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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第2章 崖っぷちダンジョンの延命策

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11.栄養学(うろ覚え)、異世界へ

 エリート知識人だけあって、ディオアさんは博識だった。

 私が転生後にすぐダンマスになってしまったため、この世界のことをよく知らないと言うと、異世界知識のお礼にと、色々教えてくれた。

 特にありがたかったのはダンジョン関連の話で、この世界でのダンジョンの実態や他の有名ダンジョンのことなど、貴重な情報が手に入った。

 他のダンジョンのことはコアちゃんにも情報はなく、ダンジョンコア・ダンマス共々、とても勉強になった。


 先にお礼をもらってしまったからには失敗は許されない。

 翌日、私は気合MAXで、ディオさんのダイエットに突入したのである。


 まずは、このダンジョンで行うダイエットの内容説明だ。

 私は準備しておいたダンジョンパンをディオさんの目の前に置く。


「ディオさん。母さんはこれで痩せました」

「これで? 普通の白パンですよ?」

「はい。パンです。でもこれはカロリーがゼロなんです」

「カロリー?」


 ディオさんは首をかしげた。

 首の肉が邪魔して角度が浅い。


 そっからか。

 知識エリートのはずの彼女が知らないということは、この世界にはカロリーという概念がないのかもしれない。

 それじゃあ、もう一つ質問。


「ディオさん、『栄養素』って聞いたことあります?」

「栄養、そ?

 そ、って何ですか?」

「魔素の素です。栄養の素になるものです」

「うーん。それは聞いたことがありませんねえ」

「じゃあ、新しい考え方になりますね。

このダンジョンで行うダイエットは、その栄養素を基にしたやり方です」

「えーと、よく話が見えないですが……。

 あ、柔らかくておいしいです」


 新しい単語に首をかしげながら、ディオさんは流れるようにダンジョンパンをかじった。

 さあ。

そういう無意識で糖質取っちゃうあなたのために、この世界初の栄養学の講義開始だ。


「じゃあ、もうちょっと詳しく説明しますね。

 まず、栄養素には5つの種類があります。タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5つです。

 それぞれの大まかな役割としては、タンパク質は体を作る元となり、脂質と糖質は体を動かす力を作ります。ビタミンとミネラルは体調を整えたり、健康を保つために必要になります。

 タンパク質は、肉や魚、豆類などに多く含まれます。脂質は油、糖質は小麦などの穀物や甘いものが中心になります。ミネラルやビタミンは野菜や果物をはじめとして色々な食べ物に含まれます。

 それから、カロリーという単位があって」

「シュトップです!」


 噛みながら両掌を突き出して、ディオニシアさんが私の話を遮った。


「ちょっと待ってください。メモを取るです」


 テーブルに置いたバッグをガサゴソと漁り出す。


「えーと、これじゃないです。書ける紙、書ける紙……」


 テーブルの上に、びっしり書き込まれた雑多なサイズの紙がばらまかれてゆき、最後に白い魔石を手にしたディオニシアさんはこう言った。


「お家から紙取ってくるです」

「え?」

「あ、大丈夫です。

 すぐ行って来るので、サラちゃんはちょっと待っててください」


 そう言って、スタスタと魔法陣の上に立ち、中央の魔石を取り替えると、次の瞬間、彼女の姿は搔き消えた。


 5分ほどでディオニシアさんは紙束と何かの瓶を持って戻ってきた。

 そのためだけにあの魔石?

 大きさから見て100DP以上にはなったはずだ。もったいない。


「お待たせしたです。

 もう一度説明をお願いするです。

 もしかすると、ものすごくお金を稼げるかもしれないですから、なるべく詳しくお願いするです!」


 ディオニシアさんはおもむろに持ってきた瓶のふたを開け、ポケットから取り出したスプーンでダンジョンパンにジャムをたっぷりと塗った。


「ジャムかーい!」

「ジャムですよ? 甘くて美味しいです。ミリちゃんも食べるです?」

「けっこうです。

 てか、ダイエットしようとする人が何やってんですか!」

「頭を使う時には甘いものを摂った方が覚えやすいです。これは経験上確かです!」

「それに気づいたのはすごいですけど、食べるのは今じゃないです」

「あうおお」


 口にパンを詰め込みながら、ディオさんは頷いた。

 何やっとるんじゃてめえは!

 私は残りのパンとジャムの瓶をサッと回収して、台所の棚にしまった。

 ディオさんが背伸びしても届かない。

 抗議の声は当然無視だ。

 

「ダイエットするんですよね?

 甘いものは確かに脳の栄養ですが、食べ過ぎた分は脂肪になるだけですからね?」

「うー」

「うーじゃありません!

 どうしても小腹が空いたら野菜を食べてください。

 収穫終わったばかりだから、いっぱいあります」

「わかったです。それでもいいです。

 揚げたお芋にはちみつ付けて食べるとおいしいです」

「ダメです!何んですかそのヤバい食べ物は!

 いいですか?お芋は野菜じゃありませんからね?

 麦も芋も砂糖と同じ!肥満の元だと思ってください。

 あと、揚げものもダイエットの敵です。

 ポテトフライとかあり得ませんから!」

「そ、それは困るです」

「食べて困るのはディオさんです!

 とりあえず、一通り説明しますから、それを聞いた上でよく考えてみてください」


 私のダイエット知識は、前世の雑誌やネットを読んだだけの素人知識に過ぎない。

 しかも成功したことは一度もない。

 ただ、失敗し続けて色々手を出したおかげで、基礎知識はしっかり覚えている。


 私は、さっき途中だった5大栄養素とその役割を説明した。

 脂肪に直結する糖質と脂質については、危機感を煽るために少し誇張した。


 概要だけで済ますつもりだったが、知識欲に火が付いたディオニシアさんに押されて、さらにカロリーとその測定法、肥満の原因、BMI、血糖値など、なけなしの栄養学の知識を全て絞り出すはめになった。

 もうすっからかんっすわ。


 糖質制限で母さんが痩せたということは、前世のやり方は通用するはずだけど、ダダリアでは違う部分もあるかもしれないということで、念のため言い訳をしておく。


「あ、これは私の前世の世界の理論なので、この世界では違っている可能性もあります。

 そこは注意してくださいね」

「それはわかっているです。

 ディオが自分の体を使って実験をして、理論を確立するです!

 それで痩せる魔法を開発して、王都の連中をバカにしてやるです!」


 栄養学に魔法とか関係ないんだけど、ディオさん天才だからなあ。ほんとにそういう魔法作っちゃうかもしれない。

 上手くいきそうだったら師匠としてなにがしかの権利を主張しておこう。

 どんどん研究してどんどんお金を稼いで、どんどん魔石を納めてもらおう。


ディオさんのやる気に火が着いたところで、初日は終了。

 彼女は一旦家に戻って2日間で抱えている仕事を終わらせ、3日後からダイエット合宿に入ることになった。


 情報管理上、なるべく村の人とは会わせたくないので、転移の魔法陣は移動させた。

 ほんとは第2層にしたかったんだけど、外部からの直接転移は入口のある階層しかできないというコアちゃんのアドバイスで、洞窟の奥の死角に設置した。


「家に帰っても、糖質摂りすぎないように注意してくださいね」

「え? 注意しないですよ?

 合宿が始まれば食べられなくなるですから、その前にしっかり食べてくるです!」


 恐怖を煽ったのが逆効果だったようで、ディオさんはキリッと顔で高カロリーの最後の晩餐を宣言した。


「晩ごはんはたっぷりエッグソースをかけた揚げ芋とケーキです!」

「それ一番あかんやつ!」


 って叫んだけど、ディオさんの姿は既になかった。

 糖質に向かっての転移は、光の速さだった。

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