表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第4章 辺境平民ダンジョンの身の丈

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/85

9.お宝よりお風呂

 しばらくして硬直が解けたアルバートさんたちも復帰し、車座になって話を再開する。

 さっき手つかずの平地を見たホーさんが、開拓マニアとして熱くアピールする。

 

「かめへんで?別にあたしの縄張りやないし。

 ま、この寝床あたりはまんまにしてほしいけど、池のあっち側やったら、好きにしたらええんとちゃうか?」

「ほんとですか⁉」


 ホーさんの息が荒くなる。

 キモいので、土地の話聞いてハアハアすんのやめてください。


「でも、きっと魔物がいるですよ?」

「……ヮィ……」

「え?なんて?」

「右手奥の崖にワイバーンがいたそうです」


 カーチャさんの通訳経由で、超視力マリアベルさんからの重要情報。


「ほら、言った通りだったです!」

「ぐっ……」


 絶句するホーさんに、ネーさんから朗報がもたらされる。


「あのあたりに行かんかったら問題あらへんぞ?

 このあたりは、山が険しいてどっからも入ってこられへんから、そこそこの魔物っちゅうたら飛びトカゲしかおらん。あたしが行けば逃げよるし、あとは小物ばっかや。

 ほんで、そのトカゲは、食いもんあらへんから、外にメシ獲りに行って、ここには寝に帰ってくるだけや。

 あら? あたしも似たようなもんやったわ! あはははは!」

「おお! さすが師匠!」


 そこは「いえ、師匠はワイバーンとは違います!」でしょ。いや、それ以前に冗談にマジ返しした時点で失格か。

 ネーさんは気づかずに「せや、さすがあたしやろ」って喜んでるから別にいいけど。


「あの、ひとつ質問していいですか?」


 その時、アルバートさんがおずおずと挙手した。


「話は変わるんですが、さっきネー様がおっしゃったゴミって、どこにあるんでしょう?」


 ここでゴミの話?


「ん? まとめて奥に押し込んどいたとちゃうかな?」

「待って!」


 私は思わず会話を遮った。

 今、聞き捨てならんこと言ったね?


「奥に押し込んだ? 分別は?」

「知らんわそんなん。気になるんやったら、自分で見てきいや」

「そうします!」

「ちょっと待つです……」


 憤然と立ち上がろうとする私を、ディオさんが呆れ声で止めた。


「ミリちゃん、いいですか?

 忘れてるみたいだから言うですが、ネー師匠は古龍で、そのゴミはお宝です。

 さっきマリアベルちゃんが拾ったうろこの価値知ってるです?」


「……あ」


 見回すと、生暖かい視線を私に向ける人々。


 ……またやっちまった……。

 デビリンのアサインミスの時と同じじゃん。

 「デビリン=もふもふペット、ネーさん=常連のおばちゃん」じゃなくて、いや、そうではあるけど、世界の常識は「デビリン=脅威度Aの魔獣、ネーさん=伝説の古龍」だ。


「……どうぞ、見てきてください。

 ネーさんいいよね?」


 私は後でいいや。常識ないから。


「ええけど、におったらあかんで」


 お宝じゃなく、ほんとにおばちゃんのゴミだった場合を想像したのか、期待を込めて立ち上がったみんなの顔が、微妙に曇った。


 そしてしばらく後、洞窟奥から戻ってきたみんなは、また元の位置で車座になっている。

 テンションは低い。


「無理……。俺たちの手に負える話じゃない」


 おばちゃんの不分別のゴミの山は、ちゃんとお宝だったようだ。ただ、お宝過ぎた。

 対策を練ろうとはしているが、議論は前世の国会みたいに先送りに大きく傾いている。


 私はそれに加わらず、ちょっと離れたところで、ネーさんとコソコソ話している。


「ネーさん、腐るものもプラもなかったから、分別はしなくていいよ。

 でも、お家の中にゴミ貯め込むのはナシ。

 毎日とは言わないけど、ゴミはなるべく小まめに外に捨てること。

 このままだと、ゴミ屋敷ってやつになって、ゴミの上で寝ることになるよ?」

「それは勘弁やな。わかった。で、ぷらっちゅうのはなんや?」

「あー、気にしないでだいじょぶ、なかったから」


 そう。問題はプラじゃなく、あの量。

 遅れて見に行ったけど、なんかもう、多すぎて一瞬で引き返した。

 アルバートさんとは別の意味で、私の手にも負えない。


 でもまあ、方法はなかなか決まらないようだけど、引き取り手はたっぷりいると思うから、そっちにお任せでいいか。

 私はいらないし。


 ダンジョン的には優良DPアイテムかもだけど、すでに本体がいる。

 売って現金化しても、そんな大金の使い道は魔石しかない。

 その魔石は、魔道具の売り上げマージンとして、もう十分もらっている。

 それに、そんなヤバいもん持ってたら、絶対にお貴族様出てくる。


 ね? いらないでしょ?


 車座の結論は予想通り先送り。

 ここにいる面々で、魔法契約を交わすことだけ決まった。

 あとは持ち帰って、情報の扱いも含めてじっくり検討するそうだ。

 私も当事者ではあるから、気が乗らないけど、サインはする。


 そろそろ寝るわ、と龍形態で丸くなるネーさんにおやすみを言って、私たちは静かに盆地を後にした。

 お宝を大発見して落ち込むという、珍しいツアーはこうして終了した。

 ジャンゴさんだけはずっと元気だった。


 翌朝、緊急会議のために、一行は難しい顔で村に向かった。

 私は「貴族バレだけは絶対なしで!」とだけ念押しして、通常業務だ。


「ミリ、ちゃんとゴミ外にほかしてきたで!」


 ネーさんも上機嫌で定時出社。


「え? 全部?」

「いや、手前のヤツだけや」


 まあ、あの量だからさすがに無理か。


「それでも早速えらい!」

「せやろ?

 ほなら、いよいよあっちに掛からなあかんな!」

「あっち?」


 なんかあったっけ?


「ミリィ、まさか忘れたんとちゃうやろな?

 風呂や。風呂直すっちゅう話やったやろが!」


 あ、そうでした。


「あたしは約束守って盆地案内したのに、それはあかんやろ。

 勝手にやるな言うから待っとったけど、やらんならあたし自分でやるぞ?」


 なんかゴゴゴっていうオーラ出てる。これはマズい。


「いや、忘れてないから待って!すぐやるから!」

「ほんまか?」

「ほんま! 今からやる。

 とりあえず、細かい希望教えて?」


 お宝だのお風呂だの、ほんとにせわしない。

 でも、考えてみれば、ダンジョン改造はダンマスにしかできない仕事だから、ちょっと張り切っちゃいますか。


 ネーさんはダッシュで朝湯を済ますと、私の隣に座った。

 ネーさんがいるとカスハラがないので、受付をしながらでも話は進む。

 時々コアちゃんに念話で相談しながら、私たちは改装計画を詰めてゆく。


 そのコアちゃんが暴走した。

 ダンジョンの滞在DPの大部分をもたらしてくれるネーさんは、コアちゃんにしてみれば絶対服従の神様お客様。

 気持ちのいいほどの忖度で、主にセンス面で修正を図ろうとする私の意見を徹底的に潰した。

 DPおかねはあるので、コスト面での抵抗もできなかった。


 まずは、男湯。

 時間帯によっては混雑がひどかったので、バンと拡げ、100人くらいが同時に入浴できる大浴場とする。

 内装は洞窟スタイルから変更なし。サウナもまんま残した。


 そして、奥の扉の外に露天風呂を新設する。

 厳密には「露天風」なんだけどね。

 20人規模で、めんどくさいので周りはただの岩場。まあ、見た目はそれっぽい。


 ネーさんも使う女湯はだいぶ気合が入っている。

 内訳は内湯3つと露天風風呂。

 内湯はそれぞれ、「南部風の木材を多用したしっとりした雰囲気の香木風呂」、「神話の宮殿風の黄金風呂」、「これまでのイメージの洞窟風呂。ただし石材グレードアップ」で、露天は南部森林がテーマのジャングル風呂になる。

 これは多分、弟子2号ことディオさんへの心遣い。

 女性専用サウナも残して、こっちはちょい拡張。


 そんで改装の目玉がサウナ、ネーさんのいう「蒸し風呂」である。

 100人規模のすげーでかいのができる予定だ。

 男女共用で全裸禁止、サウナ服着用の施設だ。

 個人用の座椅子が並べられ、隣を気にすることなく、好きなだけ汗を流せる。

 併設の水風呂にはお肌しっとり成分を含む冷泉を流す。

 ちなみに、サウナ服はディオさんの商会経由で、リムズデイルの服屋さんに発注済みだ。


 あとは、休憩所。

 ここだけは普通。よかった。

 いずれ軽食と飲み物も出したいので、店舗スペースは作ってある。


 この内容で決定。 

 ――完全にやりすぎです。

 そして懸念もひとつ。


「これ、どうやって作ったか聞かれたらどうんすんの?

 ダンジョンだってまだ秘密なんだよ?」

「あたしは、隠さんでもええ思うけどなあ。

 まあ、今んとこはあたしが全部作ったっちゅうことでええで?」

「そんなんでみんな納得する?」

「するがな。あたしの魔法やぞ?

 そんでも文句言うやつは、ぶん殴ったらしまいや」

「やめてね?」


 もうそんでいいや。

 ネーさんが責任持つって言うんだから、何かあったらネーさんに対処してもらおう。

 となると、ネーさんは常連客からスタッフ入り決定だな。もちろん施設責任者で。


 さすがに工事期間がないとマズいので、温泉は一週間休業することにした。

 本当に工事するとしたら一週間で終わる内容じゃないけど、まあせめてもの言い訳ってことで。


 告知を経てやってきた改装休業日初日、本気を出したコアちゃんにより、改装は2時間で終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ