Jupiter(11月12日)
「ならお土産コーナー行こうぜ!」
こう見えても宙斗は女子以上にお土産好きであり、どこかへ行けば時間が許す限りいつも無駄なものを幾つか買って帰る癖がある。
僕たちはパンフレットの中に載っているマップでお土産コーナーの位置を確認し、向かおうと一歩を踏み出した時、そこに雫星だけが付いて来ていないのを感じた。
皆が後ろを振り返れば、血色のない顔をした雫星が鞄を漁って立ち尽くしていた。
「どうしたの?」
結月の言葉に一間置いて雫星は震えるような声で答えた。
「指輪…無くしちゃった……」
それは前の旅行の際に僕が買ったリングのことを意味していたらしく、僕はそんなことかと思い、その感情で雫星に伝えようとした。
「それならまた買って(あげる)……」
けどその言葉を全て言い切れないまま、鋭い眼差しで火ノ川に制止されてしまう。僕はその意味が分からず、その意味を理解しようと火ノ川に目を向けた。でもそんな僕のことは置き去りに、火ノ川は雫星の元へと近付き言う。
「雫星、落ち着いて思い出してみて。今日どこに行ったか。どこで外したか」
焦った雫星はその火ノ川の言葉でも落ち着くことが出来ずにいた。
どうしたら良いのかと顔を見合わせた僕たちは、とりあえず今日通った道を同じルートで通ってみることにした。
その道中では落とし物がなかったか、総合案内所やスタッフの人に聞いて回ったが、たった一つの小さなリングが見つかることはなかった。
探し物があまり目立ちづらい大きさ故に、落とし物として届けてもらう前に落ちていることに気づいてもらえるのかどうか。もし気づいたとしてもそれが子供なら、既に自分の所有物として持って帰ってしまっているかもしれない。
その中で他に希望があるとすればと、結月がその場所を口に出す。
「トイレとかは?」
そして女子三人は立ち寄ったトイレへと入って行き、僕と宙斗はそれを外で待っていた。
「あとは何処にあるかな……」
宙斗まで珍しく真面目な顔で考え込んでいるので、僕は決して安くは無かったがもう一度買うくらいなんてことはないのにと考えてしまっていた。
けれど皆があまりにも真剣だったために、念の為思い付いたことを口に出してみることにした。
「さっきのイルカショーを出た直後に気付いただろ?
だから唯一まだ探してないとすればあの席の何処かとか……」
「そこだ!行くぞ!」
僕がまだ言いかけている途中にも関わらず、宙斗の切り替えの早さは凄まじかった。僕はその早さに動揺しながらも、宙斗の後を追うように言われるがまま走っていた。
誰もいなくなったイルカショーの会場は、静寂に包まれていて少し薄暗くも感じる中、僕たちはベンチの下をスマホのライトで照らし、二人で手分けしながら探していく。
少しして、何かライトに反射して光るものを見つけた。僕は手探りでベンチの下へと手を伸ばし、やっとのことで手に触れたそれは、雫星が必死に探していたあのリングだった。
僕たちが探し物を持ってトイレの所まで戻ると、三人はそれを恰も分かっていたかのように待ってくれていた。
「これ……」
僕が雫星にそう言って渡すと、雫星は涙目になって喜んでいる。
「ありがとう……」
そんな雫星を見ても、僕はそこまでして探していた雫星の感情を理解は出来なかった。
僕のその感情は、宙斗に読み取られてしまうくらいには顔に出てしまっていたのか、二人になった時にそっと言われた。
「雫星にとっては、ただのリングじゃないってことだな」
「どういう意味だよ」
「それは俺にも分からねぇけど、お揃いだからとか、そんな理由じゃね?
雫星は俺とお揃いだったことが余程嬉しかったんだろうな。」
そう言って感動している宙斗だったが、それだけは無いと確信していた僕は宙斗に冷たい視線を送っていた。
けれど雫星は見つかったことで安心したのか、涙まで流している。
その後雫星が落ち着いた頃に、宙斗が行きたがっていたお土産コーナーにだけは寄ってあげることにした。そこで宙斗は満足気に散財し、複数の紙袋と共に帰りの電車に揺られていた。




