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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第2章 崖っぷちダンジョンの延命策

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13.ダンジョン式停滞期対策

 季節は、いつの間にか冬になっていた。

 採取で森に入る村人も引き上げ、猟も休みの期間に入ったため、春まで宿は休業だ。

 父さんとお姉ちゃんも村に戻り、第2階層の洞窟ハウスもちょっと寂しくなった。


 お客さんもいなくなったので、ディオさんに外出を勧めてみたが、寒さを嫌がって腰が重い。

 この辺りに雪が降るのは真冬になってかららしいので、まだ森歩きはできるのだが、

広葉樹はすっかり葉を落としていて、吹き抜ける風は確かに冷たい。

 「デビリンちゃんとリリちゃん一緒なら行ってもいいです」とのことだったが、そっちはふたりに断られた。

 あちこち触りまくられのでうざいって。さもありなん。

 ちなみにリリは養女ということになっている。


 父さんとお姉ちゃんは森で弓の練習とトレーニングを続けているんだから、寒くてもできないことはないと思うんだけど、推しに振られて拗ねた彼女は、「ディオは南の生まれなので無理です!」と結局第2階層に引きこもってしまった。


 このひと月で冗談を言い合うほどに打ち解けて、楽しくダイエットを進めてきたけど、停滞期に入り、じわじわストレスが溜まって機嫌が悪くなってきている。

 しっかり説明したので、停滞期が何かということは理解はしてくれた。糖質制限を続けると胃腸の調子悪くなったりすることもあるんだけど、そっちは問題ないみたいだから、体重が落ちないという現実がそのままストレスになっている感じだ。 


 気持ちはよくわかるし、私の立場はトレーナーだから、ここは解決方法を提案しなきゃだ。

 経験上、こんな時にただ励ましてもあまり意味はない。場合によっては逆効果になる。

 

 考えられる方向性は2つ。

 ひとつは、目先を変えてストレスの軽減を図ること、もうひとつは、停滞期を最短で抜けて、順調に体重を落ちる日々に戻すことだ。


 寒くて外出が嫌なら、ダンジョン内で軽い運動でもできればいいんだけど、ウチはゴツゴツした洞窟なので、ドン臭いディオさんは転んでケガしそうで怖い。

 ジム的な階層でも増設すればいいんだけど、一人のためにそんなコストをかける余裕はない。


 あと考えられるのは、チートデイか。

 

 「チートデイ」とは、停滞期の代表的な対策のひとつだ。

 ダイエットによる食事制限を「飢餓」と勘違いした脳が、基礎代謝を抑え、栄養の吸収率を高めてその飢えから逃れようとするのが停滞期であり、飢餓と解釈した脳に「これは飢餓じゃない」と理解させるために、一食だけ食事制限をなくす日を設けるわけである。


 ただし、これは大きなリスクが伴う。

 意思が弱いヤツがやると、チートデイが増えるのだ。

 週一が週二になり、2日に一日なり、やがて毎日がチートデイになる。

 前世の私のダイエット失敗の半分はこれだ。


 だってさあ、ずっと糖質を我慢して、やっとケーキもポテチもない生活に慣れてきたところで甘いもの食べたら、ストッパー外れるよね。しょうがないと思うんだ。


 まあ、ディオさんが鉄の意志でチートデイ以外の糖質制限を続けられれば問題ないんだけど、ダイエット開始前に吹き出物作るまで食い溜めするような人だからなあ。我慢できるとは思えないんだよ。

 ここから動けないならまだしも、転移でいつでも街に行って好きなものを買えるんだから、「もうありません」作戦は通じないし。

 うーん、却下だな。


 思いつかないので、直接聞いてみることにした。


「ディオさん、ストレス発散のために何かしたいことある?

 運動じゃなくて、近くの湖で釣りとかどうかな?」

「寒いからいやです」

「ちょっと自宅に帰ってお買い物とかしてもいいんだよ?」

「寒いからいやです。いつも冬はお家から出ないです。邪魔する人にはファイアボール打つです」


 引きこもりが立てこもりになるわけか。恐ろしい。

 こりゃ外は完全NGだね。


「じゃあ、外に出ないであったかいので何かない?」

「……じゃあ、お風呂入りたいです」

「お風呂は宿にあるでしょ? 今お客さんいないから好きなだけ入ればいいのに」

「そういうのじゃないです。

 ヌグラファの宿のお風呂みたいなやつです」

「ヌグラファ? 何ですかそれ?」

「エルフの里近くの保養地です。入るだけでお肌がツルツルになるです」

「ああ、温泉かあ。さすがにそれは、」


 「無理」と言いかけて、私はそれを飲み込んだ。

 いや、いけるかも。

 追加できる階層のリストに「火山」があって、エネルギーを食うせいかすごく高かったけど、パーツならなんとかなるかもしれない。


「ちょっと待っててね」

「はいです」


 私は念話でリリに連絡しつつ、シュパッとコア部屋に転移した。

 最初は私の転移にびっくりしてたディオさんも、今じゃ慣れっこだ。

 コア部屋の話はしていないけど、守秘契約もあるし、そもそも弱小ダンジョンの構造とかどうでもいいらしいので、私の転移先を気することもない。ナイス無関心!


「ミリねえ!」


 ちょっと遅れて転移してきたリリが嬉しそうに抱きついてくる。マジ天使。

 ディオさんに掛かりきりでこの頃あんまし遊べてなかったから、寂しかったのかもしれない。

 コア部屋を移転させる時に希望を出して、コアちゃんに作ってもらったソファに座る。

 当然、リリは膝の上だ。大きくなったとはいえ、まだまだ軽い。


「コアちゃん、火山ダンジョンの温泉だけ設置した場合、DPってどのくらい必要?」


 リリ成分の補給に意識を持っていかれそうになるのをこらえて、私はコアちゃんに訊ねた。


『規模はどのくらいでしょう?』

「そうだなあ、作ったらみんな入りたがるだろうから、ちょっと広めのお風呂に掛け流し、えーと、お湯を流しっぱなしにできるくらいあったら最高。ダメだったらもっと小さくてもいいよ」

『その程度なら、一番小さな泉で大丈夫です。150DPでできます。だたし、維持費に一日15DP必要です』

「お風呂作ったりするのは別だよね?」

『はい。そちらは窪みを作るだけなので5DPでいけます。内装を含めても50DPも掛からないでしょう』

「了解。

 今DPってどのくらい?」

『13000弱です。ディオニシアさんの滞在で大きく増えました。

 彼女の滞在DPは41。家族、レパードモールの分を全て合わせた約3倍あります。

 素晴らしい人間です!』

「確かに。

 で、レパードモールって何だっけ?」

『モグラの魔物です。

 元のコアルームから穴を掘り進めていました。

 滞在DPは一日1ポイントでした』

「ああ。いたね、そんなの。ヒョウ柄のやつ」

『はい。ですが、3日前に穴が向こう側につながって、そこから出ていきました』

「え?山の反対側に突き抜けたってこと?」

『いえ、出口から見える限りでは、山中の盆地のようです』

「あ、そうなんだ。まあ、一日1DPならどうでもいいか」

『はい』


 デビリンにすごくビビってたから、モグラ的にはホッとしたかもね。

 でも、少しは足しになったよ、ありがとう。


 それよりディオさんだよ。一日41DPかあ。さすが元宮廷魔導士。

 コアちゃんが絶賛する通り、ダンジョンにとってこんなにありがたい人材はいない。

 ちょっとうざいけど、もう慣れたからこちらのストレスは少ないし、栄養学という研究材料があって、引きこもりにぴったりなダンジョンの居心地を向上させれば、定住の可能性もあると思う。


「温泉って、ディオさんの希望だから、作れば今後も来てくれると思うんだけど、どう思う?」

『ぜひ作るべきです!彼女は逃してはいけません!』


 コアちゃんが食い気味で答えた。 


「OK!

 場所はどこがいいと思う?」

『元のコアルームはどうでしょう?

 レパードモールの穴が斜め上に伸びていますので、少し拡張すれば換気口になります』

「おお!」


 かくして、うちのダンジョンに温泉ができることになった。

 実はかなり楽しみ。

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