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Uranus(8月16日)

 正直富士山が見えるかどうかは運次第なんて話もよく聞くが、僕たちの目標としては富士山の全貌を拝むことであり、雲一つの存在さえ許せなかった。

 けれど予定していたこの二日間は運が味方になってくれたと言っても良いほどの完璧な晴れ模様であり、富士山の方へと向かう僕たちの歩みは弾むようであった。

 そんな僕たちは色々と調べた結果、ルート重視で乗り換えや険しい道が少ない展望デッキへと向かうことにした。

 ただ途中まではバス移動だったが、そこから目的地である展望デッキまでは徒歩移動になり、緩やかではあるものの坂道続きの道を宙斗を中心に交代交代で車椅子を押して歩くことになった。

 八月の猛暑とも言える気温の中、さすがに息切れを起こしてしまう僕たちにたまに雫星が心配そうな顔を向けていたが、余計な心配はかけまいと必死に四人で疲労感を隠し合っていた。

「着いたー!」

 建物に着くと、富士山を見る前から結月がそう喜ぶのも納得できるような達成感が既に僕たちの中にはあった。

 有り難いことに、ここからはエレベーターという便利な乗り物で上の階を目指すことが出来る。

 最上階まで着くと、僕たちはドキドキとワクワクを兼ね備えた気持ちでその景色に目を向けた。けれど全てが期待通りというわけではなかった。

「あぁ……」

 僕は思わずそんな期待外れな声を出してしまう。

 やはり一筋縄では行かないと見せ付けられるように一日目は晴れだったのにも関わらず、富士山の山頂付近には雲がかかりその全体像を確と目に焼き付けることは出来なかった。

 雫星は僕の気持ちを察したのか、絶望する僕の顔を見て笑顔になりながら言った。

「富士山が機嫌良く姿を見せてくれるかは運次第だからね。」

 それを聞いて僕は更に自分の運を責めたが、今思い返せば雫星はそれさえも良い思い出だと捉えてくれていたのかもしれない。

 それでも僕にはそんな雫星を見ても諦められない気持ちの方が勝っていた。

 次にいつ来られるのか、どんな形で来ることが出来るのか、今確実に目の前にあるチャンスを逃したくはなかった。

 何気なく明日の天気予報を確認すれば、無情にも明日は今日以上の快晴であり、一日違いで全く違った景色がそこにあったかもしれないことに悔やんでも悔やみきれない気持ちになった。

 そして僕は咄嗟の思いから四人に頭を下げた。

「明日もう一度チャンスが欲しい……」

 諦めが悪いと思われるだけかもしれない。もしここで断られたら、そこで諦めるしかなかった。でもどこかでみんなにも同じ気持ちがあったのかもしれない。

「別にいいよ。」

 最初にそう言い出したのは一番反対すると思っていた火ノ川だった。

「元々富士山を見るためだけの旅行であって、明日の新幹線も余裕を持って予約してるからもう一度ここに来られる時間くらいはあると思うし」

 そして雫星は僕に言ってくれた。

「ありがとう」

 その言葉に僕は希望を抱いた。

 それでもそれが必ず明日に回るという確証はない。明日のために僕が出来ることはただ願うことだけだった。

 ホテルに着くと明日に備え早めに寝ることにしたが、明日への緊張か不安からか寝床に就いてからもしばらく寝付けることはなく、いつ眠ったのかも覚えていないうちに意識が遠のいていた。

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