Saturn(1月9日)
そしてサービスエリアなどを経由した後、僕たちは無事に雪の広場へと辿り着いた。
「スキー!ソリにスケートだぁ!」
着いて早々、宙斗はここで出来る全ての事を口に出していた。
その場で少し悩んだ末、僕たちは最初にスキーをすることになったのだが、僕には気掛かりなこともあった。
「スキーなんて誰も出来ないだろ?」
それは僕も含めての話だが、結月や宙斗、火ノ川の三人も雪を目にしただけで興奮している上、三人からこれまでにスキーという単語さえも聞いたことはない。
それから学校にさえなかなか来れていなかった雫星に関しては以ての外だろう。
「俺は出来るけど?」
ただその中で唯一内海先生だけがここぞとばかりにドヤ顔をしていた。
「何なら俺がレクチャーしてやろうか?」
そう言って誰も頼んでいないのにも関わらず、豪快な滑りを先生の気が済むまで見せびらかされたが、せっかくここまで来たのなら滑れるようになってみたいのも正直な気持ちである。
多少納得がいかない気持ちを抑え、内海先生から軽くレクチャーを受けた結果、宙斗だけは人並みに滑れるようになっていた。
滑れるようになり余裕が出来た宙斗は、火ノ川に滑り方のコツを教え始める。そしてそれは宙斗と火ノ川が同時に滑り出した時だった。
「流和!」
僕たちはその宙斗の声で二人が居る方に目を向ける。そこには転けたのか、倒れ込んでいる火ノ川を必死の顔で宙斗が支えていた。
でも見たところ、どうやら大したことはなさそうだ。そう分かった瞬間、僕は冷めた気持ちになり淡々と言った。
「そんな堂々とイチャイチャすんなよ。
ここは二人きりにして、僕たちはソリの方にでも行くか」
そのまま二人を置いて他全員が歩き出すと、火ノ川はともかく宙斗は焦りを見せていた。
「おい、やめろー!気まずくなるだろ〜!」
そんな宙斗の叫びが遠くから聞こえてはきたが、それで僕たちは足を止めることはなかった。
僕たちがソリの方へと着くと、気まずいというのは本当だったのか、一歩遅れてすぐに二人も合流していた。
スキーと同様、ソリも何往復か楽しんだ後、僕たちは少し開けた場所に出る。
「ねぇ雫星、見て」
そこで結月はそう言うと、目の前に白い息をそっと吐き出した。
「おっ俺も俺も」
それに続けて宙斗も、タバコに見立てて火ノ川も白い息を吐き出していた。
そんな三人を見て、雫星も嬉しそうに真似をしていたが、雫星から吐き出された白い息を見た時、僕はそこに三人とは違う何かを感じてしまっていた。
雫星は僕たちと同じように、確かに今ここに生きている。
僕らと何ら変わりはないはず。なのにその白さだけが特別のように感じて、今にも消えていくその色を逃したくないと思ってしまった。
「えっ?」
気付けば僕はその白さを掴もうと無意識のうちに手を伸ばしていた。
その行動に雫星は驚いたように僕を見ている。
「ちょっと何?雫星の息盗もうとしてる!」
そしてそれを見た結月は僕のことを指差し、まるで犯行現場でも見たかのようなテンションで叫んでいる。
「いや、別にこれはっ……」
「キモい」
それに続けて放たれた火ノ川の本音であろうそれに、僕は何も言えなくなってしまった。
「気持ちは分かるぜ!」
そう言って慰めてくる宙斗だったが、これっぽっちも嬉しく思えないのはどうしてだろう。
そんなつもりでは一切なかった僕を犯罪者扱いしないでほしかったが、そんな中でも雫星は笑顔になって言ってくれる。
「私の息だけ違って見えた?」
雫星は僕の行動の意味を分かっているみたいだった。
けど続けて雫星は言った。
「でも私も陽の息だけ違って見えるよ」
「それってどういう……」
僕がそう聞こうとした時、それだけを言い残して雫星はすぐに先に行ってしまっていた結月たちの元へと小走りで向かっていた。
まぁいっか。特に深い意味はないと思い、僕はこれを改めて聞くことはなかった。




