表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/150

Jupiter(9月17日)

 お腹が少し満たされたところで、次にお化け屋敷へと向かう。さすがに自分たちのクラスの位置なら僕たちも自信を持って案内が出来る。

 いつもの教室までの道のりとは全く異なる雰囲気に、雫星は結月の手を掴みながらキョロキョロと辺りを見回し歩みを進めていた。

 教室に着くと、外見からでもお化け屋敷という物騒さが分かる装飾に、雫星は入り口の前で少し怯え始めていた。そんな雫星に「大丈夫だよ」と結月と火ノ川が励ましている中で、僕には別の恐怖が襲ってくる。

「なぁ陽。手繋がないか?」

「断る」

 気持ち悪い誘い文句で一緒に中に入ろうとしてくる宙斗に即答した。

「お願いだーそんなこと言わないでくれよ!」

「火ノ川にこんな情けないとこ見られていいのか?」

「流和は気づいてないし、中に入ったら多分暗くてよく見えねぇよ」

「断る」

「俺たちは同じ仲間じゃないのか!?」

 きっと宙斗はお化け屋敷が苦手だという点で同士だとでも言いたいのだろうが、今回の僕はそうでもない。自分たちのクラスが主催もあって、内部の構造は知り尽くしている。既に把握しているものに対して、恐怖という感覚を新たに持つのも大変なことだ。

 だが宙斗は受付だったこともあり、お化け役までやって退けた僕を同志扱いしてきたことに腹が立った。

「火ノ川ー。宙斗がお前と一緒に回りたいってさ」

 僕は何の感情もなく火ノ川の名前を呼ぶ。それに宙斗は「おいっ」と俺の腕を掴み目で訴えかけてくるが気にせず続けた。

 呼び掛けに気づいた火ノ川は、保ちつつある表情の中に少し照れたような顔色を混ぜ、偉そうに言う。

「しょうがないわね。別に良いけど」

 もう逃れることは出来ないその状況に、宙斗の視線はどうしてくれるんだよと暗闇に飲み込まれるその瞬間まで僕のことを睨み付けていた。

 そんな宙斗に僕は頑張れよと思いを込め、ニヤつきながら手を振る。

 こうして残された僕たち三人だったが、雫星と結月は腕を組みながらその時に備えていた。二人が中へと案内され、その二人に続けて僕も入ろうとした時、僕は受付の人に止められる。

「あっ地崎、ちょっと待て」

 僕は同じクラスではあるが、その行動に訳が分からず目が点になってしまう。理由は二人づつしか入れないからとのことだったが、そんな理由があったことを忘れていた僕は、この状況を理解するまでに時間が掛かってしまっていた。

 ただ思い返してみれば、昨日お化け役をしていた時も中に入って来ていたのは二人づつだったような気もする。それと同時に僕ははっきりと思い出す。このお化け屋敷をするにあたって、脅かしやすいよう二人以下にするというルールが最初に設けられていたこと。つまり一人であることには何ら問題はないため、僕はこのままだと一人で中へ入らなきゃいけないことになると実感した。そうなればお化け屋敷以上にぼっちでいる恐怖が僕を襲う。クラスが主催もあり、一人でとなれば明日からクラス内でバカにされることは確実だろう。

 この場から逃げよう。そう心に決めた時、望んでもいなかった声が背後から聞こえてくる。

「何だぼっちか?しょうがない。俺が一緒に入ってやるよ」

「どうして内海先生がここにいるんですか?」

「ここのクラスの担任だからな。一度は入ってみても良いかなって」

 それを僕の今置かれてしまっている状況から断ることも出来ず、僕は内海先生と中へ入ることになったが、とにかく絶叫していたため、途中で一度置いてきた後、一足早く僕だけが出口の向こうへと先に足を運んでいた。

 遅れて出てきた先生は、少し老けたのではと思ってしまうほど疲労感で一杯になっていた。

「どういう内装になっているか、担任としてちゃんと把握してなかったんですか?」

「まぁ出し物についてはクラスに任せっきりだったからな。

でも把握しておけば良かったって、今ではしっかり後悔してるよ。」

 そんな担任を呆れた顔で見た後、結月たちの誰かを心配する声が聞こえてきたため、雫星に何かあったのではと思い振り返る。するとそこには震えている雫星ではなく、宙斗がいた。

 僕は宙斗が昔から暗闇恐怖症であることを知っている。ホテルに泊まれば寝る間もずっと明かりはついたままであり、修学旅行等でも一緒の部屋に泊まってあげられるのはそれを理解している僕でなきゃいけない。

 それでもそのことを知っていた上でも行かせたのは、旅行の時に馬鹿にしてきた恨みをまだ根に持っていたところがあったからだ。

 僕はしてやったりな顔で宙斗に近づき小声で伝える。

「どうだ?バカにされる気分は?」

 そう聞くと、宙斗は僕の顔を見て恐怖に満ちた顔をしていた。どうやら宙斗の恐怖対象は暗闇恐怖症から僕へと移り変わったみたいだ。

 すぐに僕から逃げるように立ち上がった宙斗。

「次行くぞ!」

 そう言って自暴自棄になって歩き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ