表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/150

Uranus(7月24日)

 そこから一時間ほどが経ち、雫星は何かを思い出したように立ち上がる。

「そうだ。花火の前に着替えておかなきゃいけないんだった」

「え?今から着替えるの?別にこのままでも良いんじゃない?」

「本気で言ってる?今の格好よく見てよ」

「Tシャツにジーパン……」

「可愛いと思う?」

「可愛いっていうか、まぁ無難かなって感じだけど」

「でしょ?」

「でも僕は……」

 そう言って無難そのものの格好をしていた自分の服に目を遣ると、雫星は小さく笑って言った。

「陽はいいの。でも私は今日のために準備してたから!

それじゃあ着替えるから、ちょっと待ってて」

 雫星は天井から垂れ下がるカーテンを閉め、僕はベッド近くにあった椅子ごと一歩後ろに引いてその場で座り直す。

 少しして、雫星が勢い良くカーテンを開ける。

「じゃーん!」

 豪快にカーテンを開けたかと思えば、その行動には見合わない清楚なワンピース姿で現れる。

「どう?」

「うん、結月たちが喜びそうだね」

 多分一年前と同じ感想を述べているのだろうと自覚していた。

 けど雫星は満足気にクスッと口角を上げて言う。

「実はこれ、結月が選んでくれたんだ。私のお気に入りなの」

 嬉しそうに雫星がスカートの裾を広げた時、僕と雫星、二人のスマホの通知音が同時に鳴った。

 雫星は近くに置いていたスマホを手に取り、そのメッセージに目を向ける。

「あっ準備出来たって!」

「ならそろそろ行こっか」

 そうしてまだ夜にもならない時間から僕たちは例の公園へと向かった。




 公園に着くと、明るいうちから三人は顔を赤くしながら右に左に忙しなく動いていた。

「何この量。」

 着いて早々、僕はその量にドン引きをする。

「凄いだろ?結構かかったけどな」

 宙斗は小さくマネーポーズを作りながら、僕の傍で痛手とでも言うようにボソッと呟いた。

 それでも今年は去年以上にという思いからか、それを実現出来たことに誇らし気でもありそうだった。

「あっちなみにお金は後で請求するからね」

 その僕と宙斗の前を通りすがりに火ノ川がこれまたボソッと言う。

 直後に同情するかのような顔を向けてくる宙斗に、一体その額はいくらだったのかと身震いがした。

 そんな中で雫星は結月としゃがみながら色々とある種類の花火の説明をされていた。

 そこに僕も近付き、しゃがみ込む二人の頭上から花火を見物する。

「花火ってこんなに種類あったんだな」

「そうだよ。これは煙が出て、これは蛇みたいに動くの!」

「ここに全部集合してるレベルじゃないか?」

「かもね」

 得意気に話す結月に僕は聞く。

「けどこんな量、今日一日で出来るか?どうするつもりだよ」

「そりゃあ徹夜してでもするよ!だって私たちは明日も一日お休みなんだし!」

 気楽そうに話す結月に、僕は思わずげんなりする。

「僕にとってはそれは学校だけであって、バイトに関しては明日なんか朝番だよ。」

 けれどその嘆きはまるで無かったかのような扱いを受けてしまう。

「っていうか店の在庫分全部買い占めたのか?近所の子供がみんな泣き出すんじゃないか?」

 僕には新たな心配が頭を過る。

 でも僕の後を追うように付いて来た宙斗が結月同様、得意気に答えた。

「大丈夫だ!それも考えてちゃんと一つずつは在庫も残してきたぞ!」

 あまりにも楽観的な回答に僕はため息が出ると同時に、後々のことを考えると気落ちしそうだったが、そんな時間さえもないと一刻も早く始めることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ