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Uranus(7月29日)

 夏休みに入って間もない今日、僕は朝から誰に催促されるわけでもなく宿題に取り掛かり、既に宿題の三分の一ほどは自力で終わらすことに成功していた。

 今日は仕事もなく、私服に着替えた僕は宿題の一部を雫星に聞くため鞄に入れる。

 そして軽い足取りで鞄を持ったまま玄関で靴を履いていると、ゆっくりと歩いてきた母が優しい笑顔で言った。

「今ね、とっても楽しそうだよ陽」

「え?」

 急な言葉に、僕は靴を履く手を止めることなく聞き返す。

「ううん。気付いてないかなって思って教えてあげただけ」

 そう言って悪戯な微笑みを浮かべながら母は出掛ける僕に手を振ってくれていた。

「行って来ます」

「行ってらっしゃい」



 今日は宙斗と火ノ川はバイトが入っていたため、結月と近くで待ち合わせをして二人で病室へと向かう。

 病室に着くと、珍しく病室の扉が閉まっていた。

 僕たちはゆっくりその扉を開き雫星に声を掛けようとするが、目に入った雫星の姿を見てその声は仕舞っておくことにした。

「寝ているみたいだね」

 結月はそんな雫星に気を遣ってか、隣にいる僕にそう小声で言った。

「そっとしておいてあげよう」

 明日も休みであったため、また明日出直そうとメッセージだけ雫星に送りこの場を立ち去ることにした。


「どうしよっか」

 結月は手をぶらぶらさせ歩きながら僕に問い掛ける。

 僕たちにとっては急遽出来てしまった時間に僕も一緒に悩んでいると、突如閃いた顔と共に結月が言った。

「そうだ!久しぶりにキッズモールに行こうよ!」

 それは僕たちが昔よく行っていたショッピングモールであり、僕たち世代の間では学校帰りに子供が屯する場所としてキッズモールとも呼ばれていた。

「久しぶりだね」

「小学生以来かな」

 当時は男女複数人で訪れていたが、何度も足を運んだことがあるこの場所に二人で来るのは初めてだった。

 入り口を抜けてすぐにある映画の広告を、僕は何の気なしに視界に入れながら歩いていた。

「あっ!そういえばちょうど見たい映画があったんだった!」

 そう言い出した結月に連れられ映画館へ着くと、流されるままに指定された映画のチケットを買わされる。

 けれど僕にも映画館という場所で密かに憧れていた夢があった。

 それは映画館の中にある売店のメニューを思う存分注文することであり、特にその中でも外せないのはポップコーンにチュロス、フライドポテト。更に追加でピザと期間限定物も一緒に頼んだ。

 トレーいっぱいに乗り切らなかった分は、結月の方にも乗せてもらいシアター内へと運んで行く。

「この量どうするの?こんなに頼む必要あった?」

 自分のトレーにも目一杯に乗せられたことで怪訝な顔をして聞いてくる結月に僕は胸を張って答えた。

「もちろんあるよ。特にこの三つはランキングトップ3に君臨するんだ」

「ならこれは?」

 結月は残りの二品を指差し更に聞いてくる。

「ピザは今の気分だったから、それは期間限定だったから……」

 僕の段々と小声になっていく返答に結月は呆れるかと思いきや、僕なりの楽しさを見つけていることに少し微笑んでくれてもいた。

 二時間半ほどあった映画を結月は思う存分楽しみ、僕はランチタイムとして違った意味で楽しんでいた。

 だが心地良い満腹感も束の間、シアター内を出てからすぐに結月から咎められることになる。

「ちょっと!食べ終わった直後からずっと寝てたでしょ?」

 バレてないと思っていたが、やはり真横で寝ている分には隠しようもない。

 全く内容を頭に留めていなかった僕は、一言も言い訳さえ出来ずに素直に謝罪する。

「ごめんなさい……」

 結月は頬を膨らませ多少拗ねてもいたが、次はちゃんと寝ずに見るという約束を交わした後に許してくれた。

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