表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/150

Saturn(12月25日)

 旅館に着くとすぐさま部屋に大荷物を運び込み、二人はある場所へと向かう。

「キッチン?」

 そう言って首を傾げた雫星だが、旅館をここにしたのはそれが理由だった。

 キッチンに入ると持って来た調理器具と、途中近くのスーパーに寄って買ってきた食材を取り出し料理が始まる。その姿を見て、夕食の時間も近付き僕のお腹も共鳴するように鳴り出していた。

 栞では今の時刻は夕食の時間とだけ書き込まれており、サプライズにしたかったのを理由にその詳しい内容までは書かれてはいなかった。

 それでも最初は驚いていた雫星も、その状況に何となく察したのか、理由も聞かず二人の料理姿を色んな角度から邪魔にならないよう興味津々な姿で見守っていた。

 作るのに熱中していた二人はその雫星の視線に気付き、自慢気に料理の手際を見せびらかしている。今日までバイトで積み上げてきた努力も相俟ってか、特に宙斗の料理の腕前や、火ノ川の盛り付け技術が際立っていた。

 よく喧嘩のような言い合いも目にするが、結局二人の相性が申し分ないのは一目瞭然だ。

 しばらくして完成した料理が机の上に並べられる。

 雫星は目を輝かせながらその料理の全てに視線を注いでいた。

「修学旅行にはなかった特別フルコースなんだから」

 火ノ川は雫星のその姿を見て確信が持てたのか、まだ食べてもいないのに自らハードルを上げるような台詞を吐いていた。

 けれどそれが修学旅行とは違って特別なんだと、雫星だけは知らない真実をひっそりと伝えているようにも見える。

 僕と結月はさすがにこの場に気を使い、一口目は雫星に譲ろうと一旦持ってしまった箸を置く。

 全員が見守る中、一口目を口一杯に頬張った雫星は感想を述べずとも、顔でその美味しさを表現していた。それを見て火ノ川や宙斗のことなのに、僕や結月も顔を見合わせ自分のことのように顔が綻んでしまう。

 続けて僕たちも一口ずつ食べ始めると、そこからはノンストップでお腹が満たされるまで無我夢中で食べ続けた。空腹が限界まで来ていたせいか、見る見るうちに空になった食器だけが並んでいく。

 手を合わせ「ごちそうさま」と声を揃えると、今度は五人で食器の片付けが始まる。

「雫星に手料理ずっと食べてもらいたかったんだ。夢が叶って良かった」

 流しで食器を洗っていた際、隣の火ノ川が幸せそうに微笑みながらボソっと言った。普段あまり僕にはそんな姿を見せることもないため、余程嬉しかったのだろうと僕は感じた。敢えて返事をすることはなかったが、その後は火ノ川と同じ表情で残りのお皿を全て洗い上げていたのだと思う。

 腹が膨れれば次は都合の良いように眠くなる。全て片付け終わった頃には、一日の疲れがどっと出ていた。

 部屋は男女で別々に予約してあるため、それからは二手に分かれ、すぐに寝る用意を済ませた僕たちは明日に備え幸せな気持ちで就寝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ