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Uranus(7月31日)

 七月も最終日となった今日、僕たちは四人全員で病室へと向かっていた。

 雫星以外の三人には既に話していたが、八月の中旬頃に雫星が行きたがっていた富士山を見に行く計画を少しずつ立てていた。

 具体的に雫星に話すのは今日が初めてであり、絶対に喜んでくれるだろうと僕たちの中では確信があったため心弾ませる気持ちでいつもの道を歩いていた。

「おはよう!」

 そう言って雫星の隣に腰を掛けた僕は、雫星から見ても何か違う雰囲気を漂わせていたのか眉をしかめながら僕に聞く。

「どうしたの?」

 それに僕は他の三人の顔色を見て、ニコニコする表情と共に言った。

「いや、実はさ。富士山見たいって言ってたじゃん?

八月の中旬にみんなで富士山を見にまた旅行しないかって話しててさ」

 雫星の喜んだ顔を期待する僕たちは、その反応を今か今かと目をキラキラと輝かせながら待っていた。

 だが少しして、期待したその返事が返ってこないことを悟った。

「あれ?雫星?」

 僕は思わず動揺する気持ちと共に雫星に問う。

 すると同じく返答に困り動揺しているのか、雫星はこちらに気を遣う素振りで言った。

「あっごめんね。すごく嬉しい。うん、嬉しい……

だけどね。みんなに伝えておかなきゃいけないことがあって……」

「伝えておかなきゃいけないこと?」

「うん。実はね……私、車椅子になっちゃったんだ。」

 必死に笑顔を見せながら話そうとする雫星と、その予想もしていなかった内容に僕たちは雫星が動揺しながら言った覚悟を知った。それでも衝撃を受けたことは隠せずそんな雫星に質問をぶつけてしまう。

「え、いつから?」

「花火が終わってすぐくらいからかな。」

 確かに今思い返せば、あの花火以来いつも以上に雫星がベッドから出ることはなく、立ったり歩いたりしている姿を見たことはなかった。

「でも……」

 これまでのことを考えると俄かには信じ難かった。

 けれどこのまま過ぎていくと信じていたかった日々に、とてつもなく大きな壁が出来たような気がして、その壁は壊すどころか肥大化することしかないことを実感せざるを得なかった。

「だから多分、私はその旅行には……」

 雫星がそう言い掛けた時、僕はそれを否定する言葉を必死に探していたが、咄嗟のことに何を言うのが正しいのか分からないでいた。

 でも他の三人は僕とは違った。

「行けるじゃん!車椅子なら私たちが押すしさ!」

 雫星が言い切る前にそう明るく言い出したのは結月だった。

「そうだね。力仕事なら宙斗がいるし」

 火ノ川の言葉に宙斗は自慢の腕の筋肉を見せびらかす。

「俺が筋トレしてたのはこの日のためだったんだな!」

「つまりは行けない理由でも何でもないよ。

大事なのは雫星が行きたいか行きたくないか……」

 結月が真っ直ぐな目で雫星にそう問い掛けた時、雫星は下を見ながら小さく言った。

「行きたい……」

 僕たちはその返事に安心した。

 少し遠回りはしたが、期待していた返答に僕たちは笑顔で顔を見合わせる。

「了解しました!

それなら私たちはその雫星の願いを叶えるためにとことんやるだけだよ!」

 結月の言葉に、雫星は驚いたように喜ぶ僕たちのことを見ていた。けど本当に大変なのはここからだということを、僕たちはまだ知る由もなかった。

 そしてここから二週間ほどで、僕たちの富士山旅行計画は完成形へと進んでいく。

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