど。


 でもなあ。黙って話を聞いてて思ったんだけど、それってやっぱお貴族様の考え方なんだよ。平民ミリちゃんは、無意識にディスられてちょっと悲しかったよ。

 

 「国がつぶれる」っていうもの、辺境の小村民ダンマス的には「それが?」って思っちゃう。

 元々国の厄介払いで作られた領だし、食べられるようになったのも自力で開拓したからだし、それで困ることなんかないもん。

 ましてや、私はダンマスという不思議生物だ。

 ……生物だよね?


「わかった。考えておくよ。

 今日はとりあえず帰ってくれないか?」


 激高するユードラさんに、ホーさんが引き下がった。

 それをにらみつけて、ユードラさんは出ていった。


「ミリ、後で話がある」


 ああもう!

 こんだけ決裂したら、私にもとばっちり来ちゃうよな。

 子爵様に詰められる!私は現状維持で全然OKなのに。


 確かに無関係じゃなかったけど、この場に私を呼んだホーさんに、恨みごとのひとつも言いたくなる。

 そのホーさんは、椅子に背を預け、妙にリラックスした顔で中空を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ