Uranus(3月28日〜4月1日)
三学期も終わり、僕たちは忙しなくも最高の思い出と共に高校二年を終えていた。
気付けば世は春の暖かさに包まれていて、束の間の春休みを迎えた。
今日もバイト終わりに病室へ向かうと、僕以外の四人は当たり前のように病院の一角で既に騒がしく過ごしている。
その話し声の陰でひっそりと点けられていたテレビでは、開花宣言を迎え数日経った桜の木々が映し出されていた。
「桜がもうすぐで満開になるって!」
僕の視線からそのニュースを見たのか、嬉しそうに結月がそう言い出した。続けてこうも言う。
「ねぇねぇ見に行こうよ!」
その言葉に僕はふと思い出す。
それはまだ僕が幼かった頃、この時期になると家族で毎年お花見をするのが恒例の行事となっていた。
「それなら良いところ知ってるけど。」
僕の言葉に、結月や火ノ川はまだ聞いてもいないのにも関わらず、早くもそこに決定と示し合わせたような顔をしている。
最近ではめっきり行かなくはなっていた僕も桜は嫌いではない。
ただお花見というイベント以上に、このメンバーでどこかへ出掛けるということが好きでもあった。
そして迎えた四月の初めの日。僕たちは桜を見に午前中から有名スポットの公園へ電車を乗り継いで行くことになった。
だが今はどこも春休み真っ只中であり、今日は快晴という天気にも恵まれていた。そのため電車の中は老若男女で溢れ、満員に近い状態だった。
そんな中でも僅かに空いている席を見つけた僕たちは、猛ダッシュでその椅子目掛けて乗り込んだが、同じタイミングで杖を突くおばあちゃんを目にし、席に座る寸前で「どうぞ」と一声譲ることにする。
おばあちゃんは満面の笑みになりお礼を言うと、ゆっくりその席へ腰を下ろしていた。
そのまま走り出した電車と同時におばあちゃんは僕たちに言った。
「良い行いっていうのは回り回るものなの。
きっといつかあなたたちも私と同じ歳になった時、同じことをしてもらえる日が来るはずよ」
本来なら嬉しい言葉として受け取れただろう。
ただ場合によっては、何の悪気もないおばあちゃんの言葉が悪意にも聞こえてしまうことだってある。
けれど一緒に聞いていた雫星は笑顔になって僕たちに言った。
「私はおばあちゃんにならないよ。羨ましいでしょ?」
耳が遠いのか、おばあちゃんだけは終始ニコニコと優しい笑みを浮かべていた。




