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Jupiter(9月17日)

 そんな宙斗を先頭に、次に行く場所として向かったのもまた綿菓子屋だった。

 これも雫星の要望を叶えるためであったが、いざ着いてみれば先程までには無かった行列が出来ており、綿菓子の人気は一目瞭然だった。

「これは今回の文化祭で一番人気のお店かもね」

 火ノ川の言葉に、雫星は売り切れないかと心配そうな顔をしていた。

「大丈夫だよ。まだ始まったばっかりだし!」

 結月がそう言うと、雫星は不安そうなままではあったが、一回頷き多少の笑顔も見せていた。

「最後尾あっちだってよ」

 宙斗の言葉に釣られ、僕たちも並ぼうと長い列の最後尾に着く。するとまたもそこに内海先生がやって来る。

「おっ綿菓子か!いいな。俺も食べよう」

 そしてそんな内海先生には冷たい視線が向けられる。

「先生暇なの?」「もしくは一緒に回る人がいないとか?」

 僕と一緒にお化け屋敷に入っていたことは、ここにいる全員も知っている。そのため僕から何も言わなくても、結月や火ノ川が僕以上に冷たい視線を送っていた。

「雫星が好きな綿菓子のお店なんて気になるからな!」

 だが二人からの質問にはスルーしたため、その真相は迷宮入りとなる。

「それに!」

 そう言って内海先生は自分のスマホを取り出すと、僕たちを入れ自撮りをしながらシャッターボタンを押す。

 急なことに僕たちは目をパチクリとさせてしまうが、内海先生はそんな僕たちのことなど気にも掛けずに撮った写真を見返しながら言う。

「今日はスマホ触り放題の写真撮り放題なのに、まだ一度も撮ってないんじゃないかと思ってさ」

「もしかして先生映えとか気にして SNS更新してるようなタイプですか?」

「愚問だな。それが今の俺にとっての生きがいの一つでもある」

 キメ顔で言う内海先生に、聞いた僕は呆れ顔になってしまう。

「でもそれだけじゃない。

記憶ってのは曖昧なもんだからさ。嫌なことを曖昧にしてくれる分には嬉しいが、楽しいことまで曖昧にはしない方がいい。

たとえ歳をとって曖昧になったとしても、こうやって残しておけば未来には確実な思い出になるからな」

「なら私も撮っていいかな?」

 内海先生の言葉に感化されたのか、雫星は自分のスマホを取り出し写真を一枚撮る。

「わぁ雫星、すごい自撮り上手くなってるじゃん!」

「あれから結構撮ってたもんね」

 撮った写真を一緒になって見ていた結月や火ノ川は、雫星の成長を素直に喜んでいた。

 そして確かに火ノ川が言うように、雫星は教えてもらった日から写真をよく撮りたがるようになった。おかげで写真写りがとことん駄目だった僕も、それなりにカメラの前で笑えるようにもなっているくらいだ。

 そんなくだらないことを頭で考えながら、僕は自分のスマホ画面に目を向け、今の時刻を確認する。

「へぇーまだその待ち受けにしてたんだ」

 するとそれを見ていた結月が、僕の携帯を覗き込みそう言った。

「あっそれ俺がしたやつじゃん!」

 僕の待ち受けは、二年生になってすぐの頃に四人で撮ったものであり、スマホを宙斗に渡した際に勝手に設定されていたものだった。それをまた変更するのも面倒な上、特に気に入らない点もなかったのでずっとこのままになっている。

「あっそうだ!今撮りなよ!それを待ち受けにしよ!」

 そう言って僕は結月に自撮りを強要されが、新たに五人での写真を待ち受けにするのも悪くはないなと、僕もその意見に賛同する。

 だがシャッターオンを押し、写真を確認すると同時に上がったのは皆からの否定的な感想だった。

「何これ全員ピンボケしてんじゃん。逆にすごいわ」

 火ノ川は僕を褒めるかの如くそう言ったが、正確に言えば全員がピンボケしているのではなく、後ろの方で映る内海先生にピントが合っていたのだ。

 内海先生が映り込まなければ良い写真だったのではと思う僕だったが、涙ながらに笑っている雫星を見て、その言葉は呑み込むことにした。

「でもいいじゃん、これを待ち受けにしようぜ!」

 そう言ってまた人のスマホを奪っては勝手に設定を変える宙斗。そんなことをしていたうちに、気づけば僕たちまで順番は迫って来ていた。

 今度は僕も注文をし、最後に雫星が綿菓子を受け取ろうと待っていた時だった。

「綿菓子完売でーす」

 その声が辺りに響き渡った。

「え?」

 目を丸くして驚いている雫星に、「良かったじゃん雫星!最後だって!」「綿菓子大好きだもんね」と先に受け取っていた結月や火ノ川が声を掛けている。

 するとそれを聞いていた店員は、もうあと一人分にも満たない量だからと、残りの分も雫星の綿菓子にサービスして巨大綿菓子を作ってくれていた。それには雫星だけでなく、その場にいた全員が満面の笑みになった。

 二回目となる綿菓子も食べ終え、その後もいくつか店を転々と回り、食べ物の店はほぼ全部を制覇していた。

 その頃には文化祭も終わりを告げるメロディーが聞こえ始め、最後に雫星の顔を見てみれば、雫星はとても幸せそうで、僕たちにとっても良い文化祭で幕を閉じることが出来ていた。

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