Jupiter(11月14日)
次の月曜日の朝、ホームルームが終わり僕は水族館の日のことを振り返りながら指に嵌めていたリングを眺めていた。
僕たち五人はそれが友情の印と証明するかのように、あの日から肌身離すことなく全員が身に付けている。それは今日という学校の日も変わらないが、未だ教師の誰からも注意をされたことはない。特にその中でも内海先生は気付いた上で雫星も含めたお揃いということを微笑ましくも思っていそうに見える。
結局理由は分からなかったものの、雫星があそこまで大切にしてくれていたことはプレゼントをした身からすれば何よりなことだった。
一時限目のチャイムが鳴り、あっという間に束の間の五分が過ぎていた。リングに見入ってしまっていた僕は、チャイムが鳴り終わる前にと慌てて教科書を取り出すために机の中身を引く。
「げっ」
その瞬間、机の中からチラリと出て来たものに僕が背筋がゾクッとした。
それは僕が黒歴史として二度と見たくないと封印していたはずの幼き頃の写真。だがその悪戯に心当たりはある。
僕は不服顔で二列先の席にいる結月に目を向ける。どんな顔をしているかと思えば、授業中にも関わらずこっちを見てニヤつきながら動画を回している。
それに気付きすらもしないおじいちゃん先生には呆れるしかないが、きっとそれが内海先生であっても違う意味で止めることはないのだろう。
だから僕はその写真を一旦視界に入らない位置に置き、予定通りお目当ての教科書やノートたちを取り出し始まる授業に集中することにした。
「大成功だよ雫星!ほら!」
放課後になり、結月はスキップしながら雫星へ今日の報告をしていた。
例の授業中に撮っていた動画を二人並んで見ている姿は、良い意味でも悪い意味でも雫星が結月に似て来ているのを物語っている。
「おっ何だ何だ?俺も見たい!」「私にも見せてよ」
そう言ってそこに宙斗や火ノ川も参加し、四人の笑い声で僕は馬鹿にされたような不快な気分になっていた。
「でも何でこれがそんなに嫌なの?」
隙を見て結月がまた僕の机から回収していたのか、いつの間にか例の写真は雫星の手元に渡っており、それを翳すようにしながら雫星は聞いている。
「これ、まだ四歳の時の陽が従姉妹のスカートを勝手に着た時の写真なんだ。
でも小学生になった時くらいからこれは黒歴史だって言い始めたの」
「そうなんだ。でも似合ってるよね?」
そう結月に問い掛ける雫星は、結月以上の悪戯っ子に見えてしまう。
「それが尚のこと黒歴史らしいよ」
結月もそれに呼応するような悪い顔で答えた後、写真に目を向けていた雫星を見て微笑みながら言った。
「雫星にそれあげようか?」
「いや、それは僕の写真なんだけど。」
「でも今は私のものでしょ?」
さすがにそれまで黙っていた僕も思わず口を挟んでしまったが、いつからどうしてそうなったのか。結月のしてやったりな顔に僕は呆れて上を向く。
「うん、欲しい」
「いいよ」
この場合どちらを責めるべきなのか。それでもニコニコと幸せそうに笑う二人を見て、そこには嫌な気持ちだけでは片付けられない感情が悔しくもあった。




