Saturn(2月11日)
二月に入り、抜けなかった冬休みモードは短くて長いような三学期が始まったことを実感させる。
今日はその中でも数少ない休日であり、火ノ川と宙斗は昼過ぎまで仕事が入っているため遅れて来るとのことだった。
僕と結月は一日休日であったため、二人より先に病室へと集合していた。
スマホ越しに見える女子二人はいつものようにキャッキャと話しているかと思えば、雫星がふと立ち上がって言う。
「なんだか喉乾いちゃった。
自販機に飲み物買いに行きたいから、結月ついてきてくれない?」
「うん、いいよ」
「陽は何か買ってきて欲しいものある?」
「いや、今はいいかな」
「そっか。じゃあそういうことだから、私の部屋のお留守番よろしくね」
そう言って二人は仲良く病室を出て行った。
お留守番と言われても、ただここで待っていろということだろう。僕はスマホを片手にその時を過ごしていた。
しばらくして帰ってきたかと思えば、そこには雫星一人の姿しかなかった。
「あれ?結月は?」
「うん、その前にちょっと話しておきたいことがあってね……」
どこかさっきまでの雫星とは違う雰囲気に、僕は何だろうと思った。
「ずっと好きだったんだ。陽のこと……」
「えっ?あの、それは……」
急なことに僕は動揺を隠せなかったが、雫星はいたずらっ子の様な顔で僕に小声で言った。
「振って。結月が見てる」
そう言われ、視線を扉の外へ向けてみれば、確かにチラチラとこちらを覗いている結月の姿があった。
「ごめん。その……」
ただ現状に理解が追いつくことはなく、僕がそんな曖昧な言葉を放った途端、雫星は言った。
「うん、分かってる」
そのまま小走りで病室を出て行ってしまった。
少しして、陰に隠れていた結月がひっそりと顔を覗かせて言う。
「陽……?」
その後ゆっくりと病室の中へと入ってきた結月は僕の目の前で立ち止まり、聞きづらそうな顔をしながら僕に聞く。
「雫星のこと、どうして振ったの……?」
その言葉に僕は衝撃を受けた。
「いや、別に振ったつもりなんか……どういう意味か分からず言っただけで……」
状況を理解するのに必死だった時、廊下からは軽快な足音が聞こえた。
「よっお待たせ!って……」
それは予定通り遅れて来た宙斗の姿だったが、僕や結月の重い空気感に宙斗は片手を上げたまま固まっていた。
「どうしたんだよ。何かあったのか?」
宙斗がそう聞くと、結月は隠せない気まずさからなのか、宙斗に目も合わせることなく言った。
「ごめん、私ちょっと一人になりたいから……」
そう言って結月は駆け足で病室を出て行ってしまった。
きょとんとした顔で病室を出て行く結月の姿を目で追った宙斗は、その後僕の方を見て聞く。
「俺なんかまずいこと言ったか?」
その不安そうな顔に、僕は少し正気を戻して言えた。
「いいや」
そして僕はそんな宙斗に今あったことの全てを話し相談した。




