Saturn(12月26日)
その後僕たちが向かったのは、京都でも有名な観光地である神社だった。そこで僕たちはそれぞれが手を合わせ雫星のことを願い、色違いの健康御守りをお揃いで拝受する。
そしてそこでの僕たちのもう一つのお目当てと言われれば、ずらりと並ぶ屋台だった。
まるで季節外れのお祭りのような雰囲気に、心はまだまだ幼い僕たちは即座に四方八方へと散らばっていく。
僕はとりあえず人の少ない方へと真っ直ぐ歩いて行くと、途中フルーツ飴のお店で並んでいた結月と火ノ川に遭遇した。どうやらウキウキで走り出した結月を心配して火ノ川はその後をすぐに追い掛けていたらしい。
「あれ?一人?」
僕に気付いた火ノ川のその言葉に、後ろを振り返れば誰もいない。きっと雫星も僕の傍を歩いていると思っていたが、そうではなかったみたいだ。
こんな人混みの中、一体どこに行ってしまったのか。僕は来た道を戻り、目線を左右に振り分けながら雫星を探すことにする。
普段とは違って歩き辛い着物姿で探すのはなかなかに体力を奪われることではあったが、人混みを掻き分けた先に同じく着物姿でキョロキョロと辺りを見回している雫星は見つけやすかった。
僕が雫星の名を呼ぶと、雫星はその先にいた僕を見てニッコリと微笑んでいた。
「もうみんなあっちに行ってるよ」
僕がそう言うと雫星は一回頷き、僕と一緒に歩き出すが、人混みが多くまたも逸れそうになるのではと思った。なので雫星の腕を掴み、場所を知っている僕がそこまで連れていってあげることにする。
「こっちこっち」
多くの人混みを掻き分けた先で、火ノ川の声が聞こえる。視線を向ければ池の隣にあるベンチの所から僕たちを手招きしていた。
隣の結月はすでに幸せそうに買ったばかりのいちご飴を頬張っている。
「良かった。雫星どこに行ってたの?」
「ごめんね。お店見てたら逸れちゃってたみたい」
心配する火ノ川に雫星は恥ずかしそうに弁明していた。
「あっそういえば宙斗はいなかった?」
雫星の次いでと言わんばかりの聞き方をする火ノ川に、僕は答える。
「そういえば見なかったな。まぁこれだけの人だし、見逃した可能性も十分にあるけど」
「また何か買ってんのかな。」
宙斗の熱中行動には僕たちも慣れている。大抵は時間が経てばまたフラっと現れたりもするのだが、この人混みでは逸れたっきり会えそうにもない。
火ノ川は大きな溜め息を一つ吐くと、重い腰を上げながら言う。
「探しに行ってくる」
「あっ私も一緒に行く!」
ちょうど食べ終えた結月も、その火ノ川に続いて言った。
そして入れ違いにベンチに腰を掛けた雫星に結月は買ったばかりのいちご飴を差し出す。
「雫星の分も買っといたから」
そう言うと、二人はそのまま宙斗探しへと旅立っていった。
少しして、今度は雫星がもらった飴を食べ終わる頃に宙斗が現れる。
何も知らない宙斗に火ノ川たちのことを聞かれたので、宙斗を探しに行った経緯を伝えると、それをあまり気にもしていなさそうな宙斗は雫星が食べていた飴を見てどこで売っていたのかを尋ねている。
僕が代わりに答えると、また宙斗はそそくさとその店へ直行してしまったので、僕は面倒くさいことにならないよう火ノ川にメールで伝えておいた。
しばらくして、色とりどりのフルーツ飴を持った三人が帰宅する。
両手に花ないしは飴な結月はともかく、火ノ川は完全にご立腹な様子で僕に言う。
「無駄な時間を過ごしたわ」
苛立ちが籠ったその言葉に、僕は余計な荒波は立てぬよう無言を貫いた。
ある程度屋台全体を堪能すると、慣れない着物姿でまた京都の街に繰り出してはみるが、そんな着物姿に合わせて履いていた草履に気付けば全員が靴擦れを起こしている。
故に最後に寄りたかった抹茶スイーツだけは逃すことなく食し、僕たちは早めに旅館へと戻った。




