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未来の町

作者: 雉白書屋

 ある日、ぼくは『未来の町』って呼ばれてる場所に引っ越すことになった。

 なんだかすごいらしいって聞いてたけど、実際に来てみたら本当にすごかった。家の見た目は普通っぽいけど、鍵がいらないんだ。玄関の前に立つだけで、自動で『ウイーン』ってドアが開くんだよ。これなら鍵をなくして、怒られることもないね!

 家の中に入ると、ロボットがお出迎えしてくれた。一人ひとりに一体ずつ、その人専用のロボットがついて、いろんなお手伝いしてくれるんだって。ぼくにもちゃんとついた。名前はマーティ!

 次の日、ぼくはマーティと一緒に町をお散歩した。マーティンは、ぼくが危ないとき、体についた紐をぐいっと引っ張ってくれるんだ。車にぶつかりそうになったときも、さっと引っ張って守ってくれた。でも、そもそも車とはぶつからないんだって。この町の車は全部自動で動いてて、人や物をちゃんと避けるんだって。だから運転免許もいらないんだって。勉強しなくていいから、いいね!

 スーパーもすごいんだ! レジにカゴを置くだけで、機械が自動で全部やってくれたよ。買ったものを袋にきれいに詰めてくれて、お金の計算までしてくれたよ。勉強しなくていいから、すごくいいね!

 ジュースを買って飲んだら、ちょっとむせちゃった。そしたら、マーティンがすぐに背中をやさしくさすってくれた。やさしいね。

 でも、マーティンはやさしいだけじゃなくて、すごく頼りになるんだ。ぼくが「公園で遊びたい」って言ったら、すぐに公園の場所を調べて案内してくれた。それから、「ウンチしたい」って言ったら、近くのトイレまで連れていってくれた。ズボンも脱がせてくれるんだ。ぼくがジュースをトイレに流そうとしたら、マーチンが素早く取り上げて、ゴミ箱にポイッて捨てたよ。容器は流しちゃいけないんだって。物知りだなあ。

 トイレの中には、スカートを履いたおじさんがいて、ぼくにニコッと笑いかけてきたよ。すごく気持ち悪かったけど、学校の先生が「そういうこと言ってはいけません」って前に言ってたのを思い出したんだ。ぼくも「バカ」とか「気持ち悪い」とか言われると嫌な気持ちになるから、言わなかったよ!

 いつか、ほかの町もこの未来の町みたいになるんだって。テレビで、男の人みたいな女のそうりだいじんが、そんなふうに言ってた。早くそうなったらいいなあ。

 トイレから出ると、電車が見たくなって、マーピンに「駅に行きたい」って言った。でも、駅の近くまで歩いていくと、大きな声で何か叫んでる人がいて、びっくりした。


「だから! 今の世の中は馬鹿丁寧な注意書きだらけなんだよ! 『このジュースはゆっくり飲んでください。気管に入ると苦しくなることがあります』とか! 『トイレには異物を流さないでください』とか、馬鹿じゃないんだから、そんなの書かなくてもわかるだろ! こんなのは間違ってるんだよ! 社会が馬鹿な人間にレベルを合わせるなんてさあ! ほら、見てみろ! 最近じゃ、みんなああいう知的障――みたいに、なんだよ、おれはちゃんと許可取っただろ! おい、触んなよ! わかったよ、自分で歩けるから触んな!」


 変なおじさんが、お巡りさんに腕を掴まれて、連れていかれちゃった。何を言ってたかはよく意味が分からなかった。でも最近、頭の悪い人が増えてるんだって。バカって何度も言ってたし、あの人もそうなのかな? ねえ、マーピィ?


『そろそろお家に帰りましょうか。それと、私はマービンです。政府の生活支援プログラムに従い、あなたをサポートします。さあ、こっちですよ。あまり道路に近づかないでください。靴紐が解けかけています。結びますので、少々お待ちください。……はい、できました。ああ、急に走り出さないでください』


 また紐を引っ張られちゃった。でも、なんだか安心するんだ。

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