Jupiter(10月3日〜28日)
初めての給料を手にし、その重みを十分に感じた僕たちには、また学業と仕事に熱中する日々が訪れていた。
今度は夏休みのようなルーティーンとは違い、学校に通ったその足でバイト先へと向かう。寝る暇も惜しむほどの忙しい日々の中には、高校生なら誰もが知っている流行にさえ追い付くことが出来ず、世の中から置いていかれてしまうような孤独感もあった。
心が折れるのが比較的早い僕たち。それでもそれを乗り越えようと前向きになれる訳は、いつもその状況が一人ではないということ。
束の間に雫星に会えば他愛もない話をする。そんな時間が僕たちにとってかけがえのない時間でもあり、その時間は唯一五人が普通の高校生に戻れる瞬間だった気がした。
それからも忙しなく日々は過ぎていった。地獄の中間テストが終わったかと思えば、その分も取り返すようにまた働き詰めの毎日を送っている。
そして僕はすっかり忘れていたのだが、ある日の結月の会話からそれを思い出すことになった。
「そういえばもうすぐ修学旅行だよね」
高校二年生といえばそれこそがメイン行事でもあったが、いつの間にか頭から抜けてしまうほどに今ではどうでもいいと思っていた。
「全然楽しみじゃないけどね」
それは火ノ川も同じだったらしく、その言葉に他の二人も気怠げに頷いていた。
「まぁ雫星もいないしなぁ」
いつもは行事に前のめりな宙斗でさえもそう言い出したのには意外でしかなかったが、概ね自ら口にした内容が一番の要因だろう。逆に言えば、その要因さえ無ければまた違っていたのかもしれない。
けれど雫星が来られないことは事前に内海先生からこの場にいる全員に伝えられていた。病院での検査と修学旅行の日程が被ってしまうからという理由らしいが、直接雫星の方からそれを僕たちへ話してくれることはなかった。
とにかく理由が何であろうと、雫星が来ないならどうだってよかった。
人生の中でも色濃く残ると言われている修学旅行。それでも僕たちは一刻も早くその時が過ぎてほしい。そう思うばかりだった。
修学旅行は三泊四日にも及んだ。その時間は僕たちにとって無の時が流れていた。他のクラスメイトたちが楽しそうにしている中、僕たちだけはどこか違う世界を生きているかのようであり、あれだけ忙しなかったはずの日々は永遠のように長く感じていた。
確かに僕たちにとっては苦手な勉強も兼ねた修学旅行ではあったが、その時間を楽しくないと感じた理由はそこではなく、楽しくないというより楽しめないような。もしかしたらそれはこの場にいない雫星に対し、楽しんではいけないと思っての感情なのかもしれなかったが、どっちにしろ結果はこの前の旅行とは大きく違うものになっていた。




