Saturn(12月26日)
「なぁすごくない?まだ体ポカポカしてるわー!」
「温泉効果ってやつだろ」
上がってからもしばらく続く効果に、宙斗は人の苦労も知らずに感動していた。
結局しばらく考えようと答えは出なかった。まぁこの調子なら宙斗にまたあの質問をされることもないのだろう。考えるだけ無駄だと思い、そこで終止符を打つことにした。
僕たちが温泉を出ると、少し遅れて出てきた三人はさっきまで違う様子に見えた。
「何かあったのか?」
コソッと火ノ川に聞くと、同じく火ノ川も僕にコソッと言った。
「深い話ってやつ?」
その意味はよく分からなかったが、あまり経験しないことをすれば、お互いしみじみと考えたくなる瞬間もあるのかもしれないと汲み取っていた。
部屋に戻れば、宙斗と火ノ川が二人してお茶を淹れてくれる。
どうやら火ノ川も、結月と雫星に宙斗同様のセリフを吐いていたらしい。
不本意に共同作業になったことに火ノ川はピリつき、宙斗はオドオドしていた。だが傍から見れば決して口には出せないものの、やはり相性が良くお似合いの二人だと思ってしまう。
見る見るうちに注がれたお茶を熱々の状態で一口飲む。一口飲めば、次々に美味しいとの声が広がる。
料理もそうだったが、お茶一つでさえも友達が作ってくれたとは思えない美味しさは新たな発見だった。
これもどれも雫星がいたからなのだとしたら、雫星にどう感謝を述べればいいのだろう。その言葉が見つかるまではと、今は何も言えなかった。
多分このお茶の味を忘れることはない。四六時中覚えることが出来なくなったとしても、またこの味を口にした時、きっと僕はこの旅行の日々を鮮明に思い出す。
それがいつになるのかは分からない。その時の僕がどんな日々を過ごし、誰と一緒にいられるのかも……
湯呑みの中に映っていた顔は切なかった。そんな自分に明るい未来を願う気持ちを残し、念願だった京都旅行に終わりを告げた。




