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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第4章 辺境平民ダンジョンの身の丈

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12.その名はミーシャ!

 盆地に走っていったホーさんは、やるべきことを覚えていたらしく夕方に戻ってきた。

 「山は冷える」と温泉に入った後、村行きの最終馬車に乗った。


「仕事が増えたから、カレルに色々押し付けないとダメだ!」


 もう「押し付ける」って言っちゃってるし。

 これ以上押し付けたら、カレルさん死んじゃう。じゃなかったら、ホーさんがカレルさんに殺されるか。


 それでも、ダメ領主は仕事が早い。

 翌朝、妹弟子の転移陣で隣領の領都リムズデイルに跳ぶと、お昼前にはもう戻ってきた。

 私は朝イチでカレル村長から連絡がきて、ディオさんと村の集会所に呼ばれたのだが、着いたときにはホーさんはもういた。

 隣には恐らく徹夜明けのカレル村長。転移陣番のディオさんもいる。


 カレルさんのボロボロっぷりがすごい。目の下には巨大なクマ。

 ミーシャと名付けよう。クマだから。左右2頭いるけどまとめてミーシャ。


 そんなことを考えながら、ディオさんの隣に着席。


「えーと、全員揃ったから、結論だけ言うと、冒険者の手配はOK。ただし来るのは1ヶ月後になる。来るのは8人で、全員リムズデイルの冒険者。

 ギルドには10年分先払いしてきたから当分警備は心配ない。

 受け入れの準備は、カレ」

「殺すぞ、てめえ!」


 殺される方だった! 領主に対する敬意とかもう微塵もない。


「じゃなくて、……ディオでいいや。んじゃおいらは仕事があるから」

「てめえの仕事はこっちだろうが!」


 つかみかかるカレルさんの腕をかいくぐり、ホーさんは走り去った。もうお約束。


「あの野郎……! いつかマジでぶっ殺す……」

「……ディオ、手伝うです」

「いや、転移陣使わせてもらってるだけで、ディオちゃんは十分役に立ってる。

 俺の方でなんとかするよ。

 第一、12かそこらの女の子に、冒険者の相手をさせるわけにいかねえだろ」


 12歳?

 私が見ると、ディオさんはサッと目をそらした。

 ったく、こっちはこっちで50歳もサバ読んでるし。

 ディオさんは私より重度のヒトミリシーだから、子供ムーブしてた方が怖くないのはわかるけど、鯖50はないでしょ、50は。


「私も手伝うよ。ディオさんとふたりでやればなんとかなるでしょ。

 ディオさん、いやディオちゃん12歳も、12歳だけどネーさんの12歳の弟子だからけっこう強いと思うよ?」

「ミリちゃんひどいです!」

「ひどくないですぅ」


 あー楽しっ。


「ミリ、なんだかわからんが、ちっちゃい子いじめんなよ?」

「ブフッ!」


 村長やめて、ツボる。


「そ、それより、さっきの話、概略しかわかんないんだけど、詳しい話聞いてる?」

「ああ、あれな。

 んーと、最初っから言うと、まず、ギルドに行って依頼出したら、相場の10倍くらい吹っ掛けられたらしい」

「10倍? ホーさん3倍くらい出せばなんとかるって言ってたけど」

「ああ。冒険者が少ねえのはホントらしくてな。

 こっちに人出してもいいけど、そうするとファーレン分は外から応援頼むしかねえから、その分の金を出せって話だ。

 緊急依頼費だの移動費だの宿代だの、〆て10倍だとよ」

「ふっかけすぎです!」


 だよね。中抜きする気満々。


「でもホーカスのやつ、それがどうしたって感じで、なんかすげーお宝出して黙らせたらしい。教えてくんなかったけど、8人を10年雇っても、おつりくるようなもんなんだとよ。

 ミリ、なんか知ってるか?」

「……ああ。多分ホーさんが盆地で拾った龍のうろこだと思うよ?」


 一瞬考えたけど、喋る。

 契約があるけど、カレルさんは関係者。知る権利がある。

 私の契約違反の罰は魔法デコピン100発という重いものだけど、デコに何の衝撃もないから契約的にもセーフみたいだし。

 実は、喋った後、ビビって身構えてた。


「あの野郎、そんなの隠してたか。

 盆地とやらで遊んでんのも、全くのムダっつわけでもなかったわけか」

「甘やかしちゃダメだけど、けっこういい場所だから、こんどカレルさんも見てみるといいよ」

「だな。考えとくわ」

「うん、じゃあ、今日はそんなとこかな?」

「いや、あともう1個ある」


 話はまだ続くようだ。


 12歳児(笑)が「お腹空いたです!」と主張するので、いったん休憩を挟むことにした。

 ダンマスボディはお腹減らないから忘れてたけど、ディオさんは朝から食事の時間はなかっただろうから、その主張はごもっとも。

 もうダンジョンに戻るの遅くなってもいいや。

 ゆっくりお茶したあと、腰を据えて、こっちでやることを片付けてしまおう。


 村長に連れられて村を歩く。

 前はおばあちゃんがやっているよろず屋が一軒だけだったお店も、数軒にまで増えていて、そのよろず屋は薬屋になってた。

 おばあちゃんは元々村でたったひとりの薬師だから、これがあるべき姿と言っていい。

 道の先には宿屋っぽい大きな建物が見える。

 食堂も2軒あって、お昼のお客さんで賑わっている。

 人もだいぶ増えたなあ。


 色々変わっていてキョロキョロしてしまう。


「ああそっか、ミリは、村に来んの久しぶりだったよな。

 だいぶ変わっただろ」

「うん。なんか発展してる。ちょっと変な感じ」

「がははは! 確かに変っちゃ変だわな。

 あの誰も来ねえ村に、宿ができんだもんな。しかも3階建てだぞ?

 ありがとよ」

「え?」


 唐突にお礼を言われてカレルさんを見たら、ニヤニヤしてたので、頷いて目をそらした。


 連れていかれたのは、その宿屋の1階にある食堂だった。

 イメージにある「中世の宿屋の食堂」って感じで、実に風情がある。

 転生してからだいぶ時間かかったけど、見られて満足だ。


 昼の定食は1種類のみ。

 肉・野菜・パン・スープ。ボリュームたっぷり、盛り付け雑! これも風情がある。

 お付き合いで私も頼んだけど、魔物の肉じゃないので、ダンマス舌にはいまいち合わない。

 がっつくディオさんにパスした。


 カレルさんもディオさん並みのスピードでがっついていてびっくりする。

 ――いや、逆だ。おかしいのはディオさんであって、カレルさんは普通だった。

 はっ! そうか、こうやって私の常識は失われていったのか!


「参った! ディオちゃんすげえな!」


 私が衝撃の事実に愕然としているうちに、勝負は決着したようだ。

 てか、いつの間に勝負始まったんだよ!


「勝ったです!」

「太るよ?」


 ガーン!ってなった。

 栄養学の大先生が、パン何皿おかわりしてんだよ。


 まあ、トレーナー的には、チートデイってことで許してあげよう。

 この頃はずっと安定してたから、これでスイッチが入ったりしないように、一応あとで注意するけど。


 集会所に戻ってさらに食休みををした後、ようやく午後の部が始まる。


「んで、別の話っつうのはこれだ」


 そう言ってカレルさんは私に一通の手紙を差し出した。


「ファーレンギルドの俺に嫌味言った職員が、嫌がらせでこっちへの配達物止めてやがってよ、ホーカスが溜まったやつ引き取ってきた」


 何その粘着質?


「男爵様が文句付けたから、その場で降格だとよ。

 ご機嫌取りにギルド支部長はクビを言い渡したんだが、ホーカスが撤回させたって。

 職員、降格なのに感激して泣いてたらしいぞ」

「甘くない? 判断ミスだと思う」

「ばーか、そんなねちっこいヤツ、クビにして逆恨みでもされたらそっちの方が面倒だろうが」

「あ、そっか」


 好判断に訂正。


「ま、そっちはどうでもいい。

 で、その手紙、差出人見てみ?」


 アーノルドさんからだった。


「ホーカスにも来てたんだが、見ねえで鞄に放り込んでたから、ミリのを確認してもらった方がいいんじゃねえかと思ってな。

 アーノルドっつうことは、盆地がらみだろ?

 さっきのお宝の話聞いたら俺が関係する話になるかもしれねえ。

 そんなの直前に言われても、対応できるかっつうの!」


 ミーシャ荒ぶる。

 でも、それは名判断。好判断より上だ。


 私は手紙を読む。


「――えっと、特にカレルさんの仕事が増えそうなことは書かれてなかった」

「そっか、助かった。

 でも、ホーカスの野郎、油断してっといきなりぶっこんでくっからな。

 気を付けとく」

「うん。で、内容聞く?」

「あー……、聞いとくか」


 まだちょっと警戒する村長に苦笑しながら、私は概要を話す。

 

「えーっと、お宝は鑑定の結果、本物の古龍のうろこと確定、それがばらまかれている様子から、ワイバーンの群れとの戦闘跡と想定、名前を『古龍の盆地』と決定、貴族への報告は行わず、ギルド内でも限定した者以外には情報を秘匿。

 決定者は冒険者ギルドの副本部長。えっ? チェルさんの息子さんだって!」

「あの姐さん、ただもんじゃねえとは思ったが、すげえコネ持ってたな!」

「びっくりした!

 で、内容はそんなとこ。

 春になったらみんなこっちに来るって」

「おお、A級パーティーがいれば、クズ冒険者も大人しくなるな。

 あ、ジャンゴも来んのか……」


 問題児はネーさんが何とかしてくれるでしょ。


 そんな感じで、午後のミーティングはわりかしサクッと終わった。


 役場に戻ってなおも仕事を続けようとするカレルさんだったが、ディオさんの風魔法で拘束され、温泉に強制連行された。

 ディオさんは魔法制御の腕を着実に上げていた。

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