Jupiter(11月12日)
そして迎えた土曜日、僕たちは指定の場所で待ち合わせをした。
僕は今日も約束の時刻から十分前と余裕を持って着くが、その場所にはまだ誰の姿もなく、雫星がこの場にいなかったことを僕は珍しいと思った。それと同時にふと頭に過るのは、もしかしたら雫星に何かあったのではという不安。その感情が一人の僕を徐々に支配していく中、次にこの場へと足を運んで来たのは火ノ川だった。
「また二番手か。一体何時に着いてるってわけ?」
火ノ川は着いて早々、僕にそんな文句を言っている。
「僕も今さっき着いたところ。
それより雫星がまだ来てないみたいなんだけど、何かあったのかな……」
まだ待ち合わせの時刻にもなっていないのにこんな心配をしてしまうのは変な話でもある。けれど雫星のことになれば、いつもと違う。それだけで心配に値するには十分でもあった。
だが心配する僕とは裏腹に、驚いたように火ノ川は言う。
「聞いてないの?
今日は結月と一緒に準備してから来るって言ってたよ」
火ノ川はそう説明した直後、視線を僕から左へと向けた。
「あっほら」
そう言った火ノ川に釣られ僕も視線を向けてみれば、そこには結月と並んで歩く雫星の姿があった。
優等生の雫星の隣を歩く結月は、五分前ということもあってニコニコと余裕の笑みを浮かべながらこちらへと歩いて来ている。何の懸念もなく手を振り合っている三人を見て、ようやく僕も蚊帳の外で安堵に包まれていた。
そこからは四人にもなり、会話が弾むのは言うまでも無い。気付けば雫星と結月の到着から十五分ほどが経っており、そろそろ置いて行こうかとも思い始めてしまう頃、遠くの方から平謝りする声と共に宙斗が小走りでやって来る。
遅刻常習犯の再来とも言える安定の遅刻ではあったが、これくらいなら許容範囲でもあるため、あまり誰も責めることはなかった。それよりも「早く行こ!」そう言い出す結月に急かされるように次に来た電車へと乗り込んでいた。
電車の席は疎らにしか空いておらず、乗り込んだままの順番で僕は雫星の隣の席に座る。そこから少し離れた席に結月と火ノ川が座り、宙斗は結月と火ノ川の前で吊り革に掴まりながら揺られていた。
走り出した電車の窓にふと目を遣れば、さっきまで晴れ渡っていたはずの空から急な大粒の雨が降り出している。目的地の水族館までは幾つか駅を過ぎれば着いてしまうため、それまでには何とか少しでも止んでくれることを祈るばかりだった。
そして僕は隣にいた雫星を見て、あることに気付く。
「何か今日はいつもと雰囲気が違うね」
前回は気付くことが出来なかった分、今回は特に注目していたこともあってか、見逃すことがなく言えたことを誇りに思えた。
「実はね、結月がコスメをプレゼントしてくれたの。
それでメイクをしてくれたんだ」
雫星は少し照れながらそう言った。
「そうだったんだ」
「やっぱり結月ってこういうの上手だよね。女子力が高いって言うのかな」
「まぁそうだね。昔からそんなところだけはあったかもしれない」
僕は結月のデメリットも多く知っているが、メリットといえばそういうところだったかもなと振り返っていた。
ただ雫星は下の方に視線を向けながら小さく微笑んでいたので、結月のことをやんわりとでも小馬鹿にしていることがバレてしまったのではと少し焦ってしまう。それでもすぐに雫星の方から話題を変えていたので、そうではなかったのかとホッとしながらまた揺れる電車に身を任せていた。




