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Uranus(6月18日)

 暖かかった気温は徐々に蒸し暑くなり、六月の中旬を迎えた頃には世は梅雨の時期へと突入していた。

 そんな最近は悪戯のように雨模様ばかりで、今日は学校もない日曜日であり、四人全員の休みが被った特別な一日だというのに、病室に集まった僕たちは虚しい気持ちで窓に滴る雨に目を遣っていた。

 でも落ち込む僕たちとは違い雫星は明るかった。

「雨が降るか降らないかは空次第。私たちじゃどうにも出来ないから待つしかないね。

それに私は雨の匂いも好きだよ。だから今日みたいな日も嫌いじゃない」

 前向きな雫星の発言を前にしても、僕はこの一日さえも無駄にはしたくはないという本音を隠せずにいた。

 今日が雨だったとしても、その一日の長さは変わらない。どうせなら明るく終えたいだけ気持ちで言ってくれたのかもしれなかったが、その言葉によって僕たちの顔色が晴れることはなかった。

 けれど少ししてそんな空気を空が悟りでもしてくれたのか、止む気配もなく降り続いていた雨は気付けば曇り模様になっていた。

「とりあえず雨は止んだみたいだし、そんなに外に出たいなら屋上くらいは行けるかもね」

 僕たちの顔色から雫星も察したのか、僕たちにそう提案を持ち掛けてくれる。

「屋上!行こ行こ!

病院の屋上なんて行ったことないもん!」

 その提案を間に受けて急に笑顔になった結月に対し、雫星はちょっと困ったような顔になり言う。

「大した場所じゃないよ?」

「それでもいいの!早く早く!」

 そう言って部屋を駆け出して行った結月を筆頭に、僕たちは屋上へと向かった。


 いざ言われた屋上へと着けば、確かに学校の屋上ともまた違った雰囲気があり、雫星の言った通り大した場所とは言い難い所だった。

 着いて早々想定内であったのだろう僕たちの反応に、雫星は少し口角を上げながら一人でパラペットの方まで歩き出し、そこに設けられた柵に顔を乗り出しながら言った。

「大した場所じゃないけど、ここからの景色は好きなんだ」

 僕たちもその景色を目にしようと、雫星の周りに横一列に並ぶ。

 そして実際に目にしてみてその理由が分かった。

「ここら辺は都会みたいに良い場所でもないから、高い建物も少ないんだ。

けどその分、夜になれば夕日は見れるし、星空もよく見えるとこだけは良いところかな」

 嬉しそうに話す雫星の姿は、少し誇らし気にも見える。

「えぇー!夜までいたーい!」

「明日も学校があるでしょ?」

 今は昼を過ぎたところであり、現実味のない結月の願望はすぐに火ノ川に諭されしょんぼりと肩を落としていた。

 そんな結月を皆が微笑ましく見ていると、雫星は真っ直ぐ先の方を指差しながら言った。

「見て!晴れてきた!」

 今さっきまで辺り一面の空が分厚い雲で覆われていたはず。見間違いか偶然だろうと思った中で、僕たちは騙されたように言われた場所に目を向けた。

 すると雫星の言った通り、雲の切れ間から一筋の光が差し込んでいるのが見える。そしてその光が目の前に広がる景色の全てに差し込んでいく光景を、僕たちは固唾を飲みながら見守った。

 まるで御伽話のような光景は、雨模様から始まっていたはずの天気を晴れ模様にまで変えてくれていた。

「やっぱり神様はいるんだよ!」

 そう言って嬉しそうに身を乗り出す結月を、火ノ川は母親のような態度で引き留める。

「危ないよ」

 そのやり取りの最中で、雫星は晴れた先の空を一点静かに見つめていた。

 明るい眼差しで見つめる雫星の姿を前に、僕はまた考えていた。

 もし今の姿も神様が見ているのだとしたら、神様は僕のことをどう思っているのだろう。

 僕は気付いてしまったあの日からずっと、密かな罪悪感にも見舞われていた。

 自分の気持ちを正直に伝えてくれた雫星に対し、自分の正直な気持ちに背を向ける僕はもしかしたら罪に等しいものなのかもしれない。

 雫星が笑顔を見せる度、安心すると同時に不安にもなる。

 どう思われているのか。どうするべきが正しいのか。

 想像出来そうで出来ないその結末に、僕は次第に恐怖を抱くようにもなっていた。

「ありがとー」

 そんな罪の意識に駆られる僕の傍では、宙斗から始まりみんながそうやって目の前の光景へと叫んでいる。

 僕は一歩下がってその様子を見ながら、一人みんなと同じ気持ちになることが到底出来ずにいた。

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