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Saturn(12月23日〜25日)

 期末テストから数週間後、僕たちは冬休みに入った。

 それは僕たちにとって待ちに待った休みであり、旅の栞はもうとっくの前に出来上がっている。

 冬休みに入ると同時にそれに向けた準備も済ませていた僕たちは、その二日後に目的地である京都へ向け出発をした。

 修学旅行では三泊四日という期間だったが、今回は雫星の体調面も考慮し二泊三日の予定で行くこととなっていた。

 一日減ったところで雫星は変わらず胸を高鳴らせている。それに負けじと僕たちだって減った一日分をも三日間で楽しむ気は十分にある。つまりは少しの時間も無駄にはしたくない。

 なので今回は前回と違って安全策を取り、新幹線での移動は事前に指定席を予約していた。そのため大きな問題は起きるはずも無かったのだが、強いて言えば結月と宙斗が多少の遅刻を多少してきたが為に、大荷物で小走りしながら駅まで向かう羽目になっていた。

 そこで無駄に使うことになってしまった体力を補うように、僕たちは新幹線での移動時間はほとんどを寝て過ごしていた。

 気付けばあっという間に時は経ち、目的地である京都に足を踏み入れている。

「着いたー!京都ー!!」

 つい最近に来たばかりだというのに、その時以上にテンションが上がっている結月を見て、やっと全員で来れたのだなと実感をする。

 一日目のスケジュールは主に観光であり、雫星は京都にずらりとある歴史的建造物を見ることも楽しみにしていた。

 駅のロッカーにそれぞれ荷物だけ預けた後、僕たちはその場所へと向かう。

「あったよ!」

 そう言って結月が指を差した先にあったのは、京都の建物を優雅に観光することが出来る人力車だった。

 これは修学旅行でも体験することはなかったのだが、「京都といえばこれでしょ!」という火ノ川の一言によって今回の旅行に飛び入り参加した。

 前回の修学旅行で見掛けたのがきっかけになったのか、一度乗ってみたかったのだろう。けれどそれは僕たちも同じであったので、火ノ川の提案に内心喜んでもいた。

 人力車は二人乗りで、最初に火ノ川と宙斗が乗り込む。その次に結月と雫星が。その光景を何気なく目の当たりにしていた時、謎のデジャヴ感が僕を襲った。

「ではどうぞ」

 そう言って俥夫さんに促され、気付けば僕だけは一人乗りという贅沢な状態になっていた。少し揺られた先で、そのデジャヴの正体を思い出す。この感覚が正しければ、隣には内海先生が居るはずだったのだろう。

 でも案外僕は一人というのも変に目立つことがない限り嫌いではない。初めての人力車を一人で満喫出来ることに悪い気はしなかった。

 僕が乗る人力車の目の前には、同じように揺られている結月と雫星の姿が見える。相変わらず京都の景色を目にキャッキャと楽しそうに騒いでいるが、急にスピードが上がったことでその声は更に大きさを増している。

「それではこちらもスピード上げますよ!」

 前の人力車に続き、僕が乗っている人力車も速度が上がる。前の二人はそれさえも共有するように楽しんでいるが、一方で僕は一人で声を上げ楽しむわけにもいかず、ポーカーフェイスでしか入れないことで、一人で乗る楽しさと虚しさの両方を感じていた。

 ある程度の距離を人力車で移動し、その後は雫星の意向で修学旅行と同じ道筋を歩いて回ることになっていた。やはり雫星は修学旅行に行けなかったことを気にしているのだろう。けれどこの道筋も二度目となる僕たちにとって、それは修学旅行とはまた異なるものでもあった。

 教師の監視もなく、団体行動で誰かに合わせることもない。この旅行を修学旅行として楽しんでいるのであろう雫星には、敢えてそれを伝えることはしないが、同じ内容でも極端に違う今を僕たちは純粋に楽しんでいた。

 また家に戻れば忙しい日々が始まってしまう。だから今が少しでも長く続いて欲しいと現実逃避もしている。不思議なことに、それは修学旅行の時とはまるで真逆の感想だった。

 気付けば夕方になり、辺りは全て夕焼けに色に染まっている。

 僕たちは駅のロッカーに預けていた荷物を取り出すと、修学旅行の時とはまた別の旅館に向かった。 

 修学旅行の際も似たような旅館だったのにも関わらず、そことは別の場所を予約したのには訳があった。火ノ川はそれを特別な意味があると雫星に説明していたが、何も知らない雫星は未だ何のことか分かる気配も無い。

 ロッカーから取り出した荷物は、僕たちと比べて火ノ川と宙斗の荷物だけやけに量が多かった。

「そういえば二人とも重そうだけど、何が入っているの?」

 行きは急いで新幹線に乗り、その後すぐにロッカーに預けていたため聞く機会もなかったが、今になって気付いた雫星が心配そうに二人に聞いている。

 聞かれた二人は、揃いも揃ってよくぞ聞いてくれたとでも言わんばかりの顔をしていたが、「雫星のために用意したの」「後でビッグサプライズが待ってるからさ!」とその顔とは裏腹で、雫星には濁してはっきりと答えることはなかった。

 だが僕や結月は事前に聞いていた内容から、その中身の予想がある程度ついていたため、旅館までは少し持つのを手伝ってあげた。

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