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Uranus(7月24日)

 7月24日の今日。僕たちは事前に全員が希望休を取り、朝早くから雫星の病室へと集まっていた。

 その理由は一年前の約束を果たすためであり、同じ日の今日、僕たちは同じ場所で今年も五人だけの花火をすることを決めていた。

「去年以上に盛大にしようね」

「店に売ってるの全部買い占めようぜ!」

 結月と宙斗は朝からハイテンションだった。

 僕はその会話を耳にしつつ、今こうして当たり前のように五人全員でここに居れることを心のどこかで不安に思っていたこともあったからか、自分でも自然と笑みが溢れていることを自覚していた。

 だがそんな僕に対し火ノ川からの一方的な視線を感じる。

「何?」

 僕は不気味なその視線に眉間に皺を寄せながら聞いてみる。

「いや。珍しいなと思って」

 フッと笑いながら言う火ノ川だったが、そんな火ノ川もいつも以上に笑顔が多かったことに僕だってちゃんと気付いていた。



 昼を回り、結月、宙斗、火ノ川の三人は花火の調達に僕と雫星を残して出掛けて行った。

 出掛ける前には今年も誰が花火を買いに行くのか病室で少し話し合ったりもした。けど既に僕と雫星以外の三人の中では決まっていたことだったらしく、その場で知ることになった僕は訳を聞いた。

 すると結月は雫星に向け笑顔で言った。

『雫星にはどんな花火があるか楽しみに待っていて欲しいんだ』

 その理由に雫星は納得していたが、僕にとっては去年に続き自分だけがその輪に入れていない理由の方が気になるところだった。

『まだ宙斗の方が役に立つから』

 そんな僕の心の内を悟りでもしたのか、結月の代わりに火ノ川が答えてくれた。

 ただ火ノ川の言葉で自慢気に笑い出す宙斗を横目に僕は複雑な気持ちになった。

『それじゃあ後でね』

 そう言って手を振って部屋を出る三人に、僕とは違い雫星だけは何の気掛かりもなさそうに笑顔で手を振っていた。




 二人になり、いつも通りの会話を重ねながら僕は空気でも吸おうと締め切っていた窓を開けに立ち上がる。するとスマホを片手に雫星が言った。

「2026年5月18日」

 突如言われた日付に、僕は何の感情もなく聞き返す。

「何それ」

「この日が結婚するのに一番良い日なんだって」

「へぇーそうなんだ。」

 僕が興味無さげに返事をすると、雫星は一瞬拗ねたような顔をしたがすぐにまた嬉しそうな顔になって話し出す。

「結月にも教えたんだ。

いつか誰かと結婚するなら、そういうことだって知ってた方がいいこともあるでしょ?」

 けれどそれは有るか無いかも分からない妄想に過ぎないと思い、特に返す言葉も無く僕は静かに窓を開けていた。

 すると雫星は体の向きをくるっと変え、僕の方に向ける。

「陽、聞いてる?」

 僕はそれに対し穏やかな風に吹かれながら窓の外に向かって応えた。

「うん聞いてるよ」

「本当に?じゃあ私が言った日はいつだった?」

 そんな僕の応え方が気に食わなかったのか、雫星は少しムッとした顔で問い詰めるように聞いてくる。

「えっと……」

 さすがに曖昧な答えじゃ許されないと、さっき聞いたはずの日付を必死に思い出そうとするが、一向に出てきそうにはなく焦って苦笑いだけ浮かべてしまう。

 そんな僕に痺れを切らしたのか、雫星はまた拗ねたような顔をしながら僕に念押しする。

「もう。2026年の5月18日!ちゃんと覚えててよね!」

 どうしてそこまでしつこく言ってくるのか理解は出来なかったが、雫星がそこまで言うのならと気乗りはしないが返事はする。

「分かったよ。なら頭の片隅には入れておくよ」

 だがそんな生返事ではいけなかったのか、何も言わずに雫星はぷいっとただ僕から顔を背けていた。

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