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Uranus(5月22日)

 また一人になったかと思えば、直後に戻って来た宙斗が教室の扉を開ける。

 宙斗は僕が座る前の席に腰を掛けると、後ろ向きに座りながら僕に聞いた。

「何であんなこと言ったんだよ」

「分からない。」

 すると気怠そうな溜め息を一つついた後、手を頭の後ろに回し宙斗は言った。

「でもお前ら二人は似てるよな」

「はっ?」

「どっちも雫星のためを思って言ってる。それは確かだからな」

「いや、それで僕と火ノ川が似てるって……」

「似てる。似過ぎてる!

ってことは陽が女だったら、陽と俺が付き合う可能性もあったってわけだな」

「想像するだけで吐き気がするわ」

 どこか本気でもありそうな宙斗に、僕は完全に否定をする。

 でも気にすることなく宙斗はいつものテンションで言った。

「俺は馬鹿だからさ。

俺よりもずっと頭が良くて器用な二人が好きで、仲良くしたいと思ったわけだし」

「お前はそれでいいのか?」

 あまりにも潔く認める姿勢に僕は聞く。

「いいぜ、馬鹿だからな!」

「お前はそういうやつだよな」

 その答えを聞き、だからこんな僕でも仲良くなれた経緯を思い出していた。

「昔言われたことがあるんだ。

馬鹿は余計なこと考えないから、頭が良い人よりもすぐに行動に移れるってさ。

つまりこの中で何かあった時に一番に行動出来るのは俺ってこと!」

「それはそうかもな」

「陽はどう思ってるか知らないけど、流和にも俺や陽にはない良いところがいっぱいあるんだぜ」

「だと思うよ。

そんな火ノ川とこんな風になったってことは、僕には良いところなんてないんだな。きっと……」

 火ノ川の気持ちを理解出来ないのも、僕の素質自体が悪いのかもしれない。そう思って口に出したが、宙斗は真剣な眼差しではっきりと言う。

「そんなことはない!馬鹿でもそれだけは俺にも分かる!」

「何でだよ」

「証明とかは出来ないけど、二人とも人思いで優しい人だ。

俺はそんな二人が好きで一緒にいたいって思ったわけだし。

流和と陽、俺にはお互い同じことを考えてるような気もするぜ。

口に出さなくても思ってることが伝わるって、最高なことなんじゃねぇの?」

「そうなのか?」

「おうよ!俺は自分の気持ち話すのも苦手だしさ、人の考えてること読み取る方がもっと苦手だ。

だからずっと二人見てると羨ましいって思ってよ!」

 僕と火ノ川の関係性はそれこそが引き金になっていて、敢えて距離を取っていたところもあったかもしれない。

 けれど宙斗の考え方を聞き、そういう考え方があったことを初めて知った。

「でも今は火ノ川が何であんな事を言ったのかが分からない……」

「それは俺もだけど、どっちも間違ってない気はするから、どっちも否定することはないんじゃないかなって。

それに流和と陽なら、きっといつか何も言わなくても分かる日が来るって!焦る必要は無い!!」

「何だよそれ」

 僕の肩に手を置いて言う宙斗の顔があまりにも凛々しかったため、僕は思わず声を出して笑ってしまった。

 釣られて宙斗も吹き出し、気付けば僕の苛立っていた気持ちはすっかり無くなっていた。



 気持ちを切り替えた僕は、宙斗から火ノ川が屋上にいると聞き屋上へと向かった。

 屋上に着けば、そこには結月と火ノ川の姿があった。

 僕を見て気まずそうにしている火ノ川に対し、僕は頭を下げて言った。

「さっきはごめん……」

 それを聞くだけで終わろうとした火ノ川に、結月が咳払いでアピールをする。

 その咳払いに目を泳がせた火ノ川は、恥ずかしそうにしながらボソッと言う。

「別に……」

 そんな僕たちのやり取りを見て、満面の笑みを浮かべた結月は嬉しそうに言った。

「これで仲直りだね!」

 仲直り……そういえば火ノ川とはどことなくぎこちない関係であったが、それを口に出して揉めたことなんてなかった。

 内海先生には無駄だと言われたこの時間が、僕には少し火ノ川のことを理解してみても良いのかもしれない。

 初めてそう思うことが出来ていた時間にもなっていた。

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