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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第2章 崖っぷちダンジョンの延命策

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5.ハンター宿、開業しました

 ハンターさんたちは、父さんたちの案内で予定通りに到着した。

 第一陣は、ハンターがふたりと薬草採取の人がひとり。


 とりあえず父さんのマジックバッグからシーツを出してもらって、母さんがお茶を出している隙に急いで客室にセットする。


 お客さん3名は、森の奥に似つかわしくないお屋敷っぷりにびっくりし、案内された客室の立派さに歓声を上げた。

 領主の家よりすげー!らしい。

 何にせよ喜んでもらえて良かった。


 宿のキッチンには、その他の荷物が山と積まれた。

 開店祝いで村の人たちに色々持たされたらしい。


 メインは食材で、特に今が旬の豆類とダダリアトマト、ニーニャが大量にあった。

 豆は乾燥させて、ニーニャはトマトソースみたいに瓶詰で保存するらしい。

 根菜類もたっぷりあった。これは日の当たらない場所で保存するらしいので、新階層の奥にでも置いておけばいいだろう。


 調味料は岩塩と砂糖と酢が届いた。

 砂糖は薄い黄色で、野菜から採れるんだって。甜菜的なやつかと思ったら、茄子みたいな形らしい。まあ、甘ければOK。

 スパイスは見当たらなかったけど、秋になれば森で胡椒っぽい実が採れるらしいのでそいつに期待だ。


 ハンターさんたちが自前で獲ってくるのを見越して、肉類はごく少ない。

 そういうオペレーション方針なので問題ない。

 当然冷蔵庫などないし、私のマジックバッグは小さくて食材のストックは無理なので、葉物野菜ともどもハンターさんのマジックバッグからその都度提供してもらった方が無駄がなくていい。

 今日の獲物は来る途中で狩った鮮度バッチリの鶏で、後でさばいてから母さんに渡すとのことだ。


 あ、パンだけはダンジョンから提供することにしたよ。

 いちいち小人数分焼くのめんどくさいし。

 ダンジョンパン一種類しかないけど、家族曰くそこそこ美味しいらしいから、古くなった村のパンよりマシだと思う。


 そんな感じで宿の方は順調に始まった。

 で、そっちはいいとして。


 洞窟1層の奥。

 夕食の仕込みに参加しない私と父さんの前には、ヒョウ柄の物体が入った籠が置かれている。


「父さん、これ何?」

「んー、魔物?」

「なぜ疑問形?」

「いや、魔石持ちだから魔物っちゃ魔物なんだけど、元はただのモグラだからなあ……」

「モグラ?これが?」


 丸まっていて手足も見えないし、ヒョウ柄で猫くらいの大きさだから、モグラと言われても違和感しかない。


「うん。レパードモール。モグラの魔物だな。

 元は普通のモグラなんだがな、歯がないから食べたエサをすりつぶすために、胃に石を飲み込むんだ。

 で、その石の中に魔石が混じってっと、たまにモンスター化すんのよ。


 畑に穴開けるし、肉は臭くて食えねえし、魔石は小さすぎて売れんし、そのくせ妙にしぶとくて駆除するのも手間だし、ほんと迷惑なんだよな」

「なんでそんなの持ってきた⁉」

「い、いや、俺が獲ったんじゃねえぞ。

 村のヤツが、デビリンへの貢物って持ってきたから、とりあえず運んできた。

 アレだろ?これでも一応魔物だから、置いとけばDPの足しになんねえかなって」


 ああ、そういうことか。

 でもなあ。なんか食指が動かないだよなあ……。

 私は、落ちていた木の枝でモグラを突いてみるが、ピクリともしない。


「ねえ、これ生きてる?」

「うーん、村を出る時には生きてたんだがなあ」


 父さんが籠をガタガタ揺するが、モグラは動かない。


「運んでるうちに死んだか?

 じゃあ、ダンジョンに吸収してもらうしかねえか」


 父さんが籠を逆さまにしてモグラを床に落とし、死んだのを確かめるように、靴の先でつついた。

 

「ぐぉ?」


 やっと起きてきたデビリンが、「何やってるの?」と私の横から顔を出したその時だった。


「うわっ!」


 ヒョウ柄モグラは急に動き出し、すごい勢いで逃げ出した。

 いきなり動き出したから、デビリンもビクってして「ゴア!」って声を漏らした。

 モグラはそのまま旧コア部屋に続く穴に消えた。


「あの先どうなってんだ?」


 父さんが訊いてきたので、「穴倉」と答えた。


「捕まえてよ」

「やだよ。あいつ爪に毒あんだよ。

 引っかかれると腫れて、すげえ痒いんだよ。

 お前が行けばいいじゃん。ダンマスなんだから」

「嫌に決まってるでしょ?」

「うーん……。じゃあ、もう放っておくしかねえか」


 持ち込んだ当人が、他人事のように言った。


「いや、父さんのせいだかんね⁉」

「俺じゃねえだろ、デビリンが出てきたからだろ?」

「デビリンは悪くないです!」

「じゃあ、ミゲルのせいだな!」

「誰?」

「アレ持ってきたやつ。いただろ?デビリン拝んでたのが」

「ああ、あの人か……」


 思い出した。デビリン愛がすごいおっちゃん。ちょっと引いた。

 うん、もうそれでいいや。ミゲルさんが悪い。


 その後ふたりで少し話し合ったが、何のアイディアも出なかった。

 結局、どうやらダンジョンに害はないようだし、少しずつでもDPが入ればよし、逃げたら逃げたでよし、万が一眷属化したらその時に考えるということで、放置が決定した。

 穴の前は恐ろしいデビリンの休憩所だから、多分こっちに出てくることもないだろうし。


 念のために、出てきたらわかるように穴の入口に小石を置いて、コアちゃんにもチェックを頼んでおいたが、数日たっても出てくることはなかった。

 期待していなかった滞在ポイントも入ってきた。あんなんでも魔物だけのことはある。

1日1DPだけど、デビリンの眷属化以来久しぶりの定期収入なので、何気に嬉しかった。


 まあ、そんな感じで珍客にバタバタしたくらいで、宿屋は大きなトラブルもなく順調に回りはじめた。

 お客さんも途切れることはない。

 村には父さん以外の猟師が6人、採取人が4人いて、この10人が3・4人のローテーションで宿を利用するはずだったのが、そこに噂を聞いた他の村人たちも混ざりはじめ、宿には常時5・6人が宿泊するようになったから、想定より繁盛していると言えるだろう。


 まさか、墓場パーツの屋敷が人気になるとは思わなかったよ。

 村の人たちにとっては、森は見飽きていても、初めて見る立派なお屋敷に泊まることは、十分な娯楽だったんだね。


 お仕事チームの方も順調に成果を出していて、狩りも採取も村の近くの森よりかなり良いものが獲れるらしく、みんなご機嫌で帰ってゆく。


 夕食には魔物肉が出ることも珍しくなく、ダンジョン産白パンとともに宿の売りとなっている。

 魔物肉はリリの口にも合うようで、私たちも時々ご相伴にあずかる。

 魔物は肉だけじゃなく、廃棄部位もダンジョンに吸収させるとDPに変換されるので、コアちゃんも喜んでいる。


 ちょっと残念だったのは、村人の滞在DPが少なかったことだ。

 最大で6、最少は1。平均すれば3ポイントくらいしかなくて、5人いても母さんの11DPをちょっと超えるくらい。


 まあ、合計すれば1日20DP以上の収入で、維持費の15DPは賄えているんだけど、ダンジョンのレベルアップはまだまだ先になりそうだ。


 あと特筆すべきは、リリの人気だ。

 「魔導士に育てられた元孤児のテイマーで、魔導士が亡くなってから森で熊の魔物と暮らしていた」という「悲しい過去」を感じさせず、けなげに働く姿に、脳筋村民がやられた結果である。

 設定ですって言うわけにもいかないのでどうしようもないんだけど、ちょっと悔しい。


 私?

 ちゃんと働いてますよ?

 看板娘になれなかったので、掃除と洗い物してますが何か?

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